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「清人!!」
「な、なんだ!?」
休み最終日、珍しく日向が声荒げに俺に迫ってきた。
「あたし…… あたしと………」
「? あ、うん。 なんだ?」
「…… 連れてって」
「え?」
「どこか連れてって」
………… どこに?
「いいけど、どこ行きたいんだ?」
「どこでもいい」
どこでもいいが1番困るんだよなぁ。 海か山か川か?
「例えば街の方とか?」
「ううん、あんまり人居ないとこがいい」
「ええと…… じゃあ2人も呼ぶか」
「莉亜と彩はいい」
「せっかく出掛けるのにいいのか?」
「うん、買い物に行くわけじゃないし」
買い物じゃないのか。 そうかドライブしたいのか、まぁそれだったら適当にグルッと回って帰ってくればいいし楽だ。
「あれ? 清っちお出掛け?」
「ああ」
「どこ行くの? 買い物? だったら私も行こうかなぁ」
「いやぁ、買い物というかなんていうか……」
「あ、ふーん。 わかったわかった、行ってらっしゃい」
「え?」
「行こう清人」
「? ああ」
後ろに居た日向を見てあっさりと篠原は引き下がった。
「じゃあ適当にドライブでもするか」
「うん」
車を10分くらい走らせてると日向は寒そうにプルプル震えていた。
「寒いか?」
「少し……」
そりゃ生足出してれば寒いだろうな、部屋と同じ格好で出てくんだもんなこいつ。
「もっと着込めばいいのに」
「すぐ脱げるから楽なの」
「それにしたって俺から見ても寒そうだ、ストッキングくらい履けよ」
自販機を見つけたので日向に温かい紅茶を買った。
「ほらよ」
「ありがとう」
すぐ飲むのかと思ったら日向は紅茶を股下に挟んだ。 ホッカイロかよ……
「暖かくなってきた」
「暖房効いてきたからな、にしてもここ俺の実家より雪すげぇな」
「綺麗だね」
助手席座ってるこいつからしてみればそうだけど俺は結構気を張り巡らせてそんなの感じれないけどな。
「楽しい?」
「うん楽しい」
「そっか」
車を走らせて30分くらい経った、そろそろ戻ってもいいだろう。
「あと引き返すけどいいか?」
「え…… も、もうちょっと。 ほら、前に通った川のとこ行きたい」
ああ、街の方角に確かあったな。 こんな寒い中川に行きたいとは。 まぁリクエストが出来たならそこへ向かおう。
「ほら、着いだぞ」
「停めて」
日向がそう言ったので車を停めると日向は外へ出た。
「うきゅッ…… 寒い」
「当たり前だそんな格好で外出たら。 風邪引くから中入れよ」
「えい」
「へ?」
日向に雪玉をドカッと当てられた。 何すんだ? と思えば雪を握った手が冷たいのか日向は手をパタパタとさせていた。
「うう〜ッ……」
「何やってんだお前?」
「つ、冷たい」
俺に小走りで走ってきて俺の服を掴んだ、手を暖めているのだろうか?
「バカだなぁ、冷たいに決まってんだろ、なんか意味わかんねぇけど車の中に入れよ」
「………… 嫌」
「ええ? 何したいんだよ……」
「…… わかった」
車の中に入るとガクガクと日向は震えていた。 そういえばと思って後ろから前に出掛けた時日向が俺の車に置き忘れていた膝掛けがあったのを思い出し日向の脚に掛けた。
「これあったの忘れてた……」
「俺も今思い出した」
「また温かい飲み物買ってやるから」
「好き」
「え?」
「…… 好き………… ミルクティー…… が」
そう言って日向は何故か脚をバタバタさせた。
「やっぱりか。 よく買ってたの見てたよ」
「バカ清人」
「は? いでッ」
何か癇に障ったのか日向におでこをグーで叩かれていた。




