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「うわぁー、今日は積もりそうだ……」
帰る途中の車の中で思わず呟いてしまった。 明日は会社の雪かきから始まりそうだな。
今日も例によって残業だったのでコンビニへ寄り夕飯を買う。 するとサッと商品棚から身を隠す人影が居た。
なんだろう? と思ってそーっと気付かれないように回り込んで近付いて見ると見覚えのある後ろ姿が……
「日向」
「ひあッ!」
ビックリした顔で俺に振り向いた。 やっぱ日向だったか。 何か買ったらしく袋を持っていた。 日向はその袋をパッと後ろに回す。
「き、清人こんなところで何してるの?」
「こっちの台詞なんだけど? 俺は夕飯食べようと思って。 てか珍しいな、お前がここまで歩いてくるなんて」
「あたしだってたまには歩く」
「何買ったんだ?」
「あ…… えーと。 ご飯買ったら? あたし帰る」
いきなり帰ろうとするおかしな行動の日向の前に立って止めた。
「おい、このまま行く必要あるか? どうせ帰るなら同じ帰り道だろ、もう真っ暗で寒いし車で帰らないか?」
「…… そうだね」
なんかいつにも増しておかしいなこいつ。 普通ならこちらから言わなくても面倒くさがりのこいつなら送ってってと言うはずなんだけど。
そして日向を連れてコンビニから出ようとすると袖を掴まれた。
「ん?」
「ご飯買わないの?」
「あー、そうだった」
弁当のコーナーから適当に選んでついでにジュースも選ぶ。
「日向も何か欲しい物あるか? 一緒に買うからさ」
「いいの? じゃああたしもジュース欲しい」
日向は温かいミルクティーを選んで俺の買い物カゴに入れた。 会計を済ませて外に出るとさっきより雪の勢いが強まっていた。
「凄い雪…… 清人とたまたま出くわしてよかったかも」
日向が車へ歩こうとした時コンビニの外のタイルで足を滑らせてコケそうになったので咄嗟に後ろから抱き抱えた。
「あっぶねぇ…… 滑るんだから気を付けろよ?」
「う、うん…… ありがと。 清人……」
ん? ムニュッとした感触が手に当たるのでよく見てみると抱き抱えた時日向の胸を鷲掴みにしていた。
サーッと血の気が引いてパッと離した。「やっぱり変態ロリコンだったんだ」とか飛んでくると思って言い訳を考えていると日向はコケそうになった拍子に手から落とした物を拾った。
その時見えてしまった、料理の本っぽかった。
「料理本?」
「見えた?」
「うん…… まぁ」
日向は溜め息を吐いて俺の車に乗った。
「料理の勉強してるのか?」
「一応…… 休みだし」
「好きな人でも出来たか?」
「…… どうだろう、気にはなってる」
「へえ、どんな奴?」
「ちょっと変態かも」
「なんだそれ…… 変わってるなお前」
「さっきの清人みたいに不意に女子の胸揉んだりする……」
げ…… やっぱその事怒ってたか。
「そういうのはやめといた方がいいぞ。 なんか身体目的みたいだぞ?」
「ぷッ…… うくくッ」
日向は口に両手を当てて笑いを堪えていた。 何がツボったんだ?
「そうだね変態だからあり得るかも」
「だろ?」
「…… 知らない」
今度はプイッとそっぽを向いた。 急に怒った…… なんかいろいろ内緒にしたかったっぽいから悪い事したなぁ。 本も見てないって言っとけば良かったな。
「お弁当食べないの?」
「帰ってから食べるよ。 ていうかドライブしないか?」
「え?」
「ドライブしたかったんだろ?」
本当は雪道にドライブとか危ないからしたくないけどな!
「うん!」
笑ったりしてたが最後に機嫌が少し良くなったのか日向は足をバタつかせた。 機嫌直ったかな?
事故は勘弁なのでゆっくりと車を走らせていく。 日向は窓から外を眺めて足で小刻みにリズムを刻んでいる。
「凄いね雪…… 積もるかなぁ」
俺も高校の時は積もると楽しかったけどな、雪玉友達にぶつけたり出来て。
町内一周程度だけど日向は満足したみたいだ。 帰ってきて部屋に戻ろうとしたら日向に呼び止められる。
「どこ行くの? 夕飯食べるんじゃなかったの?」
「ああ、部屋で食べるんだよ」
「スープ入れるからあっち行こう?」
グイグイと俺の袖を引っ張ってキッチンへ連れてこられた。
日向の作るスープ…… なんか怖い。 そう思ったらインスタントだった。 ちょっとホッとした。
「寒いからコーンスープ…… で良かった?」
「ああ、うん。 ありがとう」
日向は俺の正面に座って食べている俺をジーッと見ている。 そんなにマジマジと見られると食べ辛い…… のだが食べ終わるまでずっと日向の視線を感じながら食べた。 胸を触った仕返しか?
「美味しそう。 あたしにも飲ませて?」
「え? ああ、ほら」
コーンスープを渡すと日向は一口飲む。
「美味しい」
「そうか」
「…… うん」
いつの間にかコーンスープは日向が全部飲んでいた。




