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謎の新キャラ視点となります。
三つのモニターが並ぶ実験室の一角。
そこには、一人の女性が座っている。
私は彼女に一つの書類を差し出した。
「へぇ……。なかなか面白いことになってきてるんだ。
期待度50%」
私が持ってきた報告書を見て、彼女はそう言った。
報告書に書いてある内容は、大まかに言って2つ。
一つは、魔女ルイスが、謎のメイル使いと共に動き始めたということ。
そしてもう一つは、魔女ライムがルイスと正面からぶつかり合ったこと。
まだ個人個人の闘争の域を出ないけど、確かに面白いことに変わりはない。
ただ、そんなことよりも大切なことが一つある。
私の命に関わることだ。
「それよりも、そろそろ私も限界なんだけど。
なんとか『食料』を調達してくれない?」
私達魔人は、そこそこ成長すれば、人間を食べずに生活できるようになる。
しかし、絶食できる期間にも限りはある。
私はもう、一年半も人間を食べていない。
流石にそろそろ限界。
私の前に座る女性は、唇に指を当て「そ~だね~」とわざとらしく呟く。
「あなたももうここに来て長いんだから、ご飯位自分で調達できるようにならない?」
何を言い出すかと思えば……。
そこら辺の人を襲ってもいいというなら、喜んで頂くけど、そんなことをしたら彼女にとっても都合が悪い筈。
「それなら、この研究室の人間でもいただこうかしら?」
脅しのつもりで言った一言。
しかし、女性は私の言葉など聞いていない様子で、キーボードを入力していた。
彼女がエンターキーを押すと、中央のモニターに見慣れた顔が映し出される。
銀色の髪に、切れ長の目、整った顔つきの彼女は――。
「ダメダメ。同志に手を出さないでよ~、不審度10%。
私が調達して来いって言うのは、彼女よ」
「――魔女ライム……」
「そう、彼女を食べさせてあげよう!
手段は問いません!!」
まさか、300年前の友人を私に食べさせる気?
それとも、最初から私は魔女に敵わないと踏んでいるの?
「魔女を食えって? 冗談でしょ?」
これを本気で言っているのなら、私は彼女についての評価を改めなければならない。
でも、彼女は「冗談じゃないよ」と笑った。
――魔女サラマディエは、そう笑った。




