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第3章

 【ケンの別荘に向かう車中で】


 ケン:「・・・やはり、君を誘ってよかったよ。

 どう? この空気のうまいこと。」


 ジム:「あと、どのくらいかかる?」


 ケン:「1時間か、そこらだよ。バイパスをとおっていくから。」


 (途中で、小さな田舎の雑貨屋に立ち寄る)


 ケン:「ちょっと待っててくれ、食料を仕入れてくるから。

 えーと、そこから本を出してくれないか。」


 ジム:「・・・ぼくらの本だ。」


 ケン:「あぁ、店の女主人が『ファン』でね。

 前から、ねだられてるんだ。

 ・・・イイ歳のおばさんだけどね。」


 ジム:「ぼくもいこうか?」


 ケン:「なぁに、1、2分で済むよ。」


 (ケン、車を降りて、女主人のラサンカの店内へ)


 ケン:「ラサンカさん!

 ・・・『お客さん』だよ。」


 ラサンカ:「いま、行くわ!

 まぁ、先生じゃないの・・・! 自分で『お客さんだよ』なんて言うから、誰かと思っちゃったわ。」


 ケン:「『お客さん』にはまちがいはないだろう。

 ・・・はい、プレゼント。」


 ラサンカ:「あたしに?」


 ケン:「もちろん。」


 ラサンカ:「(ケンが渡した本の表紙に書かれた宣伝文句を読んで)・・・『殺人処方箋さつじんしょほうせん』。ジム・フェリスとケン・フランクリンによる、メルヴィル夫人シリーズの傑作・・・。」


 ケン:「扉のところを見て。」


 ラサンカ:「あら、『(ケン・フランクリンの)サイン』。うれしいわぁ・・・。

 でも、欲をいうと私・・・作品より、『作家そのもの』が欲しいわ。」


 ケン:「(手書きの必要品のリストを夫人に渡しながら)・・・いずれ、『良い返事』を持ってくるから、とりあえず今日は、この品物をそろえてくれたまえ。」


 ラサンカ:「どうせ、『カラ手形てがた』。」


 ケン:「さぁ、どうかな。」


 ラサンカ:「・・・何をおりなの?」


 ケン:「なぁに、一晩分の食料さ。」


 ラサンカ:「(窓の外のケンの車を見ながら)今日は、どんな女性ひと? ブロンド? 赤毛あかげ??」


 ケン:「・・・とんでもない。今日は、ひとりぼっちさ。

 ひとり静かにモノを考えたり、釣りをしたりしに来たんだよ。

 (ドル札を夫人に渡しながら)これでお釣りがあるだろう。電話をかけるんで、こまかいのがほしいんだがね。

 あぁ、それでいいよ。

 ・・・どうも。」


 (夫人は、どこか意味ありげに、ケンの後姿を目で追う)


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 【雑貨屋内部の電話室にて】


 ケン:「あぁ・・・ロサンゼルスまで『長距離』でお願いしたいんですが・・・番号は、『213の22』・・・」


 ジリリリーン


 ジムの妻のジョアナ・フェリス:「もしもし。」


 ケン:「ジョアナ。

 ・・・ケンだよ。」


 ジョアナ:「どうしたの?

 ・・・『(ジムと)絶交したはず』でしょう??」


 ケン:「いやぁ、あれから反省してね・・・2、3時間前にオフィスにいって、ジムに会ってきたんだ。

 ・・・『戦闘終了』さ。」


 ジョアナ:「よかった。・・・安心したわ。」


 ケン:「ああ、そうだ。ジムには黙っててくれないか。

 君をビックリさせたいらしいから。」


 ジョアナ:「お祝いに、今夜、食事を付き合わない・・・?」


 ケン:「あぁ・・・そうしたいけど、週末をサンディエゴの別荘ですごす計画でね。

 ・・・もう、こっちへ来てるんだよ。」


 ジョアナ:「うーん、じゃあ、いずれ近いうちに。」


 ケン:「ああ、いいね。

 えーと、別に、『連絡するようなこと』も起こらないと思うけど・・・別荘の電話番号はメモしてあるね?」


 ジョアナ:「ええ。」


 ケン:「・・・戻ったら連絡するよ。ああ。

 それじゃ。」

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