第19章
【最初にケンに殺害されたジム・フェリス邸にて】
コロンボ警部:(ケンがラサンカに贈った、例のメルヴィル夫人シリーズの本の『手書きのサイン』の文言を読んで)わがリリーへ、愛をこめて。」
ジョアナ:「・・・どういうことかしら?」
コロンボ警部:「彼(= ケン)はウソをついた。
単なる『客と店のおかみ』だって説明だったが・・・かなり、ねんごろに付き合ってたって証拠ですよ。」
ジョアナ:「バカバカしい。
こんなサインやら、シャンパンのコルクに、いったいどんな意味があるっておっしゃるの・・・?
なにもならないんじゃなくって??」
コロンボ警部:「・・・これだけじゃ、役に立ちませんよ。
しかし、あの男を『犯人』と仮定するとスジも通るし・・・謎も解けるんです。」
ジョアナ:「とても信じられないわ。
むかしから知ってるけど、そんな人じゃないもの。」
コロンボ警部:「いや、奥さん。
たとえ『100年来の知り合い』だろうが、そんなことは、このさい問題じゃないんですよ。
・・・彼があなたのご主人を殺したことは、たしかなんだ。」
ジョアナ:「・・・・・・。」
コロンボ警部:「マッチあります・・・?」
ジョアナ:「(丸いテーブルの金属製の小箱を開けて)ご自分でどうぞ。
・・・ここにあるわ。
警部さん、『アリバイ』はどうなるんですか。
ケンは別荘にいたんですよ?
それに、『動機』がないわ。」
コロンボ警部:「・・・『電話のトリック』は説明したでしょう?
それに、動機は『保険のカネ』ですよ。
二人はお互いに・・・多額のカネを掛けあっていたし、あの男は、カネに困ってた。
・・・『絵』とか、『女』とか。」
ジョアナ:「(コロンボが部屋で見つけた紙きれを見ているのに気づいて)何か・・・?」
コロンボ警部:「(その紙きれの文言を読んで)『ジャックとジルは山へ行き、一人は死体で戻る・・・さて、そのトリックは?』」
ジョアナ:「・・・主人よ。
なんでもメモしておくんです。」
コロンボ警部:「ほぅ~う・・・。」
ジョアナ:「警部さん・・・ケンが犯人だとしたら、なんで、そんな女の人(= ラサンカ)まで殺したんですか?」
コロンボ警部:「こいつはいわば、『推測』ですがねぇ・・・女に、カネ、ゆすられてたんじゃないのかなぁ・・・。」
ジョアナ:「勘ぐりもいいところだわ。」
コロンボ警部:「いや、『根拠』はあるんですよ、ある程度。
銀行調べてみたら、あの男はきのう、『1万5千ドル』引き出して・・・今日また、戻してるんです。
・・・ふつう、そんなことしますかねぇ?」
ジョアナ:「はぁ・・・。わかったわ。
信じたわけじゃないけど、『協力』はするわ。
・・・どうすればいいの?」
コロンボ警部:「そこですよ。
『状況証拠』としては、まぁ、かなり有力なのがそろってるけど・・・これといった『決め手』に欠けてるんです。
・・・これじゃ、逮捕はムリだ。」
ジョアナ:「そうでしょうね。」
コロンボ警部」「しかし、ほおっちゃおけない。
だから、ここへ来たんです。
・・・『最後の頼み』は奥さんだ。」
ジョアナ:「あたし・・・?」
コロンボ警部:「二人を良く知るのは、奥さんです。
どんなことでもいいから、話してください。
なんでもけっこう。
その中から、『ヒント』を掴むんです。
・・・ね?」
ジョアナ:「まるで、『精神科の先生』みたいな口ぶりね。
・・・コーヒーでも淹れましょうか・?」
コロンボ警部:「いいですねぇ・・・。」
ジョアナ:「それじゃ。」
(ジョアナ夫人、コロンボのためにコーヒーを淹れに、すこし奥の台所へ)
ジョアナ:「あたし、むかし・・・タイプライターのお店に勤めていたんです。
そしたら、二人おそろいで買い物に来て・・・ジムは『タイプ用紙』を、ケンは『(インク用の)リボン』を買った。
・・・こんなお話でいいの?」
コロンボ警部:「いいから、続けて。」
ジョアナ:「あたし・・・すぐ、ジムに魅かれたわ。
でも結婚するまで・・・『創作』って、あんなにたいへんな仕事だって知らなかった。
・・・夜中に起き出して机に向かったり。
はじめはそれこそ、びっくり。
ところがケンは、のんびりと構えていて・・・ジムの書き上げたものを見てから、まるで自分が考えたようなこと、言うんです。」
(コロンボ警部、椅子に座り、丸いテーブルの上に土足のまま、両足を投げ出し、しぶい顔で葉巻をふかしながら聞いていた)




