表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/21

13話 美奈が感じているつらさ。


 アラームがけたたましくなり、私の目を覚まさせていく。

(そうだ…… ママに呼ばれる前におもらし遊びするんだった)

未だに重い瞼をこすりながら、私は昨晩に考えていたことを思い出す。

まだサラサラのおむつに、寝たままの状態でおしっこをするんだ……


 「ん? まだサラサラ……?」

私は、おしりに伝わるいつもとは違う感覚に驚き、すぐさま右手を股間に当てた。

すると、パジャマの向こう側にあるおむつが、すでにおしっこを吸ったおむつのように膨れていた。

「う、うそだ…… 本当におねしょしちゃうだなんて……」

私は額に汗をかきながらも、おむつを触った右手をそのままおむつの中に入れた。

手に伝わるのはじとっとした感触。そして、微かに私の鼻孔をくすぐるアンモニア臭。

未だに、状況を信じがたかった私はおむつの中にいれた右手を鼻のもとへ持ってくる。

ツーンとしたより強いアンモニア臭が私の鼻を刺激する。


 「本当におねしょしちゃうだなんて……」

実際あれだけおねしょをしようとはしていたがこうしておねしょをしてしまったのはとてもショックだ。なぜなら、私は昨晩大量に水を飲んだわけでもない。むしろ、いつもならめんどくさくていかないはずの寝る前のトイレにも行ったのだから。

あれだけおねしょ対策をして、おねしょをしてしまうだなんて本当のおねしょっ子みたいだったが、今はそれを楽しむ気にもなれなかった。

ただ、おむつをしていたのが不幸中の幸いだった気もする。


 私が布団の上でぼーっとしていると、部屋のドアが開き、ママが入ってきた。

「おはよう風香…… ってぼーっとしちゃってどうしたの? 熱でもあるの?

もしかして、おねしょでもしちゃった?」

ドキッとした。私は心の中で一度深呼吸して落ち着かせる。

「う、ううん! 何にもないよ! おはよ!」

私はできる限り元気に見えるような愛想笑いでママに挨拶をした。


 ママとリビングに戻り、いつも通り朝食をとる。

「みなさんはおねしょ、何歳までしていましたか?」

突如、テレビからそんなアナウンサーの声が聞こえてくる。

おねしょという言葉にドキッとした私は、ピクっと驚き、テレビを急いでみた。

すると、テレビのアナウンサーが言葉をつづけた。


 「実は、近頃は小学6年生でも7%、中学生でも5%は夜尿症の患者がいるんです。7%ということはつまり、40人のクラスであれば、やく3人がおねしょをしてしまうということなんです。しかし小学6年生といえば修学旅行がありますよね。そこで増えてきているのが、大きめのサイズの子供用おむつなんです……」

アナウンサーがそのまま言葉を並べていく中、テレビに表示されていたのは、こないだ美奈が私に見せてくれたおむつのパッケージと一緒だった。

そして、ちょうどいまこのおむつが私の下腹部を包んでいる。


 「風香はおねしょとかしないけど、クラスにおねしょしちゃう人っているの?」

「うーん。あんまりわからないかも」

私は少し迷ってからそんなことを言った。

「そうよね。おむつを履いた風香、可愛かったなぁ」

ママが窓の外を見ながらそんなことを言った。

”私、今おむつ履いてるよ。可愛い?”とか言おうと思ったが、やっぱり言えない。

そんなこんなで報道番組のおねしょ特集が終わると同時に、朝ご飯を食べ終えた。


 パンツを履いていこうか、おむつを履いていこうか、私は少し迷ったが、私はすでに膨らんだおむつで下半身を包み学校に向かうことにした。

いつもの公園で、美奈を見かけて、私は名前を呼びながら手を振る。

美奈も手を振り返してくれたが、すぐに私のところに駆け足でやってきた。

「風香、おはよ! もしかして、今おむつ履いてるの??」

「な、な、なんでそれを!?」

私は驚きのあまり、言葉を詰まらせた。


 「ちょっとお尻が不自然に膨らんで見えたから…… っていうのは嘘で、風香のことだから朝起きて、寝たままの状態でおねしょみたいにおもらししたんでしょ?」

あまりにも、昨日の夜考えていたことと一致しすぎていて、美奈はエスパーなのかと疑いながらも、私は首を横に振る。

「実は、そのつもりだった。けど……」

次の言葉を発するにはおもらし遊びを告白するのとは別の勇気が必要だった。

「けど……?」

私は息を深く吸い込み、ゆっくりと息を吐く。

「実は、本当におねしょをしちゃったの」

私は続けて、水も飲んでないし、寝る前にトイレに行ったことも伝えた。


 「そっか。私もこんなだから、おねしょをしちゃったときの辛さはよくわかるよ。よしよし」

美奈が私を励ましてくれながら、私の頭をなでる。

それだけで、朝起きてからずっと心につっかえていた何かが取れたようだった。

「これからどうしたらいいのかな…… ママには言えないし……」

「ん~、まずは里奈先生に聞くのがいいかもね。それに風香もおむつ替えなきゃいけないし」

美奈はそう言いながら私を励ますようにクスッと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ