16
俺はある日夕飯を食べ終わってからしばらくしてコンビニにタバコを買いに向かった。
コンビニに着いて車を降りたところで駐車場の近くのベンチになんだか見覚えのある奴が……
あの金髪ピンクの髪は篠原じゃねぇか。 なんか彼氏? かよくわかんないけど男と揉めている。
なんでこいつがここに来てるんだよ? 関わりたくねぇ、と思って店の中に入ろうとすると……
「あ!」
「あ?」
「あ……」
篠原が俺に気付いた。 ほら来たよ、こうなると思った。 向こうの男は「あ?」って明らかに良い感じじゃないよな当然か。
「き、清にぃ〜ッ!!」
「おい! 彩奈!!」
男を振り払って俺に駆け寄り後ろにサッと隠れた。 俺お前の兄ちゃんにいつなったの?
「ああん? 誰だお前?」
「いや知ら……」
言おうとしたら篠原にグイッと腕を引っ張られこっそりと俺に言う。
「そういう設定でお願い清にぃ」
こ、こいつ…… 俺に嘘付けってのか!?
「助けてくれないと私犯されちゃうかも……」
ウルウルと目に涙を溜めて俺に懇願してきた。 なんか胡散臭い…… でも仮にも一緒のとこに住んでる奴が万が一そうでもなったらと考えると仕方ないな。
「てめぇこいつのなんだよ?」
「見てわかんないのか? こいつは俺の妹だ」
「似てねぇし嘘くせぇ」
「嘘じゃないよねぇ? 清にぃ」
「そ、そうだな彩……」
だよな…… てかお前よりも年上だぞ俺は! なんでどいつもこいつも俺を敬わないんだ?
「だったらどうするんだ?」
ふッ………… だがお前は知るまい、配達や荷物運びで鍛えられた俺の腕力を。 20キロの重さを軽々と片手で持ち上げる俺はこんな見た目だけのB系なんぞに負ける気はしなかった。
「んだとてめぇ、調子乗ってんじゃッ…… いてッ」
俺の胸ぐらを掴もうとした腕を掴んで締め上げる。 ああ、良かった。 こいつ俺より力なさそうだ。
「ほら、どうする?」
「も、もういいッ!」
腕を離してやるとそいつはあっさりと帰って行った。 はぁ、子供相手になんでこんな事しなきゃいけないんだ……
「おい篠原! これはどういう事だ!?」
「ごめぇ〜んッ! あいつにちょっと優しくしたら気があると思われてさ、しつこくて困ってたんだぁ、清にぃのお陰で助かっちゃった」
「自業自得じゃねぇか。 つーかその茶番いつまで続けてんだよ」
「えー? 私いいと思ったんだけどなぁ。 もう一回彩って呼んでみ? カッコ良かったよ清にぃ」
「うるさい、とっとと帰れよ」
「んー、そうだねぇ。 でもちょうど車あるし送ってってもらわなきゃ。 私1人になっちゃったし」
「あのなぁ…… 」
つーか俺がこなかったらどうする気だったんだ?
「でも意外だねぇ。 清っちって喧嘩っ早いんだね。 負けたらどうするの?」
「負けそうだったらそもそもあんな事しないでお前を連れて逃げるけど?」
「えー? 逃げちゃうの?」
「バカか? あんな状況で俺が負けるとわかってて挑んだらその後お前どうなるかわかったもんじゃねぇだろ?」
「へぇ。 清っちそこまで考えてるんだね、私のために!」
「はぁ…… お前のためにいらん事させられたわ」
コンビニでタバコを買いとりあえずベンチに座って一服すると隣に篠原が座った。
「タバコ吸うんだ? へぇ〜」
「まぁそれなりにな。 煙くるだろ? 車に乗ってろよ」
「あははッ、清っち大人みたい」
「大人だよ…… そんな俺って大人に見えないか?」
「童顔だからねぇ。 可愛くていいじゃん」
「いいのかそれ…… てかお前ってモテるの?」
こいつがモテそうなのはわかるが一応聞いてみた。
「えー? モテなさそうに見える? 失礼だなぁ清っちは。 私あの2人よりは圧倒的にモテてるわよ、麻里もああ見えてモテるしね。 あんなんでも男の庇護欲かき立てて需要あるみたい。 それと莉亜も可愛いじゃん? でもあれもあんなんだし近付き難いみたいな印象持たれてるけどモテるよ。 まぁ私のセクシーさには敵わないけどね!」
「何がセクシーだよ。 前から思ってたけどその頭バリバリ校則違反だろ?」
「あ、これぇ? 可愛いっしょ? 大変なんだよぉ〜、美容室に定期的に行かないとこんな綺麗にならないんだから」
「金の無駄だな。 つーかそんな金あるのか?」
「ん〜? まぁね、私可愛いから。 にしし」
理由になってないぞ?
「タバコ美味しい? 吸ってみていい?」
「ダメだ。 ガキは飴でも舐めとけ」
俺は篠原にタバコと一緒に買ったキャンディを渡した。
「ありゃ? いつの間に?」
「ついでに買っただけだ」
「ふぅん。 清っち優しいね! お礼にハグしてあげよっか?」
「いらねぇよ。 可愛いからって調子に乗るなよ」
「あはは、照れてる?」
「大人をからかうんじゃねえぞ」
「ププッ、そんなに大人を強調するからかえって子供っぽいんだよ」
「うるせぇ」
そして篠原を連れて帰ると風呂から出たばかりの日向と出くわした。
「ん? 清人と彩がなんで?」
「あー、ちょっとそこでね。 ねぇ? 清にぃ」
「清にぃ?」
こいつ…… それまだやる気かよ? 俺と篠原を日向は訝しげに見る。
「こいつのせいで面倒な目にあったわ。 お前も風呂入ってとっとと寝ろ」
「あーん、清にぃのいけずぅ!」
「いてッ!」
何故か日向に背中を叩かれた。
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