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2-4

 上空から見る景色は、やはり綺麗だ。

 それに、何処で何が起こっているかも一目瞭然。

 道路に立っている警備隊を発見した俺は、彼らが囲む円形の中心を目指した。


 足元で、誰かが俺を指差している。

 だが残念ながら、今は体に纏う暴風の所為で、声が聞き取れなかった。

 そんな彼らの纏う服も、暴風に棚引いていた。

 こうまで広範囲の風を操るとは……。

 300年前の超兵器、フィセント・メイル……やはり恐ろしいもんだ。


 これでもまだサブコンデンサーはなくなってるし、その他諸々ガタが来てる状態らしい。

 完全体のメイルは、どれ程のパワーになるのか、俺にはとても想像がつかなかった。


 その時。


「あれは……?」


 通行規制がされ、ほぼ無人となっていた道路に、よろよろと歩く人影が一つ。

 人影へと視線をやったことを感知したメイルが、拡大映像を視界の中央に映し出してくれる。

 所々腐りかけた身体、切り落とされた左腕。

 間違いない、イブキちゃんを狙う魔人だ。


「あいつか……」


 俺は体に纏う風の流れを止め、下方を歩く人影へ急降下を始める。

 同時に、メイルドライバーが中央の分割線から上下に割れた。

 充電完了! 必殺技もいつでも撃てる! 

 今回は速攻で決めさせてもらう!!


「はああああああああああああ!!」


 左腕のウェポンラックに魔断剣を形成し、俺はそれを抜き取る。

 剣に風を纏わせ、自由落下と共に上段から振り下ろした。


「ガアアアアアアアアア!」


 ゾンビ魔人は、俺の一撃を悟って、それを寸での所で躱した。

 だが、風の刃までは躱せない!


「アア、ガアアアアアアアアアアア!」


 ゾンビ魔人の右耳が、風の刃に切り落とされる。


「警備隊が集まってくると嫌なんでな。

 悪いが、今日のヒーローごっこはおしまいだ!」


 俺は、展開したメイルドライバーの外装を、右手で元に戻す。


<Finally Drive>と、無機質な電子音声が、ゾンビ魔人への死刑宣告をした。


 同時に、魔断剣が竜巻を纏い始める。

 そして俺は、竜巻ごと、魔断剣を上段から振り下ろした。


 竜巻が剣から離れ、地面を滑って行く。ゾンビ魔人の方へ。

 魔人は咄嗟に逃げようとするが、それは叶わなかった。

 横幅人一人分、高さ20メートル程の竜巻が、ゾンビ魔人を絡め取り、上空へと持ち上げていく。


 ……あ、必殺技名考えてなかった……。

 まあいいか! 実際に見てから考えた方が良さそうだ。


 空中で竜巻に拘束され、身動きが取れないゾンビ魔人。

 俺から5メートルほど離れた位置にいる奴に対し、俺はその場から動かず、ゆっくりと剣を振り下ろした。

 

 それを合図とするように、竜巻の中から現れた無数の風刃が、ゾンビ魔人をバラバラに解体していく。


「が、ガガガガガガッガアッガガッガ!!!!!」


 竜巻が収まった時、無惨にもゾンビ魔人の身体は、辺り一面に散らばっていた。


「呪うんだな……俺に出会った運命を……!!」


 同時に、俺の身体を纏っていた鎧も、風になって消えて行った。

 その時「あそこだ!」といった声が、建物角の向こうから聞こえてくる。

 ……警備隊がきやがったか。必殺技を撃っちまった俺に、顔を隠す鎧はない。

 見つかったらやばいが、そろそろライムが来てくれる頃だろう。


「こっちよ! 掴まって!!」


 その時、俺の後方から、ライムの声が聞こえた。


 空飛ぶ車に乗ったライムが、ヘルメットで顔を隠し、俺を迎えに来たんだ。

 空飛ぶ車と行っても、この世界じゃ普通に売っているものだ。

 素性を隠すために、ナンバープレートなどに軽く細工がしてあるが、それ以外には手を加えていない。


 だが一つ厄介なのは、空を飛べると言っても、交通ルールは存在することだ。

 何処でも自由に飛んでいいわけではない。

 その所為で、毎度毎度警備隊から追われる羽目になる。

 まあ、公の繋がりがない以上は、仕方ないのだろうが。


 後部座席のドアを開き、道路を走ってくるライムの車。

 それが俺の真横を通り過ぎ技た時に、俺はそいつに乗り込んだ。


「乗ったぞ!」


「OK!」


 するとライムは、車を急上昇させた。


 しばらく、警備隊の追跡を受けることになった。

 だが、ある程度の距離を逃げていたら、彼らはパタリと追ってこなくなった。

 恐らく、俺達と繋がりのある警備隊のトップが、追跡中止を指示してくれたのだろう。

 追跡が止んだのを確認してから、俺達は遠回りに遠回りを重ねて、自宅へと帰った。


 俺が家に戻ると、ライムは「買い忘れたものがある」といって、そそくさと何処かへ行ってしまった。

 メモにある物はちゃんと買ってあったはずだが……。

 

 家に残されたのは、俺とイブキちゃんだけ。

 イブキちゃんも、今日であったような奴と二人きりにされた所為か、どこか落ち着かない様子だった。


「そう言えば、イブキちゃんはこれからどうするんだ? どっかに泊まるのか?」


 あまりにそわそわしているので、俺が話を切り出してみる。

 イブキちゃんはビクッと過剰に反応した。そこまで驚かなくてもいいだろ。


「えっと、ここでお世話になろうかなって……。ライムさんもいいって言ってくれました」


「へぇ~」


 ……ん? ここで? 

 ベッドだって二つしかないし、とても3人入るスペースなんてないぞ?


「3人住むには少し狭いんじゃないか?

 どっかでホテル借りるって言えば、資金位ならライムが出してくれるだろ?」


「えっと、そうじゃないんです」


 イブキちゃんはモゴモゴ何かを呟きながら、顔を真っ赤にして顔を伏せる。

 ……俺、なんか変なこと言ったか?


 なんとフォローしていいのか、考えていると、イブキちゃんが意を決したような表情で顔を上げた。


「あ、あの!!」


「な、なに?」


「私、昔から決めていたんです……!

 私の技を見切れた男性を、私の旦那様にしようって……!」


 え? なんで恋愛相談始まってんの!?

 この子の技はさっき身をもって体験したけど、あんなの見切れる奴なんているのか?

 俺だって、フィセント・メイルのサポートなかったらまったく反応できないレベルだぞ!?


「あ、ああ。それで?」


「だから……その……。わ、私と……」


 旦那様を探すのを手伝えとでも言うのか?

 まあ、この世界の知り合いなんて、ライムと他2名ほどだ。

 見分を広めるついでにはいいかもしれないが……。


 イブキちゃんは、グッと顎を引いて目を瞑る。

 そして、全てを吐き出すかのような勢いで叫んだ。


「結婚を前提に! お付き合いしてください!!」


 ……え? 誰が? 俺が……?


「は、はあああああああああああああああああ!?」


 この時、俺のヒーローごっこに、ヒロインが現れた。

 同時に、ヒーローごっこが、ごっこじゃなくなったのも、この時からだったのかもしれない。

第2話完結です。

第3話をお楽しみに!!

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