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「清っちこれ買って?」

「ダメダメ、節約だ」

「むむッ! 最近清っちドケチ!」

「清人、じゃあこれは?」

「んー……」



仕事をクビになってから2週間、ボーナスがまだ手付かずで残っているからいいものの今までのように暮らしていたらとてもじゃないがすぐにお金がなくなってしまう。 



そして俺が仕事をクビになった事をこいつらは知らない。 なぜなら俺は仕事に行くフリをして普段と変わらずに生活しているからだ。 



クビにされたなんて言わなくても俺が先輩の居る職場を辞めるなんておかしいしクビにされたなんて言えばもしかして神崎の父さんに辿り着くかもしれないしな、そしたら神崎は俺に負い目みたいなものを感じてしまうかもしれない。



せっかく目標も決まったのにそれじゃああんまりだしな。 なので神崎の父さんの提案は飲むわけにはいかない。



と言っても俺の現状かなりヤバい、先輩の会社に戻れない以上他の会社に行くしかない。



時間は山ほどあるので案内所に行ったりネットで検索したり……



トントン拍子で話が進んだところもあった。 でもなぜか…… というより神崎の父さんのせいだろうか? 面接の前日に中止されたりがもう3件。 明らかにおかしい。



もうどっかに訴えた方がいいかもしれないけど神崎の父さんだしそれでもし神崎自身に何かあったらと思うとそんなわけにもいかないしどうしよう?



朝になり今日もただただ時間だけが無駄に過ぎていく虚しい1日だ。 仕事にも行ってない俺にこいつらは毎日せっせと弁当を持たせてくれる、非常に申し訳ない。



「はい清人。 仕事頑張って」

「ありがとな日向」

「ん? どうしたの? いつもはこんな風に頭撫でてくれないのに」



あ、しまった。 ごめんなと思ってついつい日向の頭を撫でてしまった、おかしな振る舞いをしないように気を付けないといけないのに。



「いや、いつもありがとなって思ってさ」

「えへへ。 嬉しい、残業しなくて済むといいね? 清人最近頑張り過ぎ」

「だな……」



騙しているのでやっぱり罪悪感がある。 



「柳瀬さん仕事に遅れますよ?」

「あ、そうだな。 じゃあもう行くよ」



時間潰しにだけど。 俺は家を出てとりあえずコンビニの駐車場で今日は時間を潰す。 毎日仕事を探しに行ってて何度もダメでへこたれてしまった。



あータバコもやめなきゃなぁ。 でもこんなんだからついつい吸う本数も多くなりがちでやめられるのかな?



一応45万ほど貯金はあるとはいえこれが尽きる前になんとかしないといけない。 今住んでるところが本当に安く手良かった。



仕事なんか一生したくないニートだったら最高! とか思ってた時期もあったけどいざ何もないと途轍もなく不安になってくる。 



てか神崎製薬に目を付けられて俺の人生お先真っ暗じゃね? こんな事ってまかり通ってるんだな、これじゃますます陰謀論者になっちまうよ。 やっぱあいつら世の中に病気ばら撒いて金儲けしてんじゃねぇの? 神崎の父さんみたいなのならありえそう。



そうこうしているうちに車の中で寝てしまっていた。 起きると11時半を過ぎていたので日向に渡された弁当を食べる。



何やってんだろうな俺…… そうだ会社は今の時間昼休みだ。 通ってみようかな。 先輩からはちょくちょく連絡来るし仕事が終わった後も何度も会ってる、神崎達には残業って言ってるけど。



クビになった会社にたまにこんな感じで通り掛かる、凄く未練たらしいな俺は。



その後図書館に行き終わりまで時間を潰してパーキングに寄りまた時間を潰す、今日は先輩も来れないみたいだしここでゆっくりしてよう、帰ってもあいつらの事騙してるから話し難いし。



そしてまた寝て22時過ぎになった。 そろそろ帰ってもいいよな? こんな生活もううんざりだ。 明日は休みだし普通に家に居れるけど……



「おかえり清人」

「なんだよ待ってたのか?」

「だって最近いつも遅いから」

「あ、柳瀬さんおかえりなさい。 麻里ったら最近ずっと柳瀬さんが遅いから心配してるんですよ?」

「ごめんな日向。 お前ら最近順調か?」

「なんですか唐突に?」

「ああ、いや。 学校生活変わりないかなって」

「それがなんですけど……」



神崎の顔が一瞬曇った。 



「父から電話が掛かって来まして」

「え!? それで?」

「私の進路の事で…… 考え直せと。 ですが私はもうちゃんと自分の目標も見つけましたし今更父の言う通りの人生を歩むつもりはありません。 そんな事をしたら私の事で親身になって相談に乗ってくれたり励ましてくれた柳瀬さん達にも申し訳が立ちませんし何より自分自身の事です!」

「そうだな。 あんな奴の言いなりになんてなる事ないさ」



これじゃますます言えないな。 こうまで生き生きとしている神崎の重荷にはなりたくない。 俺がこんな事になってるなんて知ったらまたこいつは前に逆戻りだ。



「清っちおかえり!」

「ただいま篠原」

「なんか疲れたような顔してるねぇ?」

「清人は仕事してきたんだし当たり前」

「じゃあ私が癒してあげるよ」

「彩奈、更に疲れさせるの間違いでしょう?」

「あはは、明日は休みなんだから大丈夫!」



はぁ…… こいつらはいつもと変わらない分やっぱ辛いな。







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