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それから3日後、俺達はオーシャン・セントラルに向かうこととなった。
たった3日で、水着やその他諸々の準備が出来るのは、無職の特権というところか。
調べたところ、オーシャン・セントラルはただの温水プールではないらしい。
温泉や本格的なレストランなどもある、レジャー施設のようだ。
入場だけでも結構いい値段する筈だが、そんなチケットを3枚も、リユはどこから手に入れたのやら。
俺達は万端の準備をしてから、ライムの運転する車に乗って、オーシャン・セントラルへと向かった。
どうやらこの車は、チケットと共にリユから借り受けた物のようだ。
レジャー施設といっても、所詮は市民プールの親戚だと思っていた俺は、オーシャン・セントラルの姿に、度肝を抜かれた。
巨大な立方体の建築物、高さは10階建て程度か。
一辺200メートルはあろう建築物は、もはや市民プールの非ではない。
しかも、ビルを挟んで、入り口と反対側には、広大な屋外プールがあるらしい。
これじゃあ、プールと言うよりも、遊園地だ。
「おっきい……」
車の後部座席で、イブキはそう漏らしていた。
俺が見ても圧倒される建物だ。
イブキにとっては未知の光景だろう。
巨大なビルが並び立つセントラルシティの中でも、オーシャン・セントラルは一際目立っていた。
その正門には虹をかたどったアーチが設置されている。
道路を走る車が、吸い込まれるようにそこに入っていくのを見るに、そのアーチを潜れば駐車場に辿りつけるようだ。
ライムの運転する車は、流れに乗って、駐車場へと向かう。
現在時刻は10時。
比較的空いている平日を狙ったが、開園時間の時点で、駐車場はあふれかえっていた。
まあこの恵みの街が、活気付いていない時なんて、そうそうないが。
そのままライムは、地下に位置する駐車場に、車を止めた。
地下駐車場も、地上の建物に負けず劣らず広大だ。
200メートル四方の広さが、そっくりそのまま駐車場にされているのだから、そう感じるのは当たり前か。
しかも、これと同じものがもう一つ下にあると言うのだからビックリだ。
マフルの限られた土地を有効活用するために、地下というものは無視できないのだろう。
その駐車場のど真ん中にある巨大なエレベーターもまた、人であふれかえっていた。
俺達は駆け足でそれに乗り込み、1階のエントランスへと向かった。
1階のエントランス前には、発券機が数十台置かれている。
そのすべてに、大行列が出来ていた。
しかし、すでに入場券を持っている俺達には関係ない。
「す、すごい人ですね」
イブキは、ぽつりと漏らす。
「それだけ人気スポットってことだ。
リユには感謝しておかないとな」
俺達一行は、入場窓口に直行する。
そこでもらったのは、腕時計のようなバンド。
どうやら、料金が発生するときは、このバンドを用いて施設のコンピューターに記憶させておいて、退場する時に清算するというシステムらしい。
確かに、こうすれば水着で金を持ち歩く必要はない。
こっちの世界にも、こういうシステムを考える人はいるのか。
バンドを受け取ってから、イブキ達と別れた。
所々に目を引くゲーム機や売店があるが、まずはプールで彼女たちと合流しなくてはならない。
俺は、楽しそうな音楽や色とりどりのお土産の誘惑を断ち切って、イブキ達の水着姿という誘惑へと歩み出した。
この建物は外観こそ10階前後のように見えたが、天井が高いからか、実際は6階までなのか。
1階はエントランス及び屋外プール、2階は屋内プール、3階は男湯の温泉、4階には女湯、そして5階にはフードコートがあるようだ。
6階の宴会場は、今回用はない。
更衣室は1・2・3・4の各階にあった。
着替えても、無料貸し出しの館内着を着れば、水着のまま各階の移動が出来るらしい。
二人の水着美女と楽しんだ後は、男湯でのんびり過ごすのもいいかもしれないな。
今日の楽しみを胸に、俺は1階の更衣室へと向かった。




