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10-0

今回はノイン視点となります。

突如として現れた謎の端末、圧倒的な強さを誇る黒いグレイス。

 一体街の外で何があったのか、俺・ノインにはとても想像がつかなかった。


 幸い、あの力のお陰で、ルイスは拘束。

 ナルと呼ばれた女性の身柄も、こちらで預かることが出来た。


 でも、あの力を使った後、キサラギは――。

 ――血の涙を、流していた。

 

 それだけではない、全身は痣だらけ。

 両足は酷く骨折しており、装着解除後の一瞬でも立てていたことが奇跡のような具合だ。


 あれからキサラギは、病院に運ばれた。

 もう三日も目を覚まさない。

 だが気味の悪いことに、全身の怪我は快方に向かっていた。

 この勢いなら、明日には完治しそうな程に……。


 あれはまともな力じゃない。

 あのようなものを使っていては、キサラギの身が持たない。

 だが何より気になるのは、キサラギ自身が、誰の力も借りずにメイルを始動させたことだ。


 俺達魔人対策課と魔女ライム様は、キリマ・ミル室長によって、マフル魔力研究室に集められていた。

 用件は他でもない、キサラギのこと。


「――ええ、私から見ても、あれは魔術であると考えられます。

 それも、キサラギ理論に基く、最も古典的な……」


 古典的な魔術……人の願いを媒介に、カロリーと魂をエネルギーへと変換する技術。

 三百年前の大破壊が起こる前に発見された、ということはわかっているが、それ以外のことが全て謎に包まれている。

 ただ一つ、それを「キサラギ理論」と呼ぶこと以外は。


 何の因果か、異世界から呼ばれたのもソウタ・キサラギ。

 ややこしいが、ただの偶然だろう。


「そう……。

 ということは、やっぱり――」


 魔女様は、顎て手を当てて仰る。


 魔女様方は、魔術を使うことに特化した方々。

 魂を最初から持っておらず、純度の高い魔力がその代わりを務めている。

 その魔力は、食事等によってあとから補給することが可能だ。


 同じく、我々魔力に感染した人間もそう。

 魂に感染している魔力を用いれば、魂を消耗させずに魔術を使用することが出来る。

 そして、後から補給できる点も同じ。


 しかし、魔力を持たないキサラギが魔術を使えば――。


「ええ、あの力を使い続ければ、キサラギ殿の寿命は……」


 そう、あの時キサラギは、魔女様の力を借りずにメイルを始動させた。

 ということは、彼自身の魂を消耗させたということだ。


「……まずは私から、あの力は使うなと言っておくわ。

 それ以外に、対処法もないしね」


 キサラギにあの力を授けたと思われる端末は、彼が倒れた後、忽然と姿を消していた。

 これでは、端末を取り上げて終了というわけにもいかない。


「ええ。

 しっかりとお灸を据えて頂きましょう」


 とはいえ、戦闘になれば、いつあの端末が現れるかわからない。

 あの力は、使うなと言えば抑えられるものなのか?

 あの時のキサラギは、普段とは違う様子だったが……。

 どうであれ、今後キサラギの出撃は控えさせるのが無難だ。


「ですが室長、あの力は使うなと言えば済むものなのですか?

 もしそうでないとしたら、キサラギの出撃は控えさせなくては……」


 恐らくキサラギは、出撃するなと言っても聞かないだろう。

 命の危険があるから戦うなと諭しても、その恐怖を背負いながら戦場に赴くだろう。

 彼を押えておくことが、俺達に出来るのか?


 その問いに答えてくださったのは、課長であった。


「そこが最大の懸案事項だ。

 とりあえず、魔人が出現しても、ボウズには伝えない。

 しかし、どうしても敵わない連中が現れた場合は……仕方がないよな」


 課長は口に含んだ煙草の煙を、深い溜息と共に吐き出された。

 課長にとっても、そのご決断はお辛いものであるのだろう。


「そこを含め、今後の組織活動について、練りましょうか。

 早めに得なくてはなりませんしね、マフル上層部の承認を。

 魔女様はお疲れでしょう?

 今日のところはこれで」


 そのお言葉に対し、魔女様は溜息混じりの苦笑いを浮かべられた。


「私なんてまだいい方よ」


「イブキ女史……ですか?」


「そう。

 あの子、ずっとソウタにつきっきりで……。

 でも、そうさせてあげる事しか、私にはできないから……」


「魔女様、どうか、気負うことのないように。

 我々も、街の外でキサラギ殿に何があったのか、徹底的に調べ上げますので」


「ええ。

 プレッシャーを掛けるようで悪いけど、頼んだわ」


 魔女様は、今にも押しつぶされそうな表情を浮かべ「失礼したわね」と部屋を後になさった。


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