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1-1

「オフィーリア・ノーリッシュ公爵令嬢!

私、ライオネル・デルヴィーニュは、貴女との婚約を破棄することを宣言する! 

そして、新たにリリア・バインズ男爵令嬢を婚約者にする!!」


 フロナディア王国の王立学園の卒業パーティーの始まる直前、五大公爵家の一つ、デルヴィーニュ家嫡男ライオネル・デルヴィーニュが声高らかに宣言する。寄り添うのは、ピンクの髪とくりくりの青い瞳と庇護欲をそそる可愛らしい顔を持ち、一年前男爵家へ養子に入ったと言うリリア・バインズ。


 静まり返った会場に「嘘だろ?」「陛下は許可されたのか?」とのざわめきが聞こえる。


 視線の集中する先には、艶やかな金色の髪とアメジストの様な紫の瞳を持ち、一目見たならば、目をそらすことができない美しさを持つ公爵令嬢、オフィーリア・ノーリッシュが佇んでいる。


「ライオネル様、私達の婚約は陛下により許可されたもの。勝手に破棄出来るものではありません」


 騎士としての体を持ちつつも、容姿端麗のライオネルはその顔を歪ませ言い放つ。


「陛下には、お前が可愛いリリアにした数々の卑劣な行いを伝え、公爵家の婚約者に相応しくないことを認めていただく」


 オフィーリアは顔色を変えず、淡々と答える。


「卑劣な行い……と言うことですが、私、リリア様にお会いするのは、今日が初めてですわ」


 ライオネルにしがみついたピンクの髪の青い瞳の可愛らしい少女は訴えた。


「ライオネル様、私、階段から突き落とされたり、物を隠されたり、いろいろとされましたわ。恐らく美男美女の私たちが仲良くするのを、オフィーリア様が嫉妬なさってされたに違いないわ‼」


 冷めた表情のオフィーリア、周りも呆然としている。呆れたように、オフィーリアが口を開く。


(わたくし)、スペアとしての義務を果たし、王宮での教育を受けるため、飛び級で学園の課程を終了して、学園在学6年間の内3年はテストだけ受けに来ておりましたの。途中から入ってこられたリリア様とは、今日、初めてお会いいたしました。そのような状態で、意地悪をしたり、怪我をさせたりするのは、難しいかと思いますわ」


 オフィーリアを睨み付けながら、リリアを庇うように、ライオネルはオフィーリアに向かい合って言う。


「オフィーリアなら、自分の手の者にさせることもできるだろう」


 オフィーリアは、ライオネルの目を見るのも嫌だとばかりに、首を振りながら答える。


「その様な下らないことに人を使うのなら、有益なことに人手をまわしますわ」


 リリアは頬を膨らまし、ライオネルの後ろから、身を乗り出して、オフィーリアを見る。


「オフィーリア様がさせたに決まってますわ」


 オフィーリアがリリアを睨み付ける。


「先程から発言を許可されていないのに下の身分の者から上の者へ話しかけるとは、どのような了見で?」


 リリアはニヤリとして、


「ほら、オフィーリア様は意地悪なこと、リリアに言う」


 ライオネルもニヤリとして、オフィーリアに言う。


「次期王の俺様に捨てられるのが悔しいのか?」


「私が次期王妃ね」


 リリアはライオネルを見つめて、嬉しそうに微笑む。ライオネルもリリアを見つめ返す。


 オフィーリアはあまりにも不敬でアホな発言にあきれ返る。


「メルヴィン王が独身で、まだ結婚されていない身の上とは言え、今後ご結婚され、後継ぎに恵まれるかと思いますが……」


 ライオネルは、鼻息が荒い。


「王は、もう30歳。婚約もされていらっしゃらないから、後継ぎは難しいだろう。そうなれば、スペアたる公爵家の俺の出番だ」


 バカな子を見る目でオフィーリアは答える。


「確かに直系の後継ぎがいらっしゃらない場合、公爵家の優秀なものを次期王にすえることになっておりますが、あなたではその役目は果たせないかと……」


「何を! 俺が後継ぎに一番近いから、婚約者のお前が王妃教育をしていたのだろう」


 掴みかからんとばかりに、身を乗り出すライオネルに身動きせず、オフィーリアは答えた。


「勘違いされているようですが、ライオネル様が後継ぎではなく、スペアには私が選ばれているのですのよ。王宮では王妃教育ではなく、帝王学を学んでいますわ」


 周りのアホの子を見る目にライオネルは気付かない。


「俺を差し置いて、お前程度のものが選ばれるなんてことがあるものか‼」


 話すのも嫌になったオフィーリア。早く話を終わらせようと止めを刺す。


「五大公爵家の中の当主達によってスペアは決められたもの、それを否定なさるのですか? 私が選ばれなくとも、ライオネル様が選ばれることはありませんわ」


 ライオネルは唖然とした。


「俺が選ばれないとは、どう言うことだ。」


「簡単ですわ。他の公爵家の令息令嬢の方が優秀と言うことですわ。ライオネル様は、いわゆる脳筋ってやつですわね。その様な方に国を任せるなんてできませんわ。他の公爵家の方々も公爵家の者として、国のために何をすべきか日々考えてらっしゃいます。ライオネル様は、体を鍛えていれば良いとばかりに剣術にしか力を入れていらっしゃいません。それでは国を守れても国を発展させることはできませんわ」


 図星なのか、みるみる内に顔が真っ赤になり、眉をひそめるライオネル。ライオネルがオフィーリアへ歩み寄り、手をあげようと腕を振り上げた時、その腕をつかむ者が現れた。


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