005
「よーし、使ってみるぞー!」
と、意気込んで見たものの使い方が全く分からない。
「…って、鑑定ってどうやって使うんだろ。ゲームじゃあるまいしカーソルを合わせて鑑定とかないだろうし…。」
その後も部屋にある物を眺めたり、備え付けのベッドをじーっと睨んだりしてみたが鑑定ができた感じはしなかった。
1時間ほど試行錯誤してみたが結局使えずじまいで一つため息をついてベッドに寝転がる。
結局色々試してみたものの徒労に終わってしまった。
そもそも鑑定をやってみるっていうのも結構漠然的だよな、と。大体は相手をみたり道具や武具などを見るだけで分かってしまうイメージだ。
だから使い方と言われても、ものをみたりするだけで使えるものだと思っていた。
「あーあ。せっかく鑑定なんて便利な能力手に入れたのになー。」
天井を見ながらぼーっとしてため息をつく。そして何気なしに「鑑定」って呟いてみた。すると頭の中に一つの情報が入ってきた。
【雨宿りの木の2階8の部屋の2階天井 材質:木 耐久値:普通 どこにでもある部屋の天井】
「は?え、今のは…?」
俺は起き上がって天井を見る。だけど何もおこらない。」
「あれ?さっきは頭の中に情報が流れたんだけどな。あれか、寝転がらないと駄目なのか!」
と、もう一度ベッドに寝転がって天井を見る。何も起らない。
「あれ…?さっき寝転がって天井をみて…何したっけ…?」
うーん、と思い出してみる。そういえば何か呟いたっけ。
「鑑定…だっけ。」
と口に出してみる。すると先ほどと同じ内容の情報が頭の中に流れてきた。そこでようやく鑑定の使い方が分かった木がした。
「ああ、そっか。鑑定したいものを『見る』だけじゃなくて『鑑定したい』という風に考えないといけないのか。」
理由が分かれば簡単。部屋にある様々なものに『鑑定』を使ってみる。
【雨宿りの木の2階8の部屋のベッド 木で作られており布団は綿が使われている。寝心地は普通】
【雨宿りの木の2階8の部屋のテーブル 木で作られている 頑丈にできており耐荷重170kg】
もう一つ分かったことは、最初口に出して「鑑定」と言っていたが鑑定したい対象を見て「鑑定」と思うだけでも使えることが分かった。
「使い方が分かったらこれは結構便利だなー。」
鑑定するため周りを見るため部屋の中央に立っていたが、少し疲れたためベッドに寝転がりそのまま目を閉じるとそのまま眠ってしまった。
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目が覚めると外は暗くなっていた。宿を取ったのが夕方くらいだったと思うので、すでに夜になっていることは分かった。
部屋から出て鍵を掛けて1階に降りる。夜は酒場として賑わっているため人が大勢いた。カウンターに向かい夜ご飯をもらいに行く。
朝は1階で食事ができるが夜は酒場として機能しているため、夜飯をもらった後は自室で取らなければならない。
夜飯を受け取り部屋に戻って食事を取る。食器の返却は部屋の外に出していれば取りに来てもらえるので楽だ。
ご飯を食べた後はやることもなくなったため今後について考えるとする。
そもそもこの世界にきた理由がわからない。
こう、魔王を倒すとか、死んで異世界にやってきたとか、神に言われてきたとか、そんな明確な理由がない。というか知らない。
最後に記憶があるのは学校を出たところまでだ。事故に遭ったとかそんな記憶は一切無い…はずだ。
気づいたら王都に入るための列に並んでたみたいだし、いきなり並んでたという事もない…はずだ。
服装や持ち物についても、学校の制服に学校用でつかっていたリュック。中には筆記用具と財布、スマホと充電器が入っている。スマホはこちらで気づいてからは電源を切っている。使えもしないのに電源をいれているのももったいないし、いざというときのために取っておきたい。
とにかく今後についてどうするか。できれば元の世界に戻りたい。現実的に考えてここより日本の方がわかるし安全だ。好き好んで危険な所にいたくはない。
喧嘩が強いとか武術の心得があるとかでもないし。確かに物語の主人公のようなものには憧れているし自分がもしそうなったらなんとかできるんじゃないか?とも思う。
今そんな状況に置かれて思うことは、「早く家に帰りたい」。
そりゃそうでしょ。パソコンもテレビも本もない。日本じゃ寝る前にスマホをいじってたりもしてたけど、ここでスマホをいじっても充電できないしコミュニティツールでやりとりもできないし。
風呂もないからさっぱりもできないし、トイレは汚いのでゆっくりもできない。
力やお金、権力があるわけでもないので物語のように自分の好き勝手改革とかもできないし。
なので結論。目標は「日本に帰る」でも当面は「なんとかこの世界で生き抜くこと。あとお金を稼ぐこと。」
色々と考えていたら眠くなってきたのでベッドに横たわる。
明日は冒険者組合に行って手頃な依頼を受けるとしよう。お金も返さないと行けないので色々と情報も集めないと。
一応鑑定を使えるようになりました。
自分自身の鑑定については思い至ってないようです。
目的は「家に帰る!」です。
今後は情報収集しながら、日本に帰るために動いていきます。