109
「おーい、ご飯出来たよぉ」
「だって。 清人」
「あ、うん」
俺が日向が買ってきたお土産を見ていると篠原が呼びに来た。
「行く前より食材増えてるけど清っちが買ったわけじゃないよねぇ? 弥生さんでしょ?」
「だって。 清人」
ぐ…… 蒸し返すなよその話。 日向もわかっててやってるな。
「いやー、清っちもやるわねぇ。 私らが居ない隙をついて弥生さんを招き入れるなんて計画的犯行ですな」
「だって。 清人」
「黙ってたのは悪かったって。 日向その目やめてくれよ……」
「まぁ私らが居ると弥生さんもなかなかチャンスとかないからわからない事でもないけどもしかしてやる事やった?」
「やった?」
今日の日向は篠原に嫌に息を合わせてくるぞ……
「ははは…… 節度を待てと神崎にもしつこく言われてるからな、ここでそんな事あるはずないだろ?」
「んー、新しいテーブルにお酒に弥生さん…… テーブルは意味不明だけど。 でもまぁご飯冷めちゃうからキッチンの方に来なよ」
キッチンへ行くと神崎も居てまたいつもの風景だ、なんか少し落ち着くな。
「ジャーン! 予想外に食材あったので今日はビーフシチューオムライスでーす。 清っちオムライス好きだったでしょ? 弥生さんが来た事はさておき、寂しい思いさせてごめんね清っち」
「寂しいなんて言ったか俺?」
「流石彩奈、美味しそうですね」
「ぱっと見はね」
「ケチつけるなら麻里はお預けしちゃうよ?」
まさかのビーフシチュー被りが出てきたけどオムライスだしな。 食べてみると先輩とはまた違ったビーフシチューだけどとても美味しい。
「美味しい? 清っち」
篠原を見ればニコッとして俺をジッと見つめていた。
「ああ、美味しいよ」
「ん、そっか」
え? なんだこの大人しい反応は。
「彩どうかしたの?」
「んふふッ、なーんかこうやって私達と清っちで食べるの久し振りだなって思って」
「そうですね、修学旅行は楽しかったですけど柳瀬さんは今頃どうしているのかなって思ってましたものね」
「うん、あたしもそればっかり考えてた」
「それちゃんと楽しめてたか?」
「清っちの事クラスのみんなには言い難いもんねぇ」
「それはお前が適当な事ばっかり言ってるからだろ?」
「言ったら言ったで騒ぐもんねみんな」
篠原はグイッと椅子を動かして俺の近くに来た。
「彩、清人の邪魔」
「いいじゃないの、ねぇ清っち。 何気に寂しかったんだよ」
「あたしだってそうだし」
う…… 2人に挟まれて食べ辛い。 両腕掴まれてるし。
「柳瀬さんが困ってますよ? 2人とも寂しいのはわかりましたからそろそろ離れて下さい」
「莉亜こそ帰りのバスで清っちに会えるからってウキウキしてたわよね」
「なッ!? 私は早く帰って柳瀬さんが家を散らかしてないか確認したかっただけです!」
「嘘。 顔に出てた莉亜」
「ち、違います! 違いますからね柳瀬さん!」
「いや、まぁお前も落ち着けよ神崎」
ああ、そうそう、これがいつもの光景だな。
「ん? 清っち何ニヤついてるの?」
「え? ニヤついてたか?」
「はい笑ってますよ柳瀬さん、まさか私をバカにして!?」
「ああそうだったか、ごめん神崎違うんだ。 俺もちょっと違和感あってさ、お前らが帰って来てこうやっていつもみたいに騒いで夕飯食べてる光景見て少しホッとしたっていうかさ」
「清人……」
「うわッ! なんで頭突きすんだよ日向?」
「清人のせいだよ」
「だね」
「ですね」
夕飯を食べ終わってから神崎達は俺の部屋に来た。
「清人にこれあげるこれもそれも」
「これもそれもって全部八つ橋ばっかじゃねぇか」
「色が違う」
「それはそうだけど」
俺も昔買ったなぁ。 日向はドヤッた顔をして俺を見ているし俺のために買ってきたのでお礼を言う。
「えへへ」
「柳瀬さんに喜んでもらって良かったですね麻里」
「麻里ったらセンスないのよねぇ、もうちょっとオシャレなの買えばいいのに。 じゃあ私はこれあげる、宇治抹茶のフォンダンショコラ! でも美味しそうだから私も食べてみよ」
「彩は自分が食べたいの買ってきただけでしょ?」
「私が食べたいものは清っちも食べたいに決まってるでしょ? ねぇ清っち」
「ま、まぁありがとな篠原」
「私も柳瀬さんにこれを」
「せんべいって…… ジジイのセンスじゃないんだから」
「し、失礼な! みなさん甘い物ばかり買っているのでこれにしたんです!」
「はは…… 神崎らしいな。 でもサンキュー」
「まぁまだいろいろあるんだけどね! 清っちの部屋だと狭いから麻里の部屋で食べよ! あそこなら散らかっても構わないでしょ」
「彩…… 喧嘩売ってる?」
「ほ、ほらほら! だったらジュース持ってきましょう? ね? 麻里」
「あ、うん」
その後日向の部屋で神崎達は修学旅行での事をあれこれ話してくれた。 俺も少し学生時代の事を思い出して懐かしい気分になった。




