13-4
黒いグーンから飛び出した俺は、俺達を追跡する二台のグーンを目視した。
うち一台は、俺達の車両のすぐ後ろに引っ付いてきている。
俺は赫い翼を吹かし、すぐ後ろの車両をすれ違いざまに一閃。
車両に搭載された砲塔を、一斬の下に切り落とした。
これでこの車両の遠距離攻撃は使えない!
そして、グーンの後部に魔断剣を突き立て、そのまま翼を吹かして真下へ落下。
車体を地面へと叩き付けた。
地面と水平な姿勢を保ったまま、墜落するグーン。
こうすれば、中にいる警備隊員達へもダメージを与えることが出来る。
なるべく優しくしたつもりだが、大怪我をさせてないか不安だ。
<Roger.
Standby Armd03“Assault wing”>
……だが、そうも言ってられないか!!
俺の前方から向かってくるもう一台のグーン。
そいつから射出されたのは、アサルト・ウィング。
ってことは、ノインが乗ってるグーンはそっちってことかよ!
もう一台のグーンの機銃を切り落とそうと、翼を吹かせた瞬間、アサルト・ウィングは俺を目掛けて発砲してきやがった。
あれはただのアサルトライフルに見えるが、中身はマジカル成形炸薬弾。
当たればそれなりのダメージを受ける。
俺は身を翻し、ライフルの弾を避ける。
そんな俺の動きなど読んでいるといわんばかりに、グーンの機銃が俺の身に降り注いだ。
「っく!?」
やっぱり戦闘に関しては、ノインのほうが一枚上手か……。
だがこっちには「力」がある……!!
降り注ぐ銃弾は、メイルの装甲までは突き破れない。
衝撃にバランスを崩される事のほうがよっぽど厄介だ。
「クッソ!!」
俺は銃弾を掻い潜り、グーンへと接近を試みるが、そうは問屋が卸さない。
大量の銃弾が、俺の精神を圧迫するんだ。
無敵の鎧を着ていても「死ぬんじゃないか」という気分にさせて来やがる。
……一度は死んだこの身でも。
そうだ、俺は一度死んでいるんだ。
もう死ぬことなんざ――。
「んなもん――怖かねぇんだよ!!」
いくらグーンに搭載されている対魔人機銃とはいえ、メイルの前ではただの鉄砲。
邪魔になるなら、突っ込んで全部ぶった切ってやる!!
俺は一気に加速し、魔断剣を左側に寝かせた。
弾丸がカンカンと俺の鎧を叩く中、俺一直線にグーンへと突き進む。
このまま、全部の機銃を切り捨てる!!
だが――。
<Roger.
Standby Armd00“Dia Mail”>
その案内音声と同時に、グーンに搭載せれているウェポンコンテナから、大量の装甲が射出された。
まるで煩わしく飛び回る羽虫のように。
そして、俺の両手両足へと、何度も何度も衝突してきた。
俺がそいつらに翻弄された一瞬に、アサルト・ウィングの銃声が響く。
俺は即座に反応したが、俺の動きを完全に読んでいた偏差射撃によって、容易く射止められてしまった。
「ぐっ!!?」
着弾と同時に爆散する銃弾。
俺はそいつに吹き飛ばされ、体のバランスを完全に失う。
その視界の端で、グーンは車体を地面と垂直に立てていた。
後部ハッチを空に向けて。
展開した後部ハッチの中に、ディア・メイルの装甲が流れ込んでいく。
そして次の瞬間、一つの人影が、後部ハッチから空へと躍り出た。
間違いない……あいつは、ノインだ!!
いつの間にか姿勢を直したグーンへと降り立つノイン。
あいつを伸せば、追撃を止められる……。
なら――。
俺は空中で体制を立て直し、ノインを睨みつけた。
「悪いが、お前に付き合っている暇はない!」
ノインはそんな俺を見て、張り詰めた声をゆっくりと吐いた。
「付き合わされているのはこちらのほうだ」
俺とノインの視線が、鎧越しにぶつかり合った。




