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13-2

「それにしても、未確認飛行物体か……」


 今の今まで、そんなものが飛来するなんて事件はなかった。

 仮に飛行物体の正体が魔物なら、魔物と断定できるだろう。

 未確認と呼ばれているということは、今までの裁量では断定できない物ということだ。


 本来ならば、俺達も急行するべきなのだろうが、二人とも一応怪我人扱いだ。

 ここで待っているのが最善だろう。

 もし俺達の力が必要なら、ライムが連絡を寄越してくれるはずだ。


 しかし、俺達の腕時計から響いたのは、意外な人物の声だった。


『もしも~し、みなさん聞こえますか~?』


 ……この声……魔女サラマディエ!?

 どうしてこの腕時計から!?


『まさか……サラ!?

 あなたなの!?』


 次いで聞こえるライムの声。


 サラマディエの声が聞こえた、ということは……迎えに来たんだ。

 今が選択の時ってことかよ……!?

 正直言って、早すぎる。


『まあライライ落ち着きなって。

 ソウタ、イブキ、迎えに来たよ。

 悪いねぇ、早く来すぎちゃった。

 申し訳度70%』


『残念だけど、ソウタ達は渡せないわ!』


 完全に戦闘モードになっているライムの声色。

 彼女にから見たら、脱走した俺達をサラマディエが連れ戻しに来たってことになっているのだろう。


 どうする……?

 無駄な争いはさせたくない。

 とはいえ、サラマディエの言葉を信用できるかと言われると、少し……いや、かなり不安が残る。

 この街そのものが敵だなんて、そうそう信じられる話じゃない。


「なあイブキ……お前はどう思うんだ?」


 監視されているなんてことはわかっている。

 でも、もう選択の時は来てしまったんだ。

 だったら、そんなことを言っている場合じゃない。


「どう、ですか……?」


「サラマディエ達の話を、どう取るのかってことだ。

 監視されてるのなんてわかってる。

 でも、もうそんなことは言ってられない。

 選ばなくちゃいけないんだ、今すぐに」


 もし、サラマディエの言葉に従うなら、バーズシングのドライバーを奪わなければならない。

 恐らくは、ナルの病室に保管されている筈だ。


「私なら……信用しません」


 だがイブキの返答は、あまりにも予想外のものだった。

 てっきり信用しきっているものかと……。

 イブキはもう腹積もりは出来ているのか、強張った表情のまま続ける。


「だからこそ、確かめます。

 確かめて、何が正しいのかを導き出します……私自身の力で」


 魔女フロイア仕込みの、イブキらしい、力強い回答。

 俺は、その声に一つの答えを見出した。


「そっか……」


 そうだ、誰の言葉に従ったっていい。

 結局、真実かどうか確かめなくちゃ、本当の意味での選択は出来ないんだ。


 腕時計から流れる様々な人の声。

 十回目か二十回目かの声が流れた時、俺は一つの決心をした。


 俺自身の力で、確かめるんだ!!


<Awaking>


 その決心が、俺の闘争心を掻きたてた。

 そして、俺の闘争心に答えるようにデザイア・チューナーが姿を現す。


 メイルドライバーをも超える量の魔力が生み出されたことで、膨大な量の魔力ノイズが発生したのだろう。

 周辺の医療機器が、一斉にエラーを吐いた。

 

「おわあ!?」


「だ、旦那様!?

 お、落ち着いてください!!」


 ビービーとアラームを鳴らす医療機器の数々。

 そのあまりの煩さに、俺達はあわあわと取り乱してしまった。


「こ、これじゃあナルの病室には入れないな……。

 イブキ、頼めるか?

 バーズシングのドライバー」


「はい!!」


 合流するときは、バーズシングのドライバーを持っていくと言う約束だ。

 いくら「確かめるため」の合流とはいえ、約束の品は持っていかなければならないだろう。

 俺はデザイア・チューナーを掴み取り、勝手にメイルを始動させないように押えておく。

 その傍らで、イブキが病室の出口へと駆け出した。


「な、何事ですか!?」


 その時、超いいタイミングで出口から現れたのはプロフェッサー。

 そりゃ、これだけビービー音が鳴ってれば来るよな……。

 

「ごめんなさい!!」


 だが不幸にも、彼はイブキの進行ルート上に来てしまった。

 となると、彼の末路は一つ。


 イブキは謝りつつもプロフェッサーの懐に入り込み――。

 ――華麗な一本背負いで、彼を投げ飛ばした。


「なあああああ!?」


 一本!!

 と叫びたくなる衝動を抑え、俺はプロフェッサーへと歩み寄る。


「悪いな。

 少し大人しくしててもらえるか?」


「キサラギ殿……何を……!?」


 地面に仰向けに寝そべりながら、俺を睨み付けるプロフェッサー。

 まだ彼が敵だと決まったわけじゃないが……俺の疑心暗鬼は拭えない。


「確かめたいことがあるんだ」


 ナルの病室は、イブキの病室の向かい。

 イブキはナルの病室の入口へ向かったが、どうやら扉が開かない様子だ。


「旦那様!

 扉が開きません!!」


 やっぱり、部外者が侵入できないようになってるか……。

 ま、なら方法は一つ。


「おいプロフェッサー。

 一つ頼みたいことがある」


 俺は地面に寝そべったプロフェッサーに、一つ「お願いごと」をした。

 やることは簡単だ、バーズシングのドライバーを俺達に渡すこと。


 そして俺は、バーズシングのドライバーを手にメイルを始動。

 Bloody Driveを発動させ、イブキと共に天井をぶち破った。


 俺の病室の真上にあったのは、病院の駐車場。

 地上へと上がった俺達は、サラマディエを乗せていると思われる「未確認飛行物体」を視認した。

 

 地面に正面衝突したかのように、垂直に立つ「車体」。

 サラマディエ達はまだ出てきていないのか、武装した警備隊員達がそれを取り囲んでいる。

 その形は……。


「黒い……グーン……?」

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