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小説の湧き出る小川2

ラブコール

作者: レモン

第一章

 恋に季節性はあるのだろうか?

 私は恋っていつでも素敵だなと思う。冬なら寄り添い合って過ごせる。春なら公園で花見をしたり、散歩したりできる。夏なら二人の愛の力でより暑い夏を一緒に過ごせる。秋は紅葉を見たり、忙しい中時間を作って映画を見に行ったりできる。二人でいればいつでもいい。二人でいればどこでもいい。

 私は今年の1月から新しい人と付き合うようになった。

 彼は素敵な人だ。頭良くて、優しくて、私には完璧すぎるぐらい…

 私は彼のことを本当に愛おしく思っている。でも、私にとって、彼は初めての彼氏ではない。彼にとって、私は初めての彼女である。すなわち、私は彼と全く同じ新鮮な幸せ感を感じることはできないし、彼が感じていない不安を感じてしまっているような気がする。

 今、二人は物理的に離れている。太平洋を越えて離れているが、心はいつも一緒…と、言い切りたいところだが、やはり不安になることはよくある。

 なぜ太平洋を越えて離れているかというと、昨年から父がアメリカで単身赴任になり、今、私は母と弟と家族旅行で父のところに遊びに来ているからだ。家族と楽しい毎日を過ごしているが、彼に会えない寂しさは当然あるわけです。せっかく彼と初めて一緒に過ごせるはずの休みなのに、海を挟んで離れ離れなんて…

 メールは1回して返事は来たんだけど、声が聞きたい。でも電話する勇気がない私。どうしてこんなに好きになったんだろう。まだ付き合って2カ月しか経っていない上、恋愛で色々と痛い目にあってきた私なのに…どうして今、こんなに電話をかけて、「愛してる」と言ってもらいたい気持ちになっているんだろう。迷惑に決まっている。かえって嫌われる。やめておこう。


第二章

 ところで、さっき初めての彼氏じゃないと言ったけれど、他にどういう彼氏がいたか気になりませんか?

 和也は今の私の彼氏であり、8人目の彼氏である。

 まだ25歳だけど、私、香坂里奈は山本和也に出会う前に7人と付き合ったことがある。

 家族や友達に嘘をついてまで、色んな人と付き合ってきたものだ。人に言えない秘密もたくさん持っている。まぁ、和也と付き合っていることはもうみんな知っているけど。

 まず一人目の彼氏は、私が中学3年生の時、初めて自分から告白した、翔君。彼との恋愛は比較的うまくいった。でも、長く付き合った分だけ、別れはつらかった。二人でディズニーシーに行ったり、クルーズに行ったり…ディズニーシーでは並んで待っている間にくだらないゲームをたくさんしたのを覚えている。また、私は空手をやっているんだけど、彼が「俺を本気で殴っていいよ」って言うから、半分本気でお腹に中段突きを入れてしまい、彼が痛がっていたのを覚えている。あれは申し訳ないことをしたなと今でも反省している。クルーズでは甲板で二人だけの場所を見つけた。

 彼は学校で悩んでる私を、誰よりも励まし、守ってくれた。私たちは今でもつながっていると私は信じている。


第三章

 その初めての彼氏であった翔からある時、別れを告げられた。9月30日。彼の元彼女の誕生日の日らしい。彼はその日に私と別れようと決めていたらしい。私は彼にとって重荷過ぎたようだった。その頃はすごいショックだった。切ないラブソングもその頃いっぱい書いた。私はその頃に恋の甘さと切なさを初めて知った。

 二人目の彼氏は高1の時に付き合った達也君。彼とは夜ごはんを一緒に食べたり、映画を見たりした程度で、それほど深い付き合いではなかった。でも、彼は私が小説家になりたかったことを理解してくれた。「すごいね」と言ってくれた。

 三人目はソーシャルネットワークサービスで出会った光平君。社会人の彼は私よりかなり年上だったが、とても優しいお兄さんキャラな人だった。彼に「どうやって私を見つけたの?」と聞いたら、検索して出てきたと言っていた。イケ面な彼のことをすぐに好きになったけど、やはりあまり長くは続かず、高1の終わりには別れていた。

 高2の春に、修学旅行でクラス全員の前で告白されて、付き合い始めた雅彦君。彼も優しい人だったけど、私に対するアドバイスの中には厳しさを少し感じるものもあった。結構長く続いた。気が合っていたのかもしれない。

 高3の秋から付き合い始めた高弘君。彼は私に一目ぼれしたらしくて、私も彼をカッコいいな、と思っていた。お互いに惹かれる部分はあったが、学校が違ったからあまり長続きしなかった。


第四章

 最後の3人は大学から。

 まず6人目は、私の仲のいいグループの友達の一人の剛だった。私は正直、彼と付き合おうと思っていたわけではなく、友達だと思っていた。その点は、今の和也と似ている。でも、剛は「入学した時からかわいいと思っていた」と言ってくれた。その言葉が私の心に響いた。でも長続きはしない。どうしてでしょうね…。

 7人目は、音楽を趣味にする弘樹で、同じ趣味を持つ者同士仲良くなった。それでも続いたのはせいぜい半年ぐらい。

 音楽を本格的に始めたのも大学からだった。スクールに通うようになり、今はギターやキーボードを中心に練習している。

 そして私の部活は空手である。実は和也と私は同じ空手部に所属している…


 最後に、8人目の和也。彼は空手部の同窓会から私に電話で告白してくれた。嬉しくて涙が出そうになった。

 それから公園に行ったり、カラオケに行ったり、映画に行ったり…楽しいことをいっぱい一緒にしてきた。

 和也のいいところは純粋で、適切な言葉で私を励ましてくれるところだ。

 果たして、私は和也にラブコールをすることができるのだろうか…。


第五章

 震える手で和也の番号を携帯で打った。

 しばらく鳴らしても出ないので、留守かと思った。しかし、彼は「もしもし」と言って電話に出た。

 そこで私の脈拍数は100ぐらい上がった。「あ、もしもし、和也?あのね、大した用じゃないんだけど…」

 「ん?」

 「なんかいつも私と付き合ってくれてありがとう、って急に言いたくなったんだ。思えば私たちもうすぐ付き合って3カ月だよね?この3カ月は、私の人生の中で一番幸せな3カ月だったよ。和也がいてくれたから。」

 「…。」

 「それと、私には不安なことがあって、学校とか部活とか恋愛とかも含めて色々不安なの。ちょっと聞いてもらえるかな?」

 「いいよ。」

 しばらく話しているうちに不安は喜びへと変わっていった。

 「聞いてくれてありがとう。和也に話せて少し気持ちが楽になったよ。それでね…あの…和也は私のこと好き?」

 「…好きだよ。」

 「どういうところが好き?」

 「優しくて、かわいくて、なんかほっとけないところかな。」

 「そっか。私も和也の優しいとこ大好きだよ。ありがとう。」

 それが、アメリカの私から日本にいる和也へのラブコールであり、ラブメッセージであった。

 これからいくつ季節を一緒に過ごそうと、変わらず私を愛してほしいなと思った。色々迷惑をかけちゃいそうではあるけど、和也君、これからもどうぞよろしくね♪部屋から見える海の地平線を見つめながら、私は思わず微笑んだ。


第六章

 中途半端に会えないのが寂しさに変わり、別れにつながっていたのであれば、結婚しない限り誰ともうまくいかない気がする。でも、すべてを超越した愛ならば、一生続く可能性だってある。

 この海を超越した愛の伝言。ラブコール。

 きれいに光る海。温かい太陽。和也のぬくもりが地平線の向こうから伝わってきた。私は携帯を握りしめながら、ベランダへ出た。

 すると、携帯が鳴った。和也からだった。

 「もしもし。」

 「さっきは電話ありがとう。俺も、里奈には感謝してるよ。今まで、里奈の不安に気づいてあげられなくてごめんよ。」

 「いいのよ、そんなの。」

 しばらく沈黙が続いた。

 「それで、言いたかったのが、俺も里奈が大好きだってこと。今まではっきり言えたことはなかったけど。里奈からの電話で気づかされたんだ。里奈が俺にとってどれだけ大切かってことを。」

 「…そう。ありがとう。わざわざかけ直してくれて。」

 「うん…だからずっと一緒にいよう。不器用なコミュニケーションでもいいから、これからもこういう風に電話したりメールしたりしよう。」

 「賛成!まぁ電話料金が基本料を超えない程度にね。」

 私たちはくすくす笑った。太陽も優しく一緒に笑ってくれているようだった。

 次は夏か。今年の夏は水着を着て、一緒に海に行ったりプールに行ったりしたい。ずっと、いつまでも幸せな二人でいたい。

 「和也。こういう電話ってなんていうか知ってる?」

 「え、なんていうの?」

 「ラブコール。好きな人にする電話だからだよ。」

 「そっか。じゃあ好きな人にするメールはラブメール?」

 こんな感じの会話でも、なんかすごく幸せ。いい人に巡り合えてよかった。こんな風に神様に感謝しながら、一瞬一瞬にして過ぎていく時間を大切に生きたいという気持ちで、私はずっと和也と電話でお話をした。春の風が髪をなびく、ぽかぽかと優しい日だまりの中で。

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