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14-1

「んで、たどり着いたのがここ……と」


 運命の逃避行の後、俺たちが到着したのは、マフルの最南端「カオシズ地区」のボロアパート。

 そう、俺たちの古巣だ。

 ガレージに黒いグーンをケツから突っ込んで、身を隠している。

 といっても、グーンの頭は丸出しなので、一般人に通報でもされたら即アウトだ。


「まあ長居するつもりはないけどね」


 グーンの車内でフロイアの肩を叩きながら、サラマディエは言う。

 長居するつもりがなくても、こんな人の多いところを選ばなくても……。


「だからってなんでここなんだよ!

 住宅街だぞ!?」


「人が多いところなら、奴らも手が出せない。

 どうせこの街にいる以上、眠れる森の監視網からは逃れられないんだから」


 そりゃそうかもしれないけど……目立つ場所にいれば見つかるのも早くなるはずだ。

 そうしたら、また戦闘になる。

 人間を相手にしなくちゃ……。


「それはそれとして、ソウタ!」


 サラマディエはフロイアの肩から手を離すと、その人差し指を俺へと向ける。

 そして、大きく開かれた、二重の可愛らしい目で俺を睨みつけた。

 ……まったく怖くない。


「……なんだよ」


「デザイア・チューナーを使っておきながら、何たった一手で伸されそうになってんの!?」


 サラマディエは、ずいずいと俺に詰め寄ると、俺の鼻の先をスイッチのようにつつき始めた。

 な……こいつ!?


「ちょっと先行き心配なんだけど!?」


「相手がノインだからだ!!

 殺すわけには――ふが!?」


 こいつ、弁解の余地も与えない気かよ!!


「いい!?

 あそこで逃げられたのはマナのおかげ!!

 そうじゃなきゃ捕まってたかもしれないんだよ!?

 危険度90%!!」


「い、いいだろ!?

 結果的に、奴らを撒くことはできたんだしさ!」


 サラマディエは、ひとしきり俺の鼻をつついてから、大きなため息を吐く。


「……いいや。

 きっともう、眠れる森は私たちを捉えてるね。

 でも、マフル警備隊はまだ」


「……どういう意味だ?」


「眠れる森はマフルの皮をかぶっている以上、戦力を好きに動かせないの。

 ライライなんかは、マフルの総戦力を知り尽くしてるからね。

 変に戦力を動かせば、ライライに怪しまれる」


 ……そうか、ライムは眠れる森がこの街に根差していることを知らない。


「ってことは、お前らが言ってることが本当か、確かめようがないってことか?」


「いいや。

 うれしいことに、マフルとしての戦力は、ライライとディア・メイルくらい。

 その二人を味方につければ、化けの皮は剥がれる……」


「なるほど。

 それが一番難しいと思うけどな」


 簡単にそれができるのなら、先ほどの戦闘の際にスカウトできているだろう。

 だって、俺だって未だにサラマディエの言うことを信じていないんだ。

 この街の育ての親と言っても過言じゃないライムなら、尚更だろう。


「大丈夫大丈夫!

 もう奴らは、私の術中に嵌ってるから!」


 ……まったく大丈夫じゃなさそうだ……。


「そこで、仮面の騎士様にお願いがあるんだけど……」


「お願い?」


「そ。

 ライライを、ここに呼び出して欲しいんだよね」


 ……は?

 わざわざ自分の隠れ場所を伝える馬鹿がいるか!?

 

 しかし俺は、彼女の声に従わざるを得なかった。

 まだ彼女を疑ってはいる。

 だが、言うとおりにしておくことが「確かめる」ための近道でもあるから。

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