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「それで? どこか行きたいとことかあるっすか?」
滝沢のワゴン車に乗り換えると尋ねてきた。 こいつ誘っておいてそりゃないだろ? ノープランなのか?
「いやいや! 考えてないってわけじゃなかったんすよ? だけどJK居るなら酒飲むとことか無理そうだし」
ああ、こいつらは待ち合わせの場所に来るまで神崎らが来るとは知らなかったもんな。 対して遠くに行く気もなくどっかのバーかなんかで済まそうとしてたのかもなぁ。
自然に滝沢の目線が神崎達に向けられる。 まぁこいつらいつもウィンドウショッピング的な感じだし、主に篠原が神崎や日向を引っ張って。
「とりあえずドライブがてらで。 目に付いたとこで遊んじゃお!」
篠原がそう提案するとじゃあそんな感じでという風に決まる。 そして俺の隣には日向がさり気なく座っていた。
ちくしょう、そんなんだから先輩は俺の前に如月と座ってしまった。 というかさっきのやり取りで日向の機嫌が少し悪い……
仕方ないので先輩の後頭部をジッと見てた、なんか気持ち悪い奴だな俺。
「柳瀬さん、お菓子食べます?」
「ん? ああ、俺はいいよ」
「…… そうですか、麻里はどうです?」
「いらない」
「うえーん、彩奈ぁ」
「ほらほら、痛い子莉亜ちゃん」
「うぐぐ…… 私いつの間にか痛い子にされてばっかりのような気がします」
「莉亜ちゃんって一見近付き難そうなんだけど面白い子よねぇ」
「てか柳瀬先輩ってこの3人とどういう関係ですか? なんか凄く懐かれてますよね?」
先輩は良しとして如月…… お前は鋭いぞ、嫌な意味で。
「ほ、ほらぁ、柳瀬君とこの子達は前に会った事あるって言ったじゃない? あ! もしかして3人とも柳瀬君の事好きになっちゃったとか?」
「「「え?」」」
いやいやいや、先輩何言ってんですか!?
「柳瀬さんずるいっすよ! なんかテンション下がるー!」
「柳瀬さんってモテるのか……」
「違うっつーの! 俺はせ……」
危なく先輩が好きだとぶっちゃけそうだったので口を塞いだ。
やべぇ、こんな所で告白してしまう所だった。
「そ、そうですよ! ななな、なんで私が柳瀬さんを好きになるんですか!?」
「莉亜焦りすぎ。 私は清っちの事好きかなぁー!」
「おお! 柳瀬先輩良かったですねぇ! こんな可愛い子滅多に居ませんし」
「なッ!? 篠原何言って」
「あはは! 友達としてだよ、赤くなっちゃって清っちたら〜!」
「ぐぐぐ…… は!!」
隣に居た日向の視線がどんどん暗いものになっていく。 なんで俺がここまで追い詰められなきゃいけないんだ!?
「ほらぁー、麻里はどうなのさ?」
「…… あたしが1番だもん」
「ありゃま、拗ねちゃってる。 ふふふ」
「まぁまぁ、3人とも柳瀬君を困らせちゃダメよ?」
先輩は俺に手を合わせてごめんといいたげにペコペコと頭を下げる。 そんな光景を如月はほぉ〜と頷き見つめていた。 こいつ絶対何か察しただろ…… と思っていると篠原が窓をチラッと見た。
「あ! あそこにボウリング場あるし行ってみよー?」
「ああ、ゲーセンもあるしそこにしますか! いいっすね?」
もう好きにしてくれ。 ようやく決まった目的地に着くとみんな降りていくが日向は動こうとしない。 まだ拗ねてるなこいつ……
「麻里! 行きますよ」
神崎にそう言われてやっと日向は重い腰を上げた。
「ふわぁ〜……」
「眠かったんですか?」
「うん」
「足元ちゃんと見て下さいね? また転んだら大変ですから」
「ふぁい」
なんて会話は携帯を弄っていた俺には聞こえていなかったのでふと日向を見ているとフラフラと車を降りようとしてたので危ないなと思って後ろから日向の肩を掴んだ。
「え?」
「危ないから足元よく見ろよ?」
「は、はい……」
あれ? なんか日向がソワソワし出した…… 余計な事したかと思っていると車の外に出ていた神崎がムッとしていた。
「私が先に言いました!」
「え? 何を?」
「行こう清人」
日向は俺の服の袖を引っ張っていく。 機嫌が直ったみたいだ。後ろからついてくる神崎に振り向くと……
「あ……」
「ん?」
「…………」
神崎はパッと下に目を逸らした。




