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クリスマスもあっという間に過ぎて俺の会社もようやく休みに入った。 結局休み直前までバタバタする忙しさだったけどようやく解放された。



洗面所に行くとバッタリと日向に会った。 日向の腕には俺が買ったぬいぐるみが抱かれていた、そんなに気に入ったのか……



「おはよ清人」

「おはよう、ぬいぐるみと一緒なんだな」

「フワフワしてあったかい、抱いて寝るとよく眠れる」

「そっか。 なら買って良かった」

「大事にするね」



日向と話しているとトイレから篠原が出て来た、入ってたのか…… ドアが開いた音で神崎が部屋から顔を出す。 お前も行きたかったのか。



「清っちおはよー、やっと休みになって良かったね。 麻里なんかそのぬいぐるみ超お気になってるじゃん」

「おはようございます柳瀬さん」

「おはよう神崎」

「清っちが休みになったからやっと朝ゆっくり寝られるよ。 莉亜はプレゼントされた目覚まし時計しばらく不要になっちゃったね」

「ちゃんと使ってます」

「ならたまにはわかりやすく清っちに感謝の意を表してみたら?」

「表してみたら? とは?」

「へへー、えい!」

「へ?」



篠原は俺に向かって神崎の背中を勢いよく押した。 無警戒だった俺は神崎が飛び込んで来た拍子に尻餅をついた。 神崎の胸に顔を挟まれて跨られる。



「あ…… ああ…… きゃああああああッ!!」



まるでワニを見たフック船長のように凄い勢いで神崎は俺から後退り後ろの壁に頭をぶつけて悶絶する。



「〜〜ッ!! あ、彩奈ぁ…… な、なんという事を」

「あッはははは! あんた最高! なんてギャグかましてんのよ」

「あなたのせいです! それと……」



キッと神崎に睨まれる。 ええ!? 俺今回は何も悪いとこないよな? そんなに睨まれても困るんだけど……



「柳瀬さんがボーッと突っ立てるせいで……」

「でもあのまま俺がもし避けてお前が壁にぶつかるよりも良かったろ?」

「うッ、うぅッ…… 痛いッ!」

「ごめん…… そこに座ってるから手が滑っちゃった」



部屋に戻ろうとした日向の手が偶然神崎の頭に当たったようだ。



「グーでしたよね!? 今グーでしたよね!?」

「なんの事? 莉亜がちっこいからたまたま頭の上に手が当たっただけでしょ」



ちっこいとは言うもののこいつら比較的背がデカいんだよな女子の割には。 篠原がモデル並みの身長だし次に日向も170近い、神崎も日向より少し小さいだけだし。




「ま、麻里まで…… 酷いです!」

「そんなショボくれなくったっていいのよ莉亜。 今日は清っちがみんなでお出掛けするって言ってたから」

「は!?」

「清人ほんと?」

「え? そうなんですか?」

「お、おい! 何言ってんだ篠原?」

「まぁまぁ。 ほうら、莉亜と麻里食い付いたよ?」

「ぐ……」



篠原は俺に近付いてコソッとそう耳打ちした。



「ねえ清人、どこ連れてってくれるの?」



日向が目をキラキラさせて聞いてきた。 お前は面倒くさがり屋だろ!? なんでそんなに目を輝かせてんだよ……



「珍しいですね、柳瀬さんが私達をお誘いするなんてどんな風の吹き回しでしょう」

「ねぇー、一体どうしたんだろうね?」



篠原は白々しく神崎にそう言って俺にウィンクする。 部屋でゆっくりしてようと思ったのに。



「清人…… どこ行くの?」

「…… 街の方に行ってみるか」

「流石車持ちは違うね!」

「余計な事言いやがって。 はぁ」

「ちょっと待って下さい下さい! 今から行くとなれば昼食代やら夕飯代が掛かります」



いや、昼飯や夕飯まで掛かるとは言ってないのに。



「うわぁー、そこら辺つっこまないでよねぇ」

「そうだった……」

「バカだな、行くって言った時からもう俺がお前らの分くらい払ってやるつもりだったよ」



ボーナスが出たからな、今はちょっとリッチなんだ。



「そ、そんなのダメです! いくらなんでもそこまで甘えるわけにはいきません」

「何言ってんだよ? 俺がいいって言ってんだから気にすんなよ。 もう準備したんだし今更行かないなんて拍子抜けもいいとこだぞ」

「し、しかし……」

「じゃ…… じゃああたしが清人のその分身体で払う」

「は?」

「「え?」」



な、何言ってんだ日向!?



「そんなの不潔です! か、かか身体で払うなんて一体何をするつもりですか!?」

「あ…… そうじゃなくて清人がやってるお風呂掃除とか清人の分の洗濯とか部屋掃除とか」

「麻里が? 自分の事さえ疎かな麻里が?」

「うん」

「な、なるほど、そういう面でですか。 ですが彩奈の言う通り麻里だけに任せるのは少し不安がありますので私達3人でって事にしましょう」

「ふーん、なんかやっぱり麻里ってそうなんだぁ?」



篠原が日向に意味深な笑顔を向けると日向が顔を顰めて篠原の鼻の穴に指を突っ込んだ。



「うわッ! やめて麻里!」

「うるさい馬鹿」



それより話勝手に進めてないかこいつら?!



「は? え? マジで言ってんの? つーか頼んでないけど?」

「それは承知ですし勝手ですけどそれなら私は柳瀬さんの行為をお受けしやすいです。 どうでしょう?」

「あたしは別に1人でいいのに」

「まぁいーじゃん? それで心置きないならさ」



どうしてこうなった…… いやまぁもういいや。 快適に過ごせると思う事にしよう。 


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