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「海だぁ!」
「海ですね」
「海だね」
「柳瀬君付き合ってくれてありがとね」
「こちらこそ誘っていただきありがとうございます」
電話で先輩に海に誘われた、だが電話で海という言葉が聞こえた瞬間篠原の「私も行きたーい!」という言葉が電話越しに聞こえてしまい神崎達も一緒にという事になった。
先輩はともかく神崎と日向の水着は篠原の物だ、だから少し過激なんだけど……
つーか日向上にパーカー着てるから家に居る格好と変わんねぇ。 にしても先輩の水着姿が見れるなんて夢みたいだ。
「ほら、柳瀬君も海に入ろ?」
先輩に手を引かれ浜を歩いているとチラチラと視線を感じる。 先輩も美人だからな、それとカップルみたいに思われてるんだろうか? でもお互い好き同士だからそう思われたっていいはずだ。 ちょっと優越感。
「清っちこっちこっち〜!」
「あ、彩奈! あまり水掛けないで下さい! 濡れてしまいます」
「なんのために水着かしたのよぉ? それに麻里! あんたここまで来てパーカー着てるって頭おかしいの?」
「恥ずかしいもん」
家では下履いてる事の方が少ないくせに恥ずかしいのか?
「うふふ、はしゃいじゃって可愛いね」
「先輩もなんだかはしゃいでるように見えますけど?」
「わかる? 柳瀬君と来たからかな」
先輩とその花柄の水着姿が可愛くて俺も内心はしゃいでます。
「もう〜、柳瀬君どこ見てるの?」
「あ、いえ…… 先輩の水着姿初めて見たから。 その、可愛いです。 露出も多くて」
「そりゃあ柳瀬君に見せるためにね。 きゃッ!」
途端に俺と先輩に水が掛けられる。 篠原だ……
「こら! 2人でなんか特別な雰囲気になろうとしてなかった?」
「気のせいだ、つーかやったな!」
「きゃあッ! 冷たぁーい!」
「清人……」
「ん? 日向は入んないのか?」
「そうよ麻里ちゃん、パーカー置いて来てあげるからせっかくだし入ろう?」
「うん……」
日向はパーカーを脱ぐと心細そうに両手で身体を隠した。
「お前いつも家で肌見せてんのになんで隠してんだ?」
「清人以外の人居ると恥ずかしい…… それに彩の水着だし」
しかも紐パンだもんな、なんだか篠原の悪意を感じる。
「こういうの清人好き?」
「ええと…… 可愛いと思うぞ」
そう言うと日向は俺の腕にギュッとしがみついた。 いろいろ当たるのでビクッとしてしまう。
「おい、くっつきすぎだって」
「くっついてる方が隠れる」
するとまたバシャッと篠原に水を掛けられた。
「ほら、2人ともこっち来なさいよ」
「ひぐッ…… 冷たい」
「入っちゃえば慣れるわよ」
「麻里も来たんですね、一緒に遊びましょう!」
「神崎楽しそうだなぁ」
「まぁ海で泳ぐのも初めてみたいだし当然じゃない? ねえねえ清っちって泳げる?」
「そりゃそれなりに」
「じゃあ私あっちの方まで泳ぐから追いかけて!」
「え? おい!」
篠原は勢いよく泳ぎ出してしまう。
「大丈夫でしょうか? 彩奈は運動出来ますけど心配です」
「はぁ…… 俺も追い掛けるよ」
「よろしくお願いします」
「あたしも」
「麻里は泳ぐの得意じゃないでしょう?」
「すぐ戻って来るから神埼と待ってろな?」
「うん……」
俺も篠原の後を追い掛ける。 あいつ海なのに速いなぁ。 これだったらほっといても良さそうな気がしてきたけど念のためだ。
すると篠原の姿が消えた。
え? 海の中に消えた!? まさか脚でもつったのか?
そう思い急いで篠原が消えた場所へ向かった。
「ぷはッ!」
「うわッ!」
「ありゃ? もう追いついたんだ、速いね清っち」
「生きてたか。 溺れたのかと思ったぞ?」
「あはは、それがなんだけどどっか行っちゃった」
「何が?」
「水着」
「………… はぁ!?」
上は付けている。 どっか行ったのってまさか下の方じゃ…… こいつも紐パンだったよな?
「あーあ、困ったね」
「もうちょい焦れよ! どこ行ったんだ!?」
「手伝って清っち」
俺も潜って探そうとしたがいろいろ篠原付近はヤバそうなので離れた場所を探す。
「おーい、柳瀬君」
「先輩?」
「やっと追い付いた。 こんなの拾ったけどもしかして彩奈ちゃんの?」
「あ! それ私のだ、弥生さんが見つけてくれたんだね、ありがとう」
「なくしちゃダメだよ?」
「先輩助かりました」
「ふふッ、柳瀬君も苦労するね」
「履いたか篠原?」
「うん」
「じゃあ戻るぞ? まったく気を付けろよな」
「柳瀬君もね?」
「は、はい!」
「はぁ……」
篠原が大きく溜め息を吐いた。
「ん?」
「あ、ううん。 弥生さんと清っちってやっぱ凄く仲良いんだなって」
「うふふ、彩奈ちゃんジェラシー?」
「だって清っちの顔見てるとわかるよ」
日向にも言われた事だ…… 俺ってどんな顔してるんだ?
「でも私も彩奈ちゃんが羨ましいな」
「え?」
「柳瀬君をグイグイ引っ張って行くエネルギッシュなとこ。 私も見習いたい」
「あんま見習わないで下さいよ、こいつにはいつも困らされてるんで」
と言うとまた篠原に水をぶっ掛けられる。
「何すんだよ!?」
「自分の心に聞きなさいよ!」
「ほらほら、莉亜ちゃんも麻里ちゃんも心配してるから戻ろう?」
神崎達のところへ戻り全員でビーチバレーをしたり海から上がって砂遊びをしたりしていて先輩とこいつらとの海での時間は過ぎていった、そして神崎達の夏休みもあっという間に過ぎて行く。




