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部活動会議

 木曜日。

 琴子は渋々パソコン部にきた。ドアの前で、なかなか中に入れずに立っていると、背後に人がやってきた。


「この間の新入生じゃん。うちのメンツみてもまたきてくれたんだーすごいね」


 振り返ると、長島が立っていた。


「池尻が無理言わなかったー? アイツ俺にもぜってーこいとか言いやがって。死にたい」

「無理なこともないですが……あの部長さんのその、口癖ですか?」

「俺? そう俺死にたいの。でも死ねないの。でも言うだけならタダだなーって思って」

「死ねない?」

「チキンだから?」


 なんだかよくわからないけど、この人ちょっと私と似てるのかな?と琴子はふと思った。


「さ、入ろ入ろー」


 長島部長がドアを開けると、中には既にほかのメンバーが勢ぞろいしていた。


「琴ちゃーん!」


 長島の側にいる琴子に気づいた池尻が笑顔で手を振ってきた。


「こんにちは」

「さ、席座って~!今日はパソコン部活動会議しちゃうよ~!」

「会議?」

「はーい、じゃあ部長よろしく~!」

「はぁ。死にたい。じゃ、今年やること決めー。誰か案ある人ー」


 そこに下半身裸の坂井が挙手した。


「坂井。てかなんで上は着たまま?」

「女子がいるので、一応…」

「そう…」


 だったら逆だろ!と琴子と長島は思った。


「それでなんですが、フォトショ加工写真集作るとか」

「ふんふん」

「だったら」


 留年しているという岡崎先輩が急に口を開いた。


「グロ加工写真集なんかもいいんじゃない」

「却下」

「ほらこれとか俺のお気に入り」


 そういって岡崎先輩は自分の目の前のパソコンをグイっとみんなのほうへ向けた。


「ばっ先輩ダメっ!」


 急いで池尻がパソコンをそむけた。チラっと見えるに、とんでもないグロ画像だったように思えた。


「岡崎先輩、家でやってください。あとでそれ消しときますよ。はぁ、死に」

「長島ちゃん、死ぬ時ちゃんと俺に言ってよ。写真撮りたいからさ」

「先輩ストップストップ! 琴ちゃんドン引きだよ勘弁してよ!」

「えー、そう?美しいのに……」

「他にー」

池尻先輩がすぐに手を上げる。

「あーじゃあじゃあサイトを作るとかどう?」

「ほう」

「みんなで好きなことの記事とか書いてさ、パソコン部の部屋ーみたいなサイトを」

「俺の部屋は決まりだな」

「岡崎先輩のはダメです」

「琴ちゃんなんか好きなことある?!」

「え」


 部員全員の視線が琴子に集まった。


「なんでもいいんだよ?マンガとか、映画とかでも」


 琴子の脳裏にクローゼットにある服が浮かんだ。が、一度も袖を通したこともない、普段からそういう服ばかり見てるというわけでもない、果たしてこれが好きなことと言えるのだろうか?と思い琴子は黙ってしまった。

 そんな様子の琴子を見て長島は口を開いた。


「ま、最初はなんでもいいからさ。なんか考えといてよ。山田さん。みんなも」

「俺はグ」

「岡崎先輩は適当に小説でも書いといてくださいよ、閲覧注意ってつけますんで。絵や写真よりマシだし」

「ほーい」

「坂井は面白加工写真ね」

「はい」

「松田は音楽動画? でいい?」


 ガスマスク、松田が頷く。


「池尻は?」

「うーん、どうしようかなーゲーム実況でもしようかな~」

「18禁にならなけりゃなんでもいいよ」

「ぶちょーはどうすんのー?」

「俺はあれだ、自殺ガイド的な」

「それ先生許可出さないっしょ」

「……ハァ、死に」

「わかったわかったから部長も次までに別のモノ考えろよな」

「はぁ。じゃ、もういいかな。かいさーん」


 そういうと長島はさっさとドアノブに手を掛け開けようとしたので池尻が慌てて長島の傍に駆け寄りそれを制した。


「ちょ待って待って、お前が帰っちゃうと琴ちゃんも帰っちゃうんだってー!」

「は?いいんじゃない?やること決まってないし」

「ここにいながらやること考えたっていいでしょー! 目の前の箱に聞くって選択肢はないのかよお!」

「学校のパソコンじゃ見れないことだってあるだろ。てことでバイバーイ」

「あー!」


 長島は引っ付く池尻を引きはがすとさっさとドアを開けて出て行ってしまった。ガックリと肩を落とした池尻は琴子のほうを向いた。


「琴ちゃん、ほら、興味わくもの、このパソコンで調べていいからね!」

「はぁ」


 暗にお前は帰るなよと言われたようで琴子は少し顔が引きつった。


 琴子は前にいるガスマスク男をみてはため息をつき、右隣にいる下半身裸の男をチラリとみては、つぶやくのだった。


「辞めたい」

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