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「ええと…… 何かな?」

「呆れました、私待ってたんですよ?」

「待ってた?」

「聞いてもらいたい話があるって言ったでしょう?」

「あ、ああ。 あの時の事か」



神崎の下着姿でそんなのぶっ飛んでたわ。 騒がれないようにするのに必死だったから。



「ごめん思い出した。 それで話って?」



神崎は溜め息を吐いてベッドに腰掛けた。



「柳瀬さんもどうぞお好きな場所に座って下さい」

「ん? ああ」



そう言われたので神崎の勉強机の椅子に座り向かい合う。



「私父とこの前会ってから迷っていたんです、自分の進路の事。 それで考えました、前はしっかり東大と定まっていたのですがそれは私の望んだものではなく父の望みです。 そしてそれを目指した方がいいのかと。 父の望みとしてではなくそこを目指すのもいいのかもしれませんが私は……」



そっか、神崎だから東大目指すのもありだろうし。



「他にやりたい事でも見たかったのか?」

「…… とてもバカな事かもしれません。 それに自分勝手で」

「どういう事だ?」

「大学には行きます、ですけど東大には行きたくありません」

「え? まぁ東大じゃなくても他にも立派な大学はあると思うけど」



そう言うと神崎は首を振った。 だったらどこの大学に行くつもりなのかなこいつは。



「私みなさんと一緒に居たいです!」

「え? 一緒って…… 日向や篠原もそれぞれやる事あるんだろうしそれはどうにもならないような気が」

「麻里と彩奈は大学に進みます」

「あの2人はそうなのか。 でもお前はそれでいいの? 思い付きとか勢いとかで決めたわけじゃないよな?」

「柳瀬さんには言われたくありません。 私ちゃんと考えました! 考えて考えて今の結論になりました、柳瀬さんにはこの事を伝えたくて聞いてほしくて…… 」



そっか、でも神崎はそう決断しても日向とか篠原がそれに合わせるとも思えないよなぁ、2人にとってもどこの大学行くとかはかなり大事な事だと思うし。



「そうか。 でも神崎がそう決めたんならそれでいいと思うよ。 お前のおじいちゃんとおばあちゃんも神崎の将来は神崎自身が選べばいいって言ってたんだからさ」

「はい! そうなれるように頑張ります」

「一緒に居てやれる時間はもう限られてるけど俺も応援するよ」

「え? 柳瀬さんはここから出て行っちゃうんですか?」

「ん? だって大学行くんだろ? そしたらその大学の近い場所とかに引っ越すんじゃ?」

「ああ…… ビックリしました、柳瀬さんが引越しを考えているのではないかと思いましたよ。 私はどこにも行きませんよ、ここから街の方へ行く手前にある大学に行こうと思ってたんです」

「え? そんなとこにあったのか?」

「はい! 電車で30分という感じなので無理はないと思います」

「本当にそれでいいのか?」



神崎は頷いた。 ずっと縛られていた分自分で自分の進路を決めれてスッキリとした顔だった。 



エリートコースを選ばずに己が道を行く事にした神崎にとやかく言うのも野暮だよな。



「でもそれ日向と篠原には話したのか?」

「はい、2人も同じ大学に行く予定だったんです。 麻里は引っ越しもしなくて済むしという事でしたし彩奈もそれが理由ととりあえず大学に入って後はそこからっていう事でしたし」

「あれ? てことは……」

「卒業してもみんな一緒です!」

「ああ……」

「え!? 柳瀬さん?」

「ごめん、ちょっとクラッとした」



少し戸惑った。 俺少し…… ていうよりかなりホッとしたのか? こいつらと俺自身離れたくなかったのか? そういう気持ちはあったかもしれない。 



だけど神崎の一緒に居たいって気持ちを聞いて嬉しく思った自分がいる。 先輩やこいつらに対して自分の気持ちを決めてない俺がそれを喜んでいいのか?



「…… 本当は柳瀬さん自身は納得してないですか?」

「いや、応援するって言ったろ? それに嘘はないよ。 だけど俺ってお前らに対して中途半端だろ? 好きって言われたのに俺自身はこれだもんな、だからそんな俺がお前らと一緒にっていうのは自分自身虫が良すぎるだなって……」

「何言ってるんですか今更。 そんなのわかってます、私や麻里も彩奈も。 だけどそんな柳瀬さんを好きなのは今も変わりません。 自分で決断した事です、後悔なんてありませんよ。 それに私決めてるんです! 大学を卒業した後の事も。 例え柳瀬さんが私を選ばなかったとしても私は……」

「そういう事」

「良かったね清人」

「日向、篠原……」



話が聞こえてたのか2人も入ってきた。



「まだしばらく一緒だね清っち」

「あたしは清人が居ればいいもん」

「というわけです柳瀬さん」

「そっか。 お前らがそう決めたんなら俺があーだこーだ言っても聞かなそうだしな」

「わかってるじゃん清っち!」

「どさくさで清人にくっつかないでよ」



そんな俺達を神崎は優しく微笑んでるのを見てもう吹っ切れたんだなと思った。



神崎は自分の将来を考えて決めた、日向や篠原も大学進学へって道を選んだ。 良い事なんだよな。 なら……



「じゃあお祝いに寿司でも食べに行くか!」

「わぁーどうせ回転寿司だろうけど嬉しー(棒読み)」

「清人が連れてってくれるならどこでも嬉しい」

「柳瀬さんそんな事してお金大丈夫ですか? また彩奈に……」

「いっぱい食べちゃうもんね!」

「お手柔らかにな」



まぁこんな事くらいしか今は出来ないけどな、この時は素直に喜べていた。 



今考えると俺もこいつらへの気持ちとか先輩への事もあったし他に考えている余裕もなかったのかもしれないがそれは後の話だ。





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