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「おかえり莉亜」

「ただいま麻里。 ん…… 元気そうですね? 確か具合悪いとか」

「もう治った」

「また悪い癖が出ましたね麻里…… 柳瀬さんまで休ませて!」



ああ、もう部屋越しからでも聞こえてくるよ、玄関近いし。



「おかえり神崎」

「あ、柳瀬さんただいま…… って仕事大丈夫だったんですか?」

「大丈夫だから早退したんだろ?」

「ま、まぁそうですけど。 麻里のワガママに振り回されてるのではないかと」

「そんな事ないよね? 清人」

「え? あ、ああ。 だから心配すんなよ」



仕事をしてない分かなり融通効くんだよ、寧ろ今はなんでも使ってくれ。 なんて言えないしなぁ。



「柳瀬さんがいいならいいですけど…… 麻里、ズル休みはダメですよ?」

「はぁーい。 あたし夕飯作らなきゃ」



日向は神崎がウザくなってきたのかさっさとキッチンの方へ行ってしまった。



「もう…… ちゃんとわかってるのでしょうか麻里は。 でも少し良かったかもしれません」

「何が?」

「柳瀬さん最近遅くまで仕事詰めだったようなので疲れてましたよね? だから少しホッとしました」

「え?」

「あ! え、ええと…… ズルはダメですよ!?」

「お、おう……」



いやぁー、心にグサグサと響くな…… 疲れてる事は疲れてるけど違う意味で疲れてるし。



神崎と話していると玄関のインターホンが鳴った。 篠原かと思ったがあいつがそんな事すると思えないしと思い開けてみると宅配員だった、神崎宛らしい。



「おじい様からです」

「は?」



神崎のおじいちゃん…… あー、神崎には悪いけどあんまりというかかなり嫌な相手から宅配便が届いたなと思った。 神崎が開けてみると高級そうなお菓子が入っている。



「差し入れですかね?」

「そうなのか?」



一瞬毒でも入っているのかと思ったけど神崎が居るしそんな事はないだろう。



「神崎のおじいちゃんって優しい人なんだな?」

「ええ。 とても私に良くしてくれています、柳瀬さんもこの間お会いしてわかったと思っていましたが」



ところがどっこい、その後もあってそうは思えなくなったんだよな…… まんまと騙されたぜ。 差し入れを見て嬉しそうにしているこいつにはそんな事とても言えないな。 



くそッ、俺は一体いつまでこのままなんだ? やっぱりずっとか? 俺が神崎に考え直せって言わないのが悪いのか? でも言えるかよ…… 少しスカッとした気持ちが神崎のおじいちゃんのせいでまたどんよりと暗い影が覆ったような気がした。



「柳瀬さんにいっぱいあげちゃいます」



神崎がお菓子を俺に差し出した時だった。 吐き気を覚え目の前がグニャリと歪んだ。



「ふえ? 柳瀬さん?!」



目の前で倒れそうになり神崎はお菓子を落として俺を支えた。



「あ、あのッ! いきなり何を!? って大丈夫ですか?」

「ごめ…… ん、やっぱ俺少し疲れてるみたいだわ。 なんか気持ち悪くなってきたし今日夕飯食えなそうだ、日向に謝っておいてくれるか?」

「わかりました、柳瀬さんは安静にしてて下さい。 過労かもしれません」



いや、どっちかっていうと精神的なものかもしれない。 鬱…… 鬱なのか?



神崎は俺を支えてベッドに寝かせてくれた。



「柳瀬さん明日は会社休みましょうね? ダメですよ、そんなになるまで無理しちゃ。 私にも言ってくれたじゃないですか? だから明日は休んでいて下さい」

「ああ、そうしようかな……」

「そうして下さい。 誰かに居て欲しいなら…… いいえ、居た方がいいかもしれません。 私達のうちの誰かひとり休みますから」

「流石にそれは悪いよ、俺はひとりで大丈夫だから学校行けよ」

「ダメです、柳瀬さん最近無理ばっかりしてるように見えます! 仕事が忙しいのは仕方ないかもしれませんが身体を壊しては元も子もありません。 麻里は今日休んじゃったので私か彩奈が明日休みますね?」



えぇ!? 話を勝手に進めるなよ……



「それと! 食欲なくても少しは食べなきゃいけないですから。 スープ系だったら多分食べられますよね? 何か作ってきます」

「あ、おい……」



行ってしまった。 はぁ〜、でも俺も朝からハロワに行って無駄だとわかってるのに面接したりキャンセルされたりしてひたすら時間潰したり相当きてたのかもしれない。



昼間からここに居ていいなら今はその方が精神的に楽かも。 立ちくらみした時から頭も痛くなってきた。 



ハッキリ言ってスープも飲めそうにないや、出来るまで寝てよう。 そうすれば少し良くなってるかもな。




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