ハダカとチャラ男
「こんにちは~!」
ドアのほうを見ると、なぜか男子生徒が制服のズボンを脱ぎながら入ってきた。しかも、どうやら、パンツを履いてないようだ。
「えっ」
琴子は突然のことに、股間を凝視してしまった。
「えっ?」
琴子とズボンを脱いだ男子生徒の目が合った。
すると男子生徒の後ろからまた一人、男子生徒が現れた。
「こんちは~ってあれっ新入生~? よろしくー」
「新入生?! あ、あの」
「うお、坂井何してんの。うお! 脱いじゃったのかよ!」
後ろからきた男子生徒は"坂井"と呼んだ男子生徒を押しのけると琴子の前にきた。
「ごめんねー、あいつ露出狂なんだ。あ、でも見せるのが好きなわけじゃなくて、ただ脱いでいたいだけなんだって。平気?」
「へっいやっ」
「狭い空間で長時間脱いでないとパニック起こしちゃうんだ。できたらこの部室だけでも脱がせておいてほしいんだけど」
「えええー」
「お名前は?」
「や、山田琴子です」
「琴子ちゃんち、男兄弟はいる?」
「弟が…」
「じゃあ大丈夫だね!!」
「えええー」
家族と他人は別だと言いたかったが、あまりにも力強く大丈夫だね!!と言われてしまったので琴子は何も言い返せなくなってしまった。
「僕、池尻隼人、三年生。一応ここの副部長やってます。よろしくね琴子ちゃん」
「よ、よろしくお願いします」
「で、そこの露出狂が、坂井鷹。二年生」
露出狂、坂井は、ペコリとお辞儀すると、琴子の隣の席に座った。
「えーと、このガスマスクが、松田鷲男。二年生」
「はぁ」
「ちょっとシャイかな。で、あっちの奥にいるのが岡崎先輩。留年してる三年生」
「へぇー」
「あと、部長の長島で全部で五人かな。で、琴子ちゃんいれて六人だね。丁度だ良かった~」
「あぁ、あの、部長、さん? 帰ったんですけど」
「マジ? あ、でも会ったんだ、良かった」
「あの、帰ってもいいなら私もそろそろ帰ろうかと」
琴子はさっと立ち上がった。
「えええー! 帰っちゃうの~! じゃ、木曜にまたきてね!」
「え?」
「月木が活動日だよ! 次の時にはさ、活動用意しとくから!」
「活動?」
「こーんなパソコン部でも一応学校から決められた課題があってそれ提出しないとダメなんだよー。次の時はちゃんと部長もいるようにしとくから!ね!」
「はぁ、わかりました」
なんなんだこの妙に明るいチャラい三年生といい、変な部員達は。その上決められた活動がある?面倒だな…と思いながら琴子はドアを開け振り返りもせず出た。
「じゃぁね~! 琴子ちゃーん!」
背後から、明るいチャラ男の声が聞こえた。