転校生とカス野郎
とくにないでーす
きーんこーんかーんこーん
「お前ら席に着けー。」
ダダダダダダダ
ガラッ
「遅れましたサーセン!」
「どうした大河。」
「ドブにはまって抜け出せませんでした!」
俺が教室に入ったのは始業の30分前なのによく遅刻できたなコイツ。
流石はカスやることが違う。
一番最後に入ってきたカス野郎を確認した担任はややイっちゃった感じの目をしながら諸連絡事項をつらつらと垂れ流してから廊下に目を向けた。
前から思ってたけど生徒だけじゃなくて教師もヤバイなこの学校。
そんなことを考えながらボヤーっとしていると、扉を開けて見知らぬ生徒が入ってきた。
「橘優希です。よろしくしなくていいです。」
…何とも斬新な自己紹介だな。今後参考にさせてもらおう。
「というわけだ仲良くしてやってくれ。」
橘がすごい顔して担任を睨んでる。
「えーと空いてる席は…有栖川の隣だな。色々教えてやってくれ。」
そんなことをしたら代わりに血の味を教えてくれそうだな。
きーんこーんかーんこーん
10分休憩に入るとクラスの8割の目がこちらを向いた。
話しかけろ、ということらしい。動きまでシンクロしてて仲いいなこいつら。
だが、俺が話しかけるまでもなく特攻したカスが一匹。いくら可愛いからってようやるわ。
「君、優希ちゃんっていうの?俺は浜建大河って言うんだ。君さえよければ学校の案内とかさせてもらえないかな?」
「いらない。話しかけないで。」
特攻も虚しく再び膝を折ったカスには目もくれずに優希は虚空を見つめてぼうっとしている。
口はともかく見た目はいいのでそれはそれで絵になっていて別にかまわないのだが、まだ俺を見ていたクラスの奴らの目が男女問わず『行け』と言っている。
目は口ほどに物を言う、とはよく言ったものだ。
「橘、一応通過儀礼的なものだから案内についてきてくれ。」嫌とは言わせん。
「わかった。」
「俺はダメでなんでコイツはいいって…なんでなんだ?畜生…滅べ!」
背中に呪詛を浴びながら二人で薄暗い廊下に出た。
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