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光を探す者たち  作者: 砂糖醤油やきもち
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プロローグ

まったく、記憶というのは厄介なものだ。


自分たちの身の周りにある物にとりついてしまう。


場所にとりついたり、プレゼントでもらった物にとりついたりと様々である。


だから今日、公園の前を通ってあいつを思い出してしまったのは防ぎようのないことだった。




あいつと一緒にいると楽しかった。


楽しかったはずなのに、詳しいことは覚えていない。


どこへ遊びに行ったか とかは覚えているが、そこで何をした などは不思議と忘れてしまった。



しかし、ある5日間に起こった出来事の記憶は鮮明に残っている。


その5日間の最終日、あいつはこの世界から姿を消した。


突然のことだった。あいつが消える必要はなかったのに。





胸の奥に閉じこめておいた、消してしまいたい記憶。


あの事件から時間が経った今でも、後悔は消えていない。


事実を掘り起こした公園につい、苛立ちを覚えてしまう。


物に罪はないのと同じく、場所にも罪はないというのに。



とにかく、この記憶を頭の中から無くしたかった。早く忘れたかった。


忘れよう。忘れよう。なかったことにしよう。


様々な術を考えて、そのことを記憶から消し去ろうとしていた。


そんなことをしている最中に、また当時のことがフラッシュバックされる。



あいつの優しい笑顔。


静かに泣く姿。


文字通り、血の気がなくなってしまった顔。



(まぶた)の裏にあいつが次々と蘇ってしまい、忘れたくても残像が残り続けてしまう。



人間という生き物は、留めておきたい記憶は忘れてしまい、消し去ってしまいたい記憶は残り続けるのかもしれない。



そう思うと、あることに気づかされる。



今まで自分は、あの事件以来、ちゃんと向き合おうとしていなかった。



怖かった。


傷つきたくなかった。


そして、甘えていた。



あいつとの日常がもう二度と帰ってこないことを認めるのが。


その事実を認める、受け入れる勇気がなかった。


あいつの存在を忘れようとしてまで、自分を守ろうとしていたんだ。



このままでは、あいつがいなくなった意味がない。


あいつのおかげで、自分の存在意義を知ることができた。


そのことに感謝し、自信を持って今を生きること。それがあいつへの恩返しになるはずだ。


あの5日間を忘れるなんてことをしてはいけない。


あいつの記憶と共に生きなければいけないんだ。

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