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「さて…… 日向は何食べる?」
「パン的な何か」
「パン的な何かってパンだろ。 神崎と篠原は何がいいかな?」
部屋替えで昼食を作ってる暇がないので俺は篠原らに頼まれてコンビニへ弁当を買いに行っていた。
俺1人で行くはずだったのだが日向まで来てしまった、篠原が自分達の好みが俺にはわかんないだろうから日向も連れて行けと…… 多分面白がってやってるだろ?
「あれー? 日向か?」
後ろの方で声が聴こえたので振り返ると日向と同い年っぽい男だった。 もしかして同じ学校の奴か?
「あ…… 小島君」
「鼻大丈夫か?」
「うん」
「鼻血とかもう出ない?」
「いつの話?」
「ははは」
うわぁ、日向冷めてんなぁ。 もう少し愛想良くしろよ。 といっても愛想のいいこいつが思い浮かばん、これが日向か。
「結構心配してるんだぜ、あれ? そっちの方は?」
「ああ…… この人は」
「麻里がいつもお世話になってるね。 こいつの従兄弟の柳瀬清人だ」
何かマズい事を言われないうちに俺から自己紹介をした。 強引に割り込んだ俺に日向はムムッと気に入らないような顔だ。
「あ、そうなんですね。 俺は日向の友達の小島 新です」
「友達だったの?」
「ひでぇ、あははッ」
日向冷てぇ……
「何しに来たの?」
「ちょっとコンビニに寄っただけだよ。 日向こそ何しに?」
「なんでもいいでしょ」
お前から何しに来たのって言ったくせに返しがそれかよ。 こいつってこれで友達とか居るんだろうか? 学校ではいつもこんなんなんだろうか? 小島とやらは苦笑いだ。
「聞いて下さいよ、日向に冬休みの時遊ぼうなって言ってたのに遊んでくれないんですよ、それどころかLINEとかも教えてくれないし」
「LINEやってないし」
「SNS的なのでもいいって」
「何それ? 興味ない」
無理がある嘘付きやがって、お前俺にLINE教えたろうが。
「ははは、こんな奴でごめんな。 昔からこうで…… これからも麻里と仲良くしてやってくれな?」
「はい」
少し話した後、小島は帰って行った。 日向はやっと面倒なのが行ったという感じだ。
「お前冷たいな、あいつの話ことごとくバッサリしてんじゃねぇよ」
「これでも頑張って話してるもん」
あれで頑張ってるのか。 まぁ最初はこういう奴だったしな。
「清人こそ邪魔した」
「え?」
「勝手に従兄弟にされた」
「だってお前なんて俺の事紹介するつもりだったんだよ?」
「知らない」
プイッとそっぽを向かれる。 やっぱり俺から言っといてよかった。
「そろそろ帰るぞ」
「帰るんだ……」
帰りたくなさそうな顔しやがって……
「帰るんだ……」
また言った。 今度は二度言わせないでな顔してる。
「まぁあいつらも待たせてるしな、部屋も替えるし」
「別に替えたくないし変な提案した莉亜に1人でやらせればいいよ」
今度は怒りだしてしまった。 まぁわからないでもない、俺の貴重な休みもこれで潰れると思うとな。
「俺もそうさせたいけどさ、ジャンケンに負けちゃったし」
「じゃあ清人のせいじゃん」
あ、余計な事言っちまった……
「ムムム」
「わかったわかった、ごめんな?」
頭を撫でてやると日向はグリグリと頭を押し付けてくる。
こんな事していると本当に恋人認定されてしまいそうだ。 本当に俺如きがなんだけど。
「あー、遅いよ清っち! お腹ペコペコ」
「あなたは大して動いてないでしょう? 彩奈の部屋が1番苦労しそうなのにまったく……」
もう大掃除みたいになってる…… この前やったばかりなのに。 そんな中、日向が何かと俺の側に居るので神崎が目を光らせていた。




