5-epilogue
今回も新キャラ視点となります。
「やっぱり駄目だったんだ~」
白い床に白い壁が続く研究所。
しかし、例外としてここ・休憩室には、観葉植物やテレビ、ちょっとしたボードゲーム等といった彩があった。
そんな休憩室のソファーに、私は腰を掛けていた。
魔女サラマディエは、私の膝を枕にして、報告書に目を通している。
そして「ま、予想通りだけど」と付け加えた。
「にしても、もう少しいい働きをしてくれると思ったんだけどな~。
がっかり度30%」
サラマディエ……サラちゃんは、非常に頭が切れる。
でも、魔人や人間を道具としか思っていない。
その道具には、サラちゃん自身も含まれている。
今日もまた一人、魔人が命を落とした。
どうやらその魔人に、ライムちゃんを襲わせたらしい。
勝てないことなんかわかっていたのに……。
「もうこんなことはしちゃだめよ、サラちゃん。
せっかくの『10人』だったんだから」
サラちゃんは、床に報告書を投げ捨てると「は~い」と気の抜けた返事をした。
今回この子は、魔人の総合的な評価をしたかったらしい。
でも、知能テストなどで、それらのデータは十分得られるはず。
こんなところで失われるべき命じゃなかった。
なにせ、あの魔人には10人分の命が宿っていたのだから……。
「でも、あれでライライの魔力を少しでも吸ってれば、もっとすごい魔人になってたんだよ!
それこそ、私達に届くレベルの」
「急ぐべきじゃないわ。
それに、命は大切にしなくちゃいけないの」
私達には、人の命よりもよっぽど思い使命が課せられている。
だからと言って、人命を軽視していいわけじゃない。
「10人そこらの命なんて、命の内に入らないよ。
私達の使命に比べれば」
「どんな使命があったとしても、それを正義と語るのは、おこがましいことよ」
本来なら、もっとガツンと言ってあげなくちゃならないのかもしれない。
こうやって甘やかしてしまうのは、私の悪い癖だ。
サラちゃんは、私の言葉を聞いて、屈託のない笑顔を浮かべる。
やっぱり、お説教のつもりの一言だったけど、サラちゃんはそう受け止めてはいないみたい。
「わかってるわかってる。
そのために、これを用意したんだから」
そう言ってサラちゃんが手に取ったのは、一つの「腕輪」。
金属製の輪に、拳大の鳥の嘴のような物が取り付けられている。
一見、風変わりな腕時計にも見える。
こんな形をしていながら、一つで世界を左右する程の物なのだから、バカにできない。
これはかつて、私達を殺すために作られた超兵器。
フィセント・メイル「フルーティスト」。
「あと少しだよ。
これがあれば、あと少しで、使命が果たせる。
犠牲者だって最小限で済む。
それでいいでしょ?」
確かに、この「計画」がうまく行けば、犠牲者は最小限で済む。
でも、いない訳じゃない。
しかも、その数人の犠牲者は、死ぬよりも酷い目に遭わなくちゃならない。
本当は、そんなやり方は間違っている。
だけど、もうここまで来てしまったんだ。
魔力を用いた、人類の解放。
それが私達、魔女に課せられた使命。
私・魔女メイサは、その使命に殉ずると決めた。
その使命こそが、この組織「眠れる森」の存在価値なのだから。
総合評価70ポイントに到達しました!
応援ありがとうございます!
今回を持ちまして、第1章が完結となります。
―次回予告
魔人が最期に放った言葉の所為で、元気を失ってしまったソウタ。
そんな彼を見兼ねて、ライムはソウタ達を温水プールへと連れて行きます。
段々と元気を取り戻していくソウタ。
そんな中、迷子のお呼び出しが次々と増えてきて……?
次回「水着の天使とプールの悪魔」
お楽しみに!!




