部長とガスマスクとニヤニヤ。
部活活動日初日。
ほんとなら帰宅部が一番良かったのだが、この高校は全員何かしらの部に入部が校則で決められているため、渋々一番活動が地味そうなパソコン部に入部を決めた。
琴子は部活案内に書いてある、<3F・パソコン教室となり>の文字に従い、パソコン部へと向かい、扉をノックしてみた。
返事がない。もう一度ノックをしようとしたら、後ろから声がした。
「新入生?パソコン部に入るの?」
振り向くと、背の高い男子生徒が立っていた。
「はい、そうです」
琴子は小さな声で返事した。
「マジでー。ハハッ。死にたい」
琴子は何かの聞き間違いかと思いその男子生徒を見つめた。
「あ、どうぞどうぞ、入って。ノックとかいらないから」
男子生徒はドアを開けた。
中は暗い上に狭い。狭い中にパソコンが三台ずつ、中央に並べられ、その前で何人かが既にパソコンをいじっているようだった。
「俺、一応部長の長島です。……死にたい」
「え?」
また言った?あ、名字の一部なのかな?それともミドルネーム的な?と琴子は考えたが、そんな琴子を特に気にする様子もなく長島は続けた。
「席、ここ空いてるから使って」
ドアからすぐ近くの席を勧められたので、言われるままにその席に座った。
「じゃ、俺帰るから。あとよろしく。ハァ~死にたい」
え?あとよろしく?それって私に言ったの?ていうかなんで語尾に死にたいってつけるの?そういう人なの?と、声に出せず長島を見送ると、琴子は周囲を見回した。
最初に部室内を見てからなんとなく気づいてはいたが、琴子の席の目の前でパソコンをいじっている男子生徒は、なぜか顔面全部を覆うガスマスクをかぶり、ヘッドフォンをしている。
そしてもう一人、琴子の隣の隣に座っている男子生徒は、まぁ一見普通だが、パソコン画面に向かってニヤニヤしているのでなんともいえない。
琴子がどうしたもんかと下を向くと、部室のドアが開いた。