13-5
いくらノインといえ、今のグレイスとディア・メイルの性能差は圧倒的。
あいつを殺してもいいなら、いくらでも勝利はもぎ取れる。
――だが、そうはいかない。
今の俺に、友人を手にかける程の覚悟はないんだ。
「キサラギ、何故だ。
なぜサラマディエに付く!?」
「ちょっと確かめたいことがあってな。
だから、ここは見逃してくれないか?」
「確かめたいこと――?」
一瞬動きの止まるノイン。
俺は、その隙を見逃さなかった。
「隙あり!!」
俺は剣を投げ捨て、赫い翼を全開に吹かす。
溢れ出た電気エネルギーの魔力が、俺の周囲の景色すらも赫く染め上げる。
背を押されるような急激な加速感が俺を襲い、ノインのすぐ目の前へと接近させた。
俺はノインの腹目掛けて、拳を突き出した。
スピードに任せた一撃!
避けれるもんなら避けてみやがれ!!
だが――!?
ノインはそいつをくるりと回転して、華麗にかわす。
時速数十キロは出ているであろうグーンの上でだ。
さらに俺の腕を掴むと、俺を受け流すように投げ捨てた。
「んな馬鹿な!?」
ダメだ。
やはり俺とノインでは、戦闘経験が頭一つ抜けている。
だけど、今回は勝つことが目的じゃない!
何とか奴を撒くことができれば……。
勢い余った俺は、何とか翼をふかして体勢を立て直す。
殺さないようにして勝てる相手じゃない……!!
あいつの実力を知った気でいたが、まさかここまでとは……!
反撃に転じようとした瞬間――。
俺の目の前で光る、巨大な銃口――!?
まさか、デストロイ・ビークか!?
この体勢では避けられない――!?
刹那、デストロイ・ビークに打ち込まれるクナイ。
同じく無数のクナイが、グーンの機銃やノインの持つ火器を次々と突き刺していく。
次の瞬間、何者かに俺の体が担ぎ上げられる。
一瞬の出来事に、俺は翼を吹かすことすらできなかった。
だが、抵抗する必要はないことは、すぐに理解できた。
俺を担いだのは、メイルを纏った魔女マナだったからだ。
「ありがとうございます。
時間稼ぎは十分です……ごめんなさい」
そして彼女は、工学ステルスを発動させると、俺の体を一瞬にして運び去った。
次回予告
マフルの街で逃避行を続けるソウタ達。
しかし、サラマディエは「現在地にライムを呼び出す」と言い出して――?
果たして、サラマディエの作戦とは一体?
強大な野望の前に散るイブキ……。
眠りにつくマフルの街……。
ソウタがこの時代で手に入れたもののすべてが、失われていきます。
そしてついに「闘争心」と「憐憫」……二つのデザイア・チューナーが巡り合うのでした。
次回「天使の憐憫と眠れる街」。
お楽しみに!!




