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「柳瀬君お待たせ!」

「う…… ん…… ?」

「また寝ちゃってるの? ほらご飯だよ」

「あれ? 先輩?」

「そう、君の先輩だよ。 寝呆けてる? んしょッ」



先輩が俺を起こそうとしていた。 あ、神崎達にLINEを返してたら寝ちま…… ってヤベェ!! 先輩に寝ている時のアホ面であろう俺の顔を見られた! という事に気付きガバッと起きると俺の肩を掴んで起こそうとしていた先輩がビックリして手を離した。



「へ?」

「あ! 危ない!」



ひっくり返りそうになる先輩の後ろにはテーブルが…… 頭打ちつけたら下手したらヤバいと思い咄嗟に先輩の後頭部を手で守りそのまま俺がテーブル側に来るようにクルッと身体を回した。



バキッと音を立てた倒れた。 



先輩は…… 無事だ。 と思ったのも束の間、な、なんて抱きしめ方をしているんだ俺は!? 



先輩の頭を胸に押し付けるだけではなく腰まで手を回してきつく抱きしめていた。 柔らかいしなんていい匂いとかって場合じゃない。



「先輩! 大丈夫ですか?」

「………… うん」



先輩の声がとても小さい、どっかぶつけたか? 先輩の肩を上げて確認する。 



「本当に大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫じゃないかも……」

「すみません! 俺の不注意で! どこぶつけました?」

「ううん、柳瀬君のお陰で全然平気。 ごめん…… 大丈夫じゃないのは凄く恥ずかしくて」

「え? あ!! す、すいません!!」



よく見たら先輩真っ赤になってる。 そしていろいろヤベェ…… 密着状態で先輩ずっと俺見てるし俺も恥ずかしくなってきたと思ったところに先輩はまた俺の胸に頭を下ろしたのでドキンとした。



「はー…… それにしてもびっくりしたしドキドキした。 柳瀬君…… 」



だが先輩の顔が途端に青ざめる。



「これ…… どうしよう?」

「え?」



先輩との密着状態で全てが吹っ飛んでたとはいえ背中の違和感に気付いた。 なんとテーブルが真っ二つ。



「道理で凄い音したと思った…… 大丈夫です、先輩が無事ならこんなのなんともないです」

「わ、私そんなに重かったかな?」

「先輩のせいじゃありませんよ。 そ、その…… 凄く細かったですし」



そう言うと先輩の顔がボッと赤くなった。



「そ、そうかな!? あはは…… と、とりあえずテーブル弁償するね」

「俺のせいみたいなもんですしいいですよ、それに先輩にはお世話になってるし」



そしてなぜか沈黙…… 気不味い。 ていうより何しようとしてたんだっけと考えると夕飯だった。



「先輩ご飯出来たんですよね?」

「え!? あ、そうだった。 うん! とりあえず食べようか」



キッチンへ行くとパンにサラダ、ビーフシチューが置かれていた。 



「ちょっとカフェっぽくしてみたけどどうかな? あの子達も料理出来そうだし自信はないけど」

「先輩に作って貰えるだけでありがたいですし。 いただきます」



うん、やっぱめちゃくちゃ美味い。 お金取れるレベルだ。



「美味しいです、野菜も大きくて食べ応えあります」

「ああそれね、前にレストランで食べた時そんな風にカットしてたからやってみたの。 お口に合って良かったよ」



もうこれ完全に家デートだよな? 俺って先輩と家デートしてるぞ!!



「おかわりもあるし残ったら明日の朝でも食べてね?」

「ありがたくいただきます」

「そういえばみんないつ戻ってくるの? 修学旅行だから3泊4日くらい? 私の時はそうだったけど」

「そうですね、だから明日も居ませんね」

「寂しい?」

「え? …… まぁ賑やかだった分そう感じちゃうとこもありますね。 1人ってこんな感じかなと。 でも先輩が来てくれました」

「そっか、柳瀬君あの子達の事好きなんだね」

「好き…… ですか。 なんていうかもう赤の他人とか自分には関係ないとかそういうのじゃありませんね」

「それって私には遠回しに好きって聞こえるんだけど?」

「ええと、それは……」

「うん、まぁそりゃあそうだよね。 あの子達柳瀬君に一生懸命でそんなの見続けてきたらなんとも思わないってないと思うし」



あ、あれ!? なんか変な方向に行ってないか? 流れを、流れを変えないと。



「俺だってずっと先輩を見てきました、入社当初から。 なんて綺麗な人なんだろうって」

「あはは、柳瀬君最初ガチガチに緊張してたもんね、あれはあれで可愛かったけど」



そんな話をしていて夕飯を食べ終わり片付けを済ませた。



「さてと…… これからどうしよっか?」

「大したものないですけど俺の部屋に行きませんか?」

「あ! そうだ、柳瀬君のテーブル壊しちゃったんだ」



先輩は俺の部屋に行くと携帯を弄り出し「うーん」と唸っていた。 ベッドに先輩と腰掛けていて先輩が肩をくっ付けて俺に画面を見せてきた。



「柳瀬君こんなのはどう?」

「へ?」



ああ、通販か。 先輩の顔が近いので緊張する。



「いいんじゃないですかね? てか買うつもりなんですか?」

「もしかしてこのテーブルこれより高かった?」

「いえ、これは安物なんで。 本当にいいですよ?」

「と言ってもねぇ、大丈夫! 私に任せなさい! …… なんて言ってもさ、なんとなく私が買った物もここにあればいいなって思ったんだよね。 あつかましかったらごめん」

「あつかましいだなんてとんでもないです。 えーとそれなら…… 先輩にお願いします!」

「やった! じゃあこれでいい?」

「はい、先輩がいいって思ったのがいいです」

「早速購入! んー、でも届くのが明後日だからみんな帰ってくる頃だよね?」

「大丈夫です、俺が壊したから新しいの買ったって事で」



先輩は笑って「そっか」と言って立ち上がった。 



「柳瀬君好きだよ」

「え?」

「私ね、柳瀬君に先輩らしく振る舞ってるけどやっぱりあの子達にも負けたくないなって思うんだ。 だからね……」



そう言って先輩は俺に抱きつき俺も先輩の背中に手を回した。



「ちょっとズルいかな? みんなが居ない時になんて」



先輩はそっと離れる。 



「今日は帰るね、また明日」

「は、はい! また明日」





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