課長と部下
私は某会社の課長だ。
現在、部下と二人で会議中。
「何かライバル会社と差を付けるいい案はないかね?」
「スパイをするために、その会社に就職してきます」
早っ! 案を出す前から実行する気だ。
ちょっと待て。
「何か問題でも?」
部下は眼鏡をクイッと上げる。
「スパイなど良くない。我々は手を汚さない集団だ」
我ながら格好いい。
「そうですか。……では、ライバル会社の女をコマしてスパイさせましょう」
「さっきと全く変わらないだろ!」
「分かりました。コマした女でライバル会社の男を魅了させ、その男にスパイさせましょう」
スパイから離れろ。
冷静な男の口調に、青筋が。
「分かりました」
パチンっ!
社長みたいに指鳴らしてる。
指の音に反応しドアが開くと、そこから四角い頭と胴体と腕と足――つまり全てが四角いロボット登場。
ウィーン! ガシャ! ウィーン! ボテッ!
あ、転けた。
「この御方は十六世紀から来られたロボット様です。最新鋭のパーツで作られ、決して倒れることはありません」
「古っ! ロボットあるの? 十六世紀に。お前、何歳だよ? しかも、いきなり転んでるぞ!」
「あれは土下座です。忠誠心の表れです」
手足をばたつかせてるが。
ロボット起き上がり会議再開。
「今度は完璧でしょう? あのロボットならスパイの大任をも遣り遂げます」
またしても冷静な口調の部下。
「問題ありすぎだ!」
「細かく言うと、どこですか?」
「全部だよ!」
ロボットが書類をムシャムシャと食べる。
「食ってるぞ! 書類!」
「必要悪です」
「どこがだよ!」
「ウルせーよ。バーか」
ぎこちない日本語でロボットが喋る。
「この通り言語を理解します」
後ろで腕を組み、幾分か誇った口振り。
「問題は容姿だ。こんなのバレバレだ」
ピッ!
「イチいちウルせーな。ハゲちゅーネンよりマシだ」
くちわるーいっ!
「上司に歯向かう奴には任せられん! それにスパイなんてやらないって言ってるだろ!」
ピッ! ピッ!
「ココまできて、ナニ言ってンダ。チキンやろー。ナニが『我々は手を汚さない集団』だ。カッコつけルナ。糞がっ!」
「こいつ『』の台詞のとき、いなかったよな!? お前だろ! さっきから『ピッピ、ピッピ』聞こえてるぞ!」
部下を指差す。
「私ではありません。もし私なら、ここまで頭脳を振り絞って我が社の利益を考えません」
どこまでも冷静な口調の部下。
しかし――
ピッ! ピピッ!
「シット! 見破らされたか。こうなれば退路を確保し、基地に救援要請。座標はF104‐B区域」
流暢な言葉遣いのロボット。最初からそうさせろ。
ドカーン!
ロボット自爆。白煙上がる。部下消える。世界滅ぶ。窓開ける。
「このロボット、一台譲ってくれー!」
コメディー馴れしてないからですかね。センスの問題かもしれませんが…。