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15話 現れたお嬢様


 私は美奈に支えられながらも保健室に到着した。

心の中でいろいろな気持ちが渦巻いて、私の眼もとは赤くなり涙がたまっていた。

「やっちゃったかぁ。大丈夫だよ……」

そんな私を見て里奈先生がやさしい声で言葉をかけてくれる。

「里奈先生、どうしよ…… 一時間の授業も我慢できなく名ちゃった……」

「おもらし遊びのせいで、少し体が変になってるのかな」

先生は腕を組みながらそう言った。


 今の私には後悔と恐怖の気持ちがある。

もし、私がおもらし遊びみたいな変態なことをしなければ、こんなことにはならなかっただろう。それにこれからの私の生活はこのおもらしによって左右されてしまうかもしれないんだ。

なんで…… なんで私はこんな変な遊びにはまってしまっているの?

私っておかしいよね。普通じゃないよね。変態さんだよね。

嫌だ、一生おむつが必要な暮らしをするだなんて……

あぁ、これは罰なのかもしれない。普通におもらしもおねしょもしない恵まれた体だったのに、おもらしなどで苦しむ人もいるのに、私はわざとそんなことをしようとした。


 私の心の中がどんどんと闇で覆われていく。以前は白く、明るく、光が絶え間なく差し込んでいたはずの心が今はもう闇で満たされていてどうしようもない。

そうだよね。美奈もおねしょしちゃうのがつらいはずなのに、私ったらわざとおねしょを使用したりして失礼だったよね。

私はただ過去の自分を責めることしかできなかった。


 「風香ちゃん。大丈夫だから、まずはおむつ替えよっか」

里奈先生が私の背中をさすって励ましながらそう言ってくれた。未だに心は暗いままだったが少しは楽になれた気がする。

私は美奈にも見られながら、ついさっき濡らしてしまったおむつを脱ぎ、先生から手渡されたおむつを履いて、教室に戻った。


 「風香ちゃん! もう大丈夫なの!?」

さっき私が泣いているといち早く気が付いた瑠々ちゃんが私に声をかけてきた。

「う、うん! お薬飲んだから」

頭痛薬なんてそんなすぐに効くはずもないが、瑠々ちゃんを心配させないように、そしておむつがばれないためにもそう言った。

そのとき、私は一人の女子と目が合った。しかしその子はつい最近やってきた転校生で、あまり話したこともなかったので、私は気づかなかったふりをして、次の授業の準備をする。


 それからというものの私は毎回の授業中におもらしをした。

おむつが膨れて温かいだとか、そんな感覚を楽しむ余裕もなく、ただただ悲しい。

すべての授業で尿意に敗北した私は放課後に保健室へ向かった。

保健室に入るとすぐに私は里奈先生におむつ替えを頼んだ。

先生に股をきれいにしてもらっている間に私は質問をする。


 「どうしたら、治るのかな……」

「多分、風香ちゃんは赤ちゃん返りしているような状態なのかも。だから、こういう時は思いっきりお母さんに甘えたらいいとおもうよ」

ママに思いっきり甘えるということは私がとてもしたかったこと。

それでも、私は踏み切れずにいて、甘えれたのはただあの時のおもらしだけだろう。

「じゃあ私から電話で伝えてあげよっか??」

私は思わず頭を縦に振った。


 おむつを付け終わった私は、本当に何度もおもらしをして、おねしょをしてしまう可能性があったため、昨日よりも3枚多くおむつをもらって帰ることにした。

私は先生に手を振り、保健室を出る。

美奈はピアノのおけいこがあるから先に帰ったのかぁ……

一人で帰るのは久しぶりで、少し寂しい気持ちがある。


 「わっ! ふうちゃん!」

保健室を出てすぐの曲がり角を曲がろうとした時だった。

角から女の子が現れて私の名前をよんだ。私は驚いて思わず2,3歩後ずさりをする。

かなり茶色がかった地毛のさらさらなセミロングの女の子。

フリルのついたような服で、透き通った瞳でお嬢様を連想させるような女の子。

そしてこの子は私が二時間目の前に目が合った転校生の女の子。

「み、三笠原さん!」


 すると、とつぜん三笠原さんはほおをぷくりと膨らませて怒りを表した。

怒りといっても憎しみのように重いものではなく、もっと軽いものだ。

「せめて莉々ちゃんってよんでよ。でも、ふうちゃんってあだ名でよんであげてるんだから、私もあだ名で呼んでほしいなぁ……」

あだ名で呼んでほしいだなんて頼んだ覚えはない!って返そうとも思ったが、さすがにそんなことは言えない。

「ご、ごめんね。私、三笠原さんのあだ名知らないの……」

私は正直に言った。すると、三笠原さんは突然口角を上げてにっこりと微笑む。


 「そりゃそうだよね。私、あだ名ないもん。 だから、ふうちゃんにあだ名をつけてもらいたい!」

勢いがすこし強くて、お嬢様で私の苦手なタイプかと思っていたが、そんなことはなく離しやすくて、かわいい子だった。私はなんだか不安な気持ちはなくなり、むしろ仲良くなりたいと思える。髪がサラサラで、すっごく茶色で、お嬢様で、目が透き通ってて、下の名前は莉々ちゃん。

ピンときた!

「リリーってどうかなぁ?」


 三笠原莉々こと、リリーが私の目をじっと見る。

何かまずいことを言ってしまったのかとドキドキしてしまい、ごくりと唾を飲み込んだ。

「すっごくいいじゃん! ふうちゃん大好き! これからよろしくね!」

リリーはすごく喜んでいるようだった。そんなに喜ばれるとあだ名を付けた私もどこかうれしくなってくる。

でも、私には何個か疑問があった。聞いていいものかと迷う。だが、ここで聞かなければずっと不安を持ったままリリーと友達でいることになる。


 「リリー…… どうして、今日私のことを見てたの? それとどうして、今こうして私に話しかけようとしてきたの?」

私がそれを聞くと、リリーは一度深く呼吸をして、表情をまじめな風に変えた。

「それは、私がふうちゃんにどうしても聞きたいことがあったからなの」

「リリー、聞きたいことって??」

あたりにはしーんと静まった空気が流れている。

私はあまりの空気感にドキドキしながらリリーの口が再び開かれる時を待つ。

「ふうちゃん…… ふうちゃんっておもらし遊びが趣味なんでしょ?」

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