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「なっはっはっ! あんたらバカ過ぎて笑っちゃうわぁ〜!」
「お前な……」
「こうなるから嫌だったのに」
「はぁー、清っちのおつむは高校生以下レベルに退化してますな!」
「そ、そんな事はねぇ! どれどれ……」
篠原が出していた問題をじっくり考える。 極限…… 極限ってなんだっけ? 確か関数があれ? 関数って……
「清っちほんとに大卒?」
「うるせぇ、数学なんて所詮公式で成り立ってんだろ?!」
「まぁ公式と定理で成り立ってるけどそれ自体覚えてないんじゃねぇ。 もっと最初の段階から勉強し直さなきゃダメなのよ。 まず例題を見てから数字を組み込んでいってさ、ほら、こことここ……」
篠原はさも簡単に公式をさらさらと書いていく。 神崎が言った通りこいつって頭良い。
「そんでここがこうなって…… 麻里聞いてる?」
「ゲシュタルト崩壊……」
「あちゃー、こりゃ険しそうね。 清っちはわかった?」
「な、なんとなく。 俺は理数系がやっぱり苦手なんだって事がわかった」
「もう〜。 苦手でも最低は赤点以上は行かないと」
「お前は大丈夫なのか?」
まぁ大丈夫なんだろうけどな!
「はッ! よゆーのよっちゃん! 受験スレスレで麻里が泣きついてくるんじゃないかと思ってたけど今からなんて麻里も深刻さがわかったのかな?」
「彩が勝手にここに来てるだけじゃん」
「あはは、そしたら清っちのおつむも麻里と大して変わんないってわかっちゃった」
「悪かったなぁ、はいはい、俺は三流大卒のバカですよ」
「むむむ…… 彩は邪魔するなら出てって!」
「わわわッ! じゃあ助けて欲しかったらいつでも言ってねぇ? 清っち関係は手貸す気はないけど」
日向は篠原を部屋から押し出した。 それにしても大学受験の頃は俺も結構焦って勉強したな、ほぼ一夜漬けでその時だけで頭に入らなかったけど。
「はぁ……」
「ごめんな。 俺も大した事なくて」
「ううん。 でもあそこの大学入らなきゃあたし清人と離れ離れになっちゃうかもしれないし」
「あそこって倍率高いのか?」
「んー? よくわかんないけど入れるように頑張る」
俺の学力もあれだがなんか日向を見てると不安になってくるな。 ガチで頭が良い篠原や神崎が居るんだからやっぱ勉強教えてもらうべきだな。
「日向。 俺も付き合うからさ、篠原や神崎にも教えてもらおうぜ?」
「え?」
「神崎なら日向に頼まれれば喜ぶと思うし篠原だっていつでも助けてあげるって言ってただろ?」
「うーん……」
「みんな一緒にって言ってたじゃん? ていうか神崎なら黙ってても日向に教えてやるとか言いそうなのにな」
「前はそうだったけどあたしが嫌がってるってわかったら…… そうだよね。 教えてもらう、そしたら清人と一緒に居れる」
なんだ、神崎が日向の勉強見ないのはそういう事か。 日向は神崎は忙しそうだとか言ってたのは日向がただ拒否ってただけだったっていう……
その次の日の夜……
「や、柳瀬さん!!」
「おま…… ノックしろよ」
「うあッ、そうでした。 すみません、あ! ま、麻里が私に勉強教えてと!」
「なんでその事で俺に来るんだよ?」
「へ? あ、ああ…… そうですね。 私ったら。 ええと、何か飲みます?」
「え? じゃあホットミルク」
「は、はい!」
そして戻ってきた神崎はさっきよりかは幾分落ち着いていた。
「はぁ、それにしてもどういう心境の変化でしょう? 最後に教えた時はくどい、ウザい、キモい、眼鏡割りたいとあんなに邪険にされていたのに!」
神崎はキラキラと目を輝かせて言ってるがひでぇな日向の言い様は……
「なんか大学が危なそうだからって言ってたけどな」
「なるほど、それは由々しき事態かもしれません」
「てか教えて欲しいって言われたんなら今からでも教えりゃいいじゃん?」
「そうしようと思いました、ですがあまりに嬉しくてついはしゃいで行ったせいかウザいしキモいから今日はやっぱり無理って言われました。 あーん……」
ほんと神崎に容赦ないな日向は……
「まぁ気持ちはわかるけど程々にな」
「でも少し意外です」
「ん?」
「私父にバカヤローなんて言ったものですから怒りを買って何かしら妨害などされると思ってました。 でもここまで順調に進路なども決まって。 おこがましい事ですが私の事を少しでも考えてくれたのでしょうか? だといいな……」
「…… かもな」
いやいや! 現在進行形で俺にヘイトが向けられて絶賛妨害中なんだけどな! ついでにお前のおじいちゃんからもぶっとい釘も刺されてな! と心の中でつっこむがこいつのこの顔を見てると言えねぇ。
「まぁ神崎とかが協力すれば鬼に金棒だな、お前の勉強時間が少し減るけどさ」
「構いません、このまま行けば問題なさそうですし。 そうだ! 柳瀬さん来月の第二土曜日は空いてますか?」
「え? ああ、うん」
「本当ですか? …… でしたら私の学校の文化祭があるんです、その日は一般公開なのでよろしければ来てみませんか?」
「いいの?」
「はい!」
「わかった、頭に入れとくよ」
「ありがとうございます! 麻里や彩奈も来てくれたらいいなと言っていたのできっと喜びます」
そうか、文化祭か。 こいつらにとっちゃ高校最後の文化祭だな。 去年は日向と篠原に誘われたけど会社があって行けなかったしな。 まさか神崎から誘われるとは。
「私達のクラスでは演劇と出店2つやるのですが私と彩奈は出店担当です。 それに麻里はなんと演劇のヒロインなんですよ!」
「ええッ、日向が? 篠原じゃなくて?」
「彩奈が麻里にやらせた方が面白そうという事になって麻里に決まったんですよ」
日向がヒロイン…… 可愛いのは確かだけどまったく想像できない。
「よく日向引き受けたな?」
「物凄く嫌がってましたけどもう勢いでそのまま決まってしまいました」
「ああ……」
でも少し見てみたいな。 仕事があったら行けないだろうからちょうどよかったかもしれない。




