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「んん……」
あれ? 目の前に篠原の顔がドアップで…… あ! 篠原撫でてたら暖かくなってきて寝ちまったんだ!
こんなところ見られたら即アウトなのでガバッと起きて辺りをキョロキョロと見渡す。
てか何時だ? 時計を見るとあれから15分程度しか経ってないようだった、なんだホッとした。
「おい起きろ、こんなとこで寝るな」
「んー、いやぁ……」
「起きろって!」
「ふえ……? あれ…… 寝ちゃった」
目を擦りながら篠原は怠そうに上半身を起こした。
「清っちの寝顔見てたら私も寝ちゃったみたいだね、ふぁあ〜」
「寝ちゃったって…… 俺も寝ちまったから人の事言えないけどこんな所神崎に見られたらとんでもない事になるだろ」
「あー、なるだろね。 でも莉亜だけじゃないでしょ」
「は?」
すると部屋をノックする音が聞こえた。
うわぁ…… 言ってるそばから!
「あんッ!」
「変な声だすな!」
篠原をベッドから退かそうと思ったが時既に遅し。
「柳瀬さん何をしているんですか?」
「清人……」
篠原の両肩に手を乗せてまさに俺が迫ろうとしていた瞬間…… 的な光景に見えてしまっているのではないか?
「ド変態ロリコン」
「え?」
日向はそう言って俺の部屋から去って行った。 というかこれは事故だ、そんなんばっかだけど。
「柳瀬さん、彩奈これは一体?」
「あはは、やーねぇ、清っちをからかってたんだよ」
「あなたは! 柳瀬さんを犯罪者にしたいのですか!?」
「大丈夫大丈夫! どっちも問題にならなきゃそうはならないって」
「彩奈だけの問題でもないでしょうに呆れます。 柳瀬さんも柳瀬さんです! いくら彩奈に言い寄られても大人なんですから節度というものがありますよね?」
「あ、いやこれは……」
「てか買い物済んだの?」
「帰って来たんですから当たり前じゃないですか。 彩奈それと言ってないですよね?」
「あーうんうん、それは大丈夫」
何が大丈夫なんだ? でもなんだろう、さっきまでどん底だったのに篠原が来て気が紛れたのかな? 少しだけ楽になったような気がする。
「今からご飯の支度しますけど…… 今日は麻里でしたね」
「うへぇ、そうだった」
「というより麻里部屋に閉じこもっちゃいましたけど?」
「ありゃりゃ。 しゃあない、引きずり出してくるか」
「喧嘩はダメですよ?」
「はいはい」
神崎が出て行くと篠原は欠伸をしてこっちへ振り向いた。
「清っち! さっきの嘘だから気にしないでね」
「はぁ? 嘘?」
「そう、からかっただけだよ。 雪かきしたのは本当だけどね。 私も少しはみんなに貢献してあげないとなって思ってさ」
「はぁー、なんだよそれ……」
「でも清っち気が楽になったでしょ?」
「あ…… まぁお前が疑われる事したせいでな」
「じゃあ良かった」
篠原はそう言って出て行ったけどとてもあの涙は嘘とは思えなかった。 まぁ全部が嘘でないだろうな、俺もあいつの陽気さを少しは見習わないとな。
しばらくすると夕飯になると日向に呼ばれる。
「ご飯だよ変態ロリコン」
「ひでぇ呼ばれ方だな」
「彩と何してたの?」
「…… 何って大した事してねぇよ。 あいつが勝手に来てゲームしてたら寝ちまったらあいつも寝てたらお前らが来た」
撫でた事言ったらますます変態度がアップしそうだしな。
「ふぅん」
「はいはい、今後は2度とそういう事はしません」
「しなくていいなんて言ってない」
「え?」
「あ…… ええとやってもいい人は居る。 例えば……」
「ん? 例えば?」
「うぁ…… た、例えば…… あ、あああた……」
「何してるんですか2人とも。 さっさと来て下さい」
「ん、ああ。 行くぞ日向」
「…… バカ莉亜。 でも助かった」
「え?」
日向のダラッとしたトークに痺れを切らしたのか迎えに来た神崎を日向はジト〜ッと睨んでいた。
「やっと来た。 今日は麻里にしては多少はまともなご飯だよ」
「一言余計」
「あ、カレーか」
「作ったのはほとんど麻里ですが私も参加したので大丈夫だと思います」
「何が大丈夫だと思うの?」
「…… な、なんでもありません」
神崎が手伝ったおかげか日向にしては比較的美味しい夕飯だった。 なんて感想は失礼か。
「どうです? 美味しかったでしょう?」
「まぁな」
「それは何より…… ところで柳瀬さんは明日はご予定などあるのですか?」
「なんで?」
「あるんですか?」
「いや…… 特には」
先輩とはダメになっちゃったしな。
「では明日は仕事が終わったらご帰宅ですね?」
「そうだけど?」
「清人あたし達とクリスマスだね」
「彩奈はどうなんですか?」
「私も残念ながらあんたらと一緒よ」
「そうですか、ではみんなでという事で」
「清人すっぽかしたらダメだよ? ちゃんと用意してるから」
「ん? ああ」
篠原が言う通りこいつらとクリスマスになってしまった。




