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第16章 

 【湖畔こはんのラサンカの食料品店にて】


 ラサンカ:「・・・あら、いらっしゃい。」


 ケン:「(口止め料の1万5千ドル入りのアタッシュケースを渡して)はい、おみやげ。

 (シャンパン2本も追加して)あと、コレもね。」


 ラサンカ:「わぁ、うれしいわぁ・・・ありがと、先生ぇ・・・あはは♪」


 ケン:「・・・『ケン』だ。」


 ラサンカ:「ええ。ありがと、ケン・・・。」


 ケン:「なぁ、リリー。

 せっかく(ぼくが)来たんだから、ふたりっきりで、ゆっくり食事でもしないか・・・?」


 ラサンカ:「(にっこりして)あぁ・・・。」


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 【同日の夜、ラサンカの食料品店の奥の一室にて】


 (ムードたっぷりのクラシカルな音楽レコードの曲が、ゆったりと室内に流れている)


 ケン:「変わらぬ友情に(乾杯)。」


 ラサンカ:「(うっとりした表情で)ええ・・・そして、『ロマンス』に・・・。」


 (二人は、シャンパングラスで乾杯する)


 ケン:「・・・『楽しき今宵こよい』に。」


 ケン、ラサンカ:「はっはっはっはっは・・・。」


 ケン:「しかし驚いた・・・。

 君は、『料理上手』だねぇ・・・どこでおぼえたんだい。」


 ラサンカ:「死んだ亭主が、手を取って教えてくれたの。

 腕のいいコックだったから。

 ・・・おもしろい人だった。

 ははっ・・・陽気で『あけっぱなし』で・・・。」


 ケン:「『弟子』も良かったんだろう。」


 ラサンカ:「どうもありがと。

 (ワイングラスをケンに差し出しながら)・・・いで。」


 ケン:「・・・ああ、どうも。

 おぉ・・・(シャンパンボトルが)『カラ』だ。」


 ラサンカ:「ふっふっ・・・」


 ケン:「もう1本、あけよう。」


 ラサンカ:「・・・まだ飲むの?」


 ケン:「まぁ、いいじゃないか。

 そぉれ、いくぞ。

 健康を祝して・・・」


 (ボトルのせんが)ポンッ!


 ラサンカ:「あはははははは!」


 ケン:「さぁさぁさぁさぁ、はいはい。」


 ラサンカ:「あーははははは・・・は・・・ん-・・・おいしいわぁ・・・。

 でも、いい気になってると、ヨッパらっちゃうわ。」


 ケン:「かまわないじゃないか。」


 ラサンカ:「・・・そこまであんたを信用しちゃっていいの?」


 ケン:「悲しいことを言ってくれるね。

 ・・・ぼくは失敬しっけいするから、一人でゆっくりやりたまえ。」


 ラサンカ:「いえ、待って。

 ・・・このまま『帰る』はないでしょう?」


 (ここで、ケンとラサンカ・・・熱いくちづけを交わす)


 ケン:「・・・『いいこと』を思いついた。」


 ラサンカ:「なぁに?」


 ケン:「今夜は月もきれいだし・・・湖へ舟をこぎだして・・・泳いでみよう。」


 ラサンカ:「すてき・・・。」


 ケン:「だろ・・・? 行くかい?」


 ラサンカ:「・・・よしとくわ。」


 ケン:「どうして・・・?」


 ラサンカ:「あなたは信用してるわ・・・本当よ。

 でも、人間って『気まぐれ』でしょ、みんな。

 とくに、あたりに人がいないところへ行くと、気が変わりやすいものよ。

 ・・・あなたが急に、お金がしくなったらたいへんだわ。」


 ケン:「・・・みくびられたもんだな。

 そんな男だと思ってるのかい。

 こういうことは黙っているほうがいいんだが・・・君を信用してるから、このさい白状してしまおう。

 ぼくは君に、もっと『お礼』をしてもいいと思ってたんだ。

 『1万5千ドル』じゃ、一晩にギャンブルで負ける金額さ。」


 ラサンカ:「・・・でも、あたしにとっては『たいへんなお金』なの。」


 ケン:「どうするつもりだい・・・このカネは。」


 ラサンカ:「わからない。

 いずれ銀行に入れるけど・・・しばらくは、手元に置くわ。

 気の済むまで、『手ざわり』を楽しまなくっちゃ・・・あははは。」


 ケン「・・・気をつけたほうがいい。

 悪いやつが・・・ねらうかもしれない。」


 ラサンカ:「大丈夫。

 ほんの2,3日、置くだけよ。

 ・・・こんな『大金たいきん』、いままで見たことがないんですもの。」


 ケン:「(ボトルをそれとなく布でふきながら)あぁ。

 リリー・・・どっか遠くへ行ってみたいと思わないか。」


 ラサンカ:「(札束を数えながら)いいわねぇ・・・豪華船にのって、『世界一周』・・・?」


 ケン:「『世界一周』・・・それもいい。」


 ラサンカ:「あたしの亭主は、若いころ、『商船の乗組員のりくみいん』だったの。」


 ケン:「・・・本当かね。」


 ラサンカ:「うん。

 そこで料理を仕込まれたのよ。

 こんなあたしみたいな、なんていうのかなぁ・・・『馬鹿正直ばかしょうじきな人』だったから。」


 (ケン、紙にくるんだボトルを片手に、ラサンカの背後にゆっくりと忍び寄る・・・)


 ケン:「・・・さぞ、『がっかりする』だろうよ。」


 ラサンカ:「(異様な空気を察して振り向き)ええ・・・?

 あぁーーーッ!!」 

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