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明日は大晦日か。 俺は部屋でのんびりしていたがもうそろそろ篠原を迎えに行かなければならない。
昼前に篠原は友達と遊んでくるから送ってくれない? と頼まれて帰りもよろしくと言われた。 足代わりに使いやがって。 暇だからいいけどな。
キッチンがある建物を通り過ぎるとドアが開いた。
「あ、彩奈迎えに行くんですね?」
「そうだけどなんでお前そこに居るの? 今日は日向だったよな」
「ああ、それでしたら麻里はここに居ますよ」
神崎の隣から日向が顔を出した。
「麻里ったら最近料理の特訓してるんです。 本まで買って気合い入ってますね」
「余計な事言わないで」
「すみません。 でもあの面倒くさがり屋の麻里が料理の勉強したいなんて驚きです」
「あたしだってそういう時あるもん。 清人早く帰ってきてね」
「ああ、偉いな日向」
「…… うん」
「あら、麻里どうかしました?」
「ううん、続き教えて」
「はい。 柳瀬さん気を付けて行ってらっしゃい」
「ああ」
そうして神崎と日向はキッチンに戻って行き俺は篠原を迎えに行った。
待ち合わせのコンビニへ着くと篠原はまだ居ないようだ。 店の中へ入り適当に漫画を読んで時間を潰してジュースを買い外でタバコを吸っていた。
すると反対側から篠原の声が聞こえた。 誰かと一緒に居るのか? そっと角から覗いて見ると男2人と一緒のようだ。
うわぁ…… なんで連れてきてんだよ。
「あれ? 清にぃの車あるのに居ないなぁ」
「なあ彩奈、そいつってどんな奴?」
「んー、どんな奴かぁ。 なんか可愛い!」
篠原は連れの男2人にニカッと笑ってそう言った。
「可愛い? 男で?」
「うん、ちょっと幼い顔付きで可愛い。 そんでもってガキっぽい!」
「ふーん、要するに幼稚な奴?」
篠原の奴…… 俺がガキっぽいだと? てかまた清にぃか。 嘘で塗り固めやがって。 でもこういう時に本音が出るもんだぜ。
「幼稚ねぇ。 まぁそうでもないけどそんな所もあるかも。 でもとっても優しくて凄くいい奴だよ」
「お前顔少し赤くなってね? 近親相姦か?」
「はぁ? 寒いだけだし。 私トイレ行ってくるね!」
篠原は店の中に入って行った。 優しくていい奴ねぇ…… どうでもいい奴とも取れるな。
タバコも吸い終わったのでそろそろ車に戻ろうとした時男2人の声がまた聞こえてきた。
「なぁ、やっぱ迎えの男まだ居ねぇみたいだし俺かお前の家に彩奈連れて行かね?」
「そんで?」
「あいつ頼んだらヤらせてくれそうじゃね? 結構遊んでるみたいだし軽くさ」
「あー、確かにヤらせてくれっかもなぁ。 あいつ俺らの学年で1番可愛いしヤッといて損ねぇよな、それに聞けば莉亜と麻里と同じ所に住んでるらしいじゃん。 上手く行けば1番から3番目までまとめてヤれんじゃね?」
「んー、でもそんな上手く行くか?」
「だからさ、彩奈とヤッてるとこ隠し撮りしてそれ見せつけて脅せば莉亜と麻里に頼み込ませてみたいな」
こいつら…… とんだろくでなしじゃねぇか! 篠原を脅す? それで神崎と日向も?
篠原は確かに遊んでるように見えるけど、そう見えてもそんな軽い奴じゃないって見てきてわかってる。 あいつは目立つからそんな噂されるんだろうけど篠原だって優しくていい奴だ。 あの2人がそんな目的で篠原を傷付けて良いはずがない。 神崎や日向だってそうだ、最初の印象はムカつく奴らだったけどな……
「おい、お前ら」
「なんだおめぇ?」
「彩の従兄弟だけど? ちょっとこっちに来いよ」
そいつらの胸ぐらを掴んでコンビニの裏に連れて行った。
「つーか離せよ!」
「お前らの話全部聞かせてもらったわ」
「は!?」
俺は声をあげた方の男の髪を掴んで引き寄せた。 大丈夫、こいつらくらいならなんとかなりそうだ。
「言っとくけどそんなくだらない事で彩を傷付けたり他の奴を巻き込んだりしたら許さねぇぞ?」
「清っち……」
男2人の後ろから篠原の声が聞こえたと思ったら困惑した顔で篠原は立っていた。 いつから居たんだ?
「げ…… 彩奈!?」
「お、おい行くぞ!」
男2人が逃げようとしたので俺は肩を掴んで阻止した。
「さっきの事ちゃんとわかったんだろうな?」
「わかった、わかったっつの!」
念押ししたのでパッと手を離すと2人は帰って行った。
「ねぇ…… 今の」
「なんだ?」
「その…… あいつらと」
「ああ、あいつらとぶつかってさ、俺って舐められやすいのか絡まれたんだ。 篠原の友達だったか? だったらごめんな?」
「…… ううん、あんな奴らなんてどうでもいい、それより」
「顔赤いぞ? 寒いのか? だったら車に乗れよ、さっさと帰るぞ」
「清っち」
「うん?」
「迎えに来てくれてありがとう」
「ああ」
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