63
「うわッ! マジっすか!? 乙川先輩の知り合いってこんな可愛いんだ!?」
「でしょ〜? エッヘン!」
「篠原彩奈です、よろしくお願いしまーす」
「………… 日向麻里です……」
篠原は相変わらずだが日向はまぁ…… うん、いつも通り。
「神崎莉亜と申します、この度はよろしくお願いします」
ふう、こういう時になると神崎の落ち着き様と礼儀良さは安心感があるな。
「みんな可愛い子達ばっか。 てか何気にデケェ……乙川先輩すげぇ」
滝沢は莉亜と同じくらいだもんな身長。 日向、篠原の方がでかい。
「あ! 俺は滝沢 悠人。 んでこっちの少し大人しめなのが市原 良樹! よろしく」
「滝沢、ついでみたいに僕の事自己紹介すんなよな」
「わりぃわりぃ」
先輩の横にいた如月がツンツンと俺の肩を突いた。
「あー、やだやだ。 露骨過ぎじゃん滝沢の奴。 でも乙川先輩から注意を逸らせて柳瀬先輩的には良かったかな?」
「バカ如月! 余計な事言うな!」
「うわぶッ!」
変な事を言われる前に如月の口を手で塞いだ、だがその様子を見て日向が割り込んできてしまった。
「清人何してんの?」
「あ、えーとたまたまこいつの顔が手に当たって……」
「え? その反応もしかして柳瀬先輩その子と、んむぅーーーッ!」
「き、如月お前はちょっと静かにしてような?」
「またやってる…… 」
そんか様子を滝沢と市原が今度は見ていた、嫌な予感……
「柳瀬さんって如月と仲良いっすよね、会社でもよく一緒に居るし」
「それはこいつがなかなか覚えてくれねぇからだよ、なんならお前が変わってくれよ」
「へぇ、そうなんだ? 清人ってそうなんだ?」
「乙川先輩ー! さっきから柳瀬先輩がいじめてきます」
「あはは、よしよし。 柳瀬君はゆいちゃんが可愛いからいじめたくなっちゃうんだよ」
せ、先輩までそんな事を。 日向の視線が痛い。 何も悪い事してないよな俺……
それにしても先輩…… 今度は先輩が変な設定を篠原から受け継いだようだ。 4月が過ぎてこいつらも3年生になった。 うちの会社でも部署は違うが新卒の男2人が入りそいつらはあろう事か滝沢が先輩に目を付け仲良くなろうとしていた。
後からしゃしゃり出てきてふざけんなこの野郎共と思ったけど俺の恋心など知る由もないこいつらにとっちゃそんなの関係なくプライベートで遊びましょうという誘いがしつこく先輩に俺も行こうよと誘われて来たわけだが……
まさか神崎達も巻き添えとは。 まぁそれで先輩への注目が分散されるんだけど。 その証拠にこの2人は神崎達3人に目が泳いでいる。
「でもこの子達高校生だから手出しちゃダメよ〜?」
「ぐあー、もったいない! というより大事なのは本人の意思っすから! ね? 彩奈ちゃん」
「え? うん、そうそう! 行くとこまで行って燃え尽きちゃおー! 麻里ちゃん」
行くとこまで行ってって…… 出るとこ出て人生燃え尽きるの間違いだろ。 それより市原はこっちをジーッと見てる。 今度は何だよ? と思い目を合わせると……
「あ、麻里ちゃんって柳瀬さんの側にばっか居ますよね? もしかして麻里ちゃんって……」
「いやいや、そんな事はない! 先輩だってさっき手出しちゃダメって言ってただろ?」
「そうだよ市原君。 麻里ちゃんはねぇ、人見知り激しいから少し慣れた柳瀬君の近くに居るだけよ? それでもってこっちの莉亜ちゃんは…… うん、少し特殊な子なの、わかってあげてね?」
「え!? わ、私の事でしょうか??」
神崎…… 先輩は篠原が言ってた痛い子設定をそのまま受け継いだらしい、可哀想に。 先輩も咄嗟に出たのかしまったという感じで口を押さえた。
「…… わ、私には私の意思に反して動く両の手がありまして…… 私はこれを、か…… 神の右腕悪魔の左手と呼称しています」
正気かこいつ? なんでこいつが1番ダメになってんだよ。
………… 先輩が否定するのを待てばいいのに自分からとても痛い事言っている。 なんで設定に余計な設定を重ねていくんだ? それより神崎のお堅い頭からよくそんな中二発言出てきたな。 気分転換が祟ったのだろうか?
よく見れば男性陣は可哀想なものを見る目で神崎を見ている、顔は良いのに残念系だと思われたなこりゃ。
篠原を見ると笑いを堪えるのに必死でプルプル震えてなんとも言えない表情をしている。
「おうふ…… 莉亜ちゃんって真面目そうなのに痛い子だったのか。 いや、でもそのギャップもいいかも」
「痛い…… 子」
自分からそんな発言しといてそう言われてあからさまにショックな顔するなよ。
「わ、私に関わり合いになったり近付くと不幸が訪れますのでどうか!」
「え?」
神崎は俺の後ろの方へ来てサッと隠れた。 俺は不幸になってもよろしいのか?
「莉亜……」
「うあッ! ま、麻里…… なんでしょう?」
「清人を不幸にする気?」
「麻里まで…… あーん」
「ちょっとちょっと! 柳瀬さんそりゃないっすよぉ! なんで柳瀬さんのとこばっかり集中してんすか?」
「俺に言われても知らねぇよ……」
「あはははッ、私は全員平等ですよぉ。 ほらほらぁ〜?」
篠原は滝沢と市原に笑顔を振りまいて言うと2人ともなんか照れてる。 お前らチョロいな……




