31
「くそッ! あのバカ2人一瞬目を離した隙にこれだ。 神崎の奴もしっかりしてそうで間抜けだし」
「いいよ、どうせ携帯あるからすぐわかる」
「まぁそうだけど」
「だから行こ?」
日向に引っ張られゲーセンを探す。 ここのデパートのゲーセンってどこにあるんだろうな?
「わぷッ!」
「ああ、ごめんな」
日向が人にぶつかって俺に持たれ掛かった。
「危ねぇな。 大丈夫か?」
「うん」
「しっかりくっついとけよ? お前ボーッとしてるんだから」
「ッ!? …… うんそうする」
「ん?」
日向は俺に向かい合ってピッタリとくっついた。 そういう意味では…… つか人が多い中で何やってんだこいつは?
日向がかなり美人だからか周りの男がチラチラと日向をチラ見している。 そうなると俺も気になる、あくまで俺は保護者代行だ。
「日向…… そうしてると歩けないしなんか違う」
「清人がくっつけって……」
「そうじゃない、こうだ」
何を履き違えたのか知らないが俺は日向の腕を掴んで隣に来させた。
「こうしてれば離れないだろ?」
「は、離れない……」
「さっさとゲーセン探すぞ。 えっと今はここだから上の階か。 行くぞ」
エレベーターに行きドアが開いた。 はぁ、ここも人がいっぱいかよ。
日向を俺の前に来させてエレベーターに乗る。 ここは別に離れる心配はないのだが日向は後ろに手を回し俺の服を掴んでいる。
「はぁ…… 人混み疲れる」
「そうだよな。 あ、あそこだ」
ゲーセンに着くと日向は小走りになってUFOキャッチーのコーナーに向かった。
「お前こんなの興味あったっけ?」
「ひとつだけじゃ寂しいからもうひとつ欲しいなって思って」
「ふーん、どれが欲しいんだ?」
「あの犬……」
日向は茶色い犬のぬいぐるみを指差した。 こいつもそういうのに目覚めたか。
「うん? お前がやるの?」
「やってみる」
お金を入れアームを動かし掴んだかと思えば持ち上げる事なくアームが戻ってきた。
これはあれだな、ずらしながら取るしかないパターンだ。
「もう一回……」
「おお……」
「もう一回」
「うん」
「……もう…… 一回」
「やめとけば?」
「欲しい……」
日向はシュンとしてぬいぐるみを見つめる。 はぁ、仕方ねぇな、こうなるって予想はしてた。
「じゃあ俺が代わりに取ってやるよ」
「ほんと?」
「ああ、任せとけ」
ふん、こんなもんと思って挑んだのが間違いだった。 なかなか動かない、設定厳し過ぎだろ……
「清っち見っけ! って何してんの?」
「見りゃわかるだろ」
何故か篠原だけゲーセンにやって来た。
「彩1人だけ? 莉亜は?」
「あの子いつの間にか居なくなっちゃったんだよねぇ。 今頃泣いてたりして。 というより随分お熱だね清っち。 いったいいくら使ったの?」
「もう2000円やってるの」
「はぁ!? バカじゃないの?」
「黙れ、もうここまでやってしまったら取らないわけにいかないだろ?」
「清人…… もういいよ諦める」
「いいや、絶対取ってやる」
「清人…… かっこいい」
「ははは…… ダメだこりゃ」
そして更に1000円上乗せしてようやく取れた後普通に店で適当なの買った方が安く済んだと思って激しく後悔する。
「流石大人の資金力パないわ」
「パネェだろ?(白目)」
「清人ありがと。 ちゃんと身体で……」
「言い方! それはヤバい風にしか聞こえない」
「…… ちゃんと誠意を見せる」
「ああ、期待してるよ」
日向の頭を何気なく撫でると取ったぬいぐるみで日向は顔をサッと隠した。
「あ…… そういえば莉亜どうする?」
「どうするって呼べばいいだろ?」
「今携帯に掛けたけど電源切ってるのか繋がんないんだよね」
「そうなのか? …… まさか持ってないとか?」
「莉亜携帯手に持ってたからあるはずだよ」
充電切れとかか? ありえそうだ。
「まぁ探してみるか。 篠原はどこまで莉亜と一緒に居たんだ?」
「一緒にブランドコーナー見てたらいつの間にか居なかったんだよねぇ」
「神崎ってそういうの好きなのか?」
「ううん、私についてきただけだし」
「彩が目を離すからだよ」
「はぐれちゃダメって言った莉亜がはぐれてるんだし莉亜がダメなのよ」
そうして神崎を探していると俺は思わぬ人物に出くわす事になった。
「あれ? やっぱり柳瀬君」
「先輩……」
そう、先輩に会ってしまった。




