12-2
「この世界にも、日本があるのか!?」
ってことは、今まで異世界だと思っていたこの世界は、一体何なんだ!?
まさか、未来!?
「ありゃ、そこから?
そう言えば、ライライ達は本気で並行世界から人を連れて来たと思ってるんだっけ?
そんなこと出来る訳ないのにね~」
「いいから答えろよ!!」
何が「ね~」だ!?
この世界が未来だとしたら、日本はどうなってるんだ!?
大破壊とやらが起こって、世界中が大惨事とは聞いてるが……。
「あるよ。
イブキの住んでたジパンの国も、元々は日本だった」
「だったって……」
過去形?
ってことは、少なくとも日本の一部はダメになったってことかよ……。
「なんだっけ……?
詳しくは知らないけど、確か大破壊の所為で、いくつかの国に別れちゃったんだよね」
「じゃあ、俺と同じ名前の奴は!?
もっと知ってることはないのかよ!!」
「キサラギ理論に関しては、私の知ることは全部話したよ。
キミ、幸運だよ。
ただでキサラギ理論の話を聞けたんだから」
「そうじゃない!!
そいつは俺と同一人物かどうかってことだよ!!」
もしそうだとしたら、日本を、世界を破壊しつくしたのは、俺の所為ってことだ。
ありえないとはわかっている、実際俺は死んだんだから。
でも、確かめずにはいられない。
「だから知らないって。
少なくとも君がここにいるのは事実だし、ソウタ・キサラギがキサラギ理論の提唱者であるのも事実」
サラマディエが嘘をついている可能性も無くはない。
でも、俺の元いた世界のことを知る手段があるってことは、こいつが俺のことを知る誰かと繋がってるか、ここが本当に未来なのか、どっちかってところか。
「……わかった。
そこまでは信じる、面白い話だったよ」
「そっか、興味を持ってくれたみたいで嬉しいよ」
すると、サラマディエは手に持っていたメイルドライバーを、俺へと放り投げた。
放物線を描き、俺へと落下するドライバー。
俺はそいつを、左手で受け止めた。
「何のつもりだ?」
俺にドライバーを返してきた?
ってことは今、俺はサラマディエに対抗する手段を取り戻したということ。
そんなことをしたら、この場からイブキを連れて逃げることも可能だ。
どうしてそんなことを……?
「キミには選ぶ権利があるからね。
この場で真実を知るか、耳を閉ざして立ち去るか」
「真実?」
「そう、この街の」
そんなもん、すでに聞いた。
この世界は結局、元いた世界の延長線上。
異世界でもなんでもない。
それ以上の真実なんてもんがあるのか?
「それを聞いて、どうしろって言うんだよ?」
サラマディエは、俺を真っ直ぐ見据えると、ゆっくりと口を開く
「戦うの――」
彼女の口が告げる、俺の本当の「敵」。
それは――。
「――この世界と」
「……『世界』?
それは、ヒーローであるこの俺に、世界を敵に回せって言うのか?」
サラマディエは、今度は俺の義手を手に取って、眺めはじめた。
俺の問いなど興味無さげに。
「一つアドバイスするなら、私が話した情報を知りながらも、キミから隠していた人物が一人いるってことかな。
最初からキミは、ヒーローごっこに興じてただけ。
私が訊きたいのは、本当にヒーローになる気があるかってこと」
そして彼女は、その義手を俺へと投げ渡してきた。
俺はそいつを、抱きかかえるようにして受け止める。
「もちろん、聞いた上でどう動くかはキミ次第。
どう、聞いてみる?」
本当のヒーローになるか……か。
そんなことを言われちゃ、聞かない訳にはいかない。
でも、問題はイブキだ。
なぜメイルドライバーを装着している?
サラマディエは、イブキに何をしているんだ?
それがわからない以上、頷くわけにはいかない。
俺がイブキに目をやった時、同じくイブキも俺に視線を寄越していた。
今にも途切れそうな、弱りきった視線を。
「……旦那様……サラマディエさんの話を……聞いてください……。
私は……旦那様に従います……」
「でも、お前が何されてるか知らない以上――!」
俺の心配を断ち切る様に、イブキは告げる。
驚くほど弱々しい声で、驚くほどに真っ直ぐな声を。
「私は……私の意思でこうしています……。
旦那様の意思を……果たすために……」
「……そうか」
イブキは俺が気を失っている間に、何か聞いていたのか?
ってことは、現状を理解できていないのは、俺だけってことか。
「わかった。
サラマディエ、お前の話を聞いてやる」
鬼が出るか蛇が出るか。
俺は、サラマディエの声に耳を傾けた。
――この世界の、真実を告げんとする声に。
現在1-3及び1-4を執筆中です!
更新しましたら、活動報告等でお知らせいたします!
是非お楽しみに!




