第13章
【演劇場からケン・フランクリンと若い女性が出てくる】
(場内アナウンス「毎度、ご来場くださいまして、誠にありがとうございました。お帰りの際は、お足もとにご注意くださいませ。毎度、ご来場くださいまして・・・」)
若い女性:「・・・あぁ、こわかった。
いまでも胸がドキドキするわ。」
ケン:「そうかな。
最初の一幕で、『スジ』が割れていたろ。」
若い女性:「そぉ~お?
あたし、おしまいまで『犯人』が誰か、わからなかった。」
ケン:「『月並み』じゃないか、あんなトリック。
・・・これだけは覚えといてもソンはないからね。
ミステリーで『双子の兄弟』が出てきたときには、推理を複雑にするための『カモフラージュ』で・・・犯人は、たいてい別の人間なんだ。」
(ここで、フランクリンを待ち伏せしていた、サンディエゴ近くの食料品店の女店主のラサンカが、赤いドレスで声をかける)
ラサンカ:「フランクリン先生!
ねぇ、あたしよ。ここ、ここ!!」
若い女性:「(フランクリンに)どなたなの・・・?」
ケン:「いやぁ、ちょっとした『知り合い』さ。
・・・失礼する。」
(フランクリン、ラサンカのところへ)
ケン:「・・・ラサンカさん。
思いがけないところで・・・。
何をしに(ここまで)出てきたんです?」
ラサンカ:「あははは。
・・・ひさしぶりに買い物しに。
このドレス、どう?」
ケン:「とってもよく似合うよ。」
ラサンカ:「お芝居も観たの。
・・・お連れの方、きれいな方ね。」
ケン:「あぁ、まぁね。」
ラサンカ:「あたし、(あの方に)まだお会いしてないわね?」
ケン:「ああ、会ってないだろうね。
・・・じゃあまた、そのうちに。」
ラサンカ:「あのぅ・・・ここで会ったのも、何かの『ご縁』でしょう?
あつまかしいようですけど、『お酒』でも、ご一緒にいかが・・・?」
ケン:「あぁ・・・ぼくもそうしたいところだけど、あのお嬢さんと約束があるもんでね。」
ラサンカ:「ちょっと、(あの方に)断ればいいでしょ。」
ケン:「・・・そんな義理はないと思うが。」
ラサンカ:「・・・そう。
でもあたし、あなたにお話したいことがあるのよ。」
ケン:「またにしてくれたまえ。」
ラサンカ:「あ、待って。
あなたにフラれると、ほかの人に話したくなりそうだけど・・・それでもいいのかしらね?
そりゃ、おもしろい『ミステリー』なのよ。
あたし、見てしまったの、『あの事件』を・・・。
うふふ。」
(状況を理解したケンの表情が変わる)
ケン:「・・・ちょっと待ってくれないか。」
ラサンカ:「やっぱり飲み込みが早いわね。」
(ケン、やむをえず『約束』をキャンセルしに、いったん若い女性のところへ戻る)




