第11章
(ケン・フランクリン、ジム・フェリスの死体を車のトランクから出し、自分の自宅前の路上に捨て・・・しらじらしく電話を)
ケン:「・・・警察につないでくれませんか。
そうです。コロンボ警部をお願いします。
ええ、待ってますから。
・・・警部、フランクリンです。
いそいで、ぼくの家まで来てほしいんだが・・・。
公園前通りの『237番地』。
たいへんなことが起きたんだが・・・。」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
【ケン・フランクリン宅】
警察関係者1の無線:「・・・503号、503号。」
警察関係者2の無線:「はい、503号、どうぞ。」
警察関係者1の無線:「・・・ただいま死体確認。これより、国道8号に向かいます。」
警察関係者2の無線:「了解。」
警察関係者1の無線:「えー、死体は35歳ぐらい。
男性、頭を・・・」
ケン:「・・・ひどいことをするやつらだ。
死体を道端に放り出していくなんて・・・。」
コロンボ警部:「帰ってきたら、(死体が)あったんですね・・・?」
ケン:「ひょっとしたらまだ・・・生きてるんじゃないかって・・・いままではそう祈っていたんだが。
やはり、ダメだった。
気の毒なのは、奥さんのジョアナだ。
ぼくには、伝える勇気もないよ。
『鬼』だよ。
・・・やつら。
警部、もう中へ入ってもいいでしょう。
見ているだけでたまらないんだ・・・つらくて。」
コロンボ警部:「あたしも入らせてもらえませんか。
・・・コートが薄くって、なんだか寒くなってきた。」
ケン:「ええ、どうぞ。」
ジリリリリリリーン
ケン:「もしもし。ええ、フランクリンですが。
え? 『ご感想』だって??
・・・こんなときに、インタビューなんかする気になれるか!」
ガチャン!
ケン:「・・・まったく、『ブン屋ども』ときたら。」
コロンボ警部:「彼らも仕事ですからねぇ。」
ケン:「はぁ・・・一杯やらないとたまらない気分だ。
・・・付き合ってくれますか。」
コロンボ警部:「ええ。
ウィスキーでもやりますか。」
ケン:「ウィスキーね・・・。」
コロンボ警部:「・・・豪勢なもんですなぁ。
(絵を指して)こりゃ、『複製』で??」
ケン:「複製など飾ってないよ。」
コロンボ警部:「・・・博物館でしか、見たことがない画家だ。
あなたのですか・・・?」
ケン:「ぼくらの本が売れたおかげさ。」
コロンボ警部:「(葉巻をくわえながら)はぁ、たいしたもんですなぁ・・・。
とにかく、このほかにもサンディエゴにも別荘。
・・・作家ってのは、そんなにも儲かるもんですかねぇ。」
ケン:「・・・いや、人によるさ。
(ウィスキーのグラスを渡して)どうぞ。」
コロンボ警部:「あ、どうも。
素人だから、出版のことはわからないんだけれども・・・版権はどうなるんです・・・?
著者が二人で、一人が死んだ場合、本屋から出る・・・あのぉ・・・えぇー・・・」
ケン:「『印税』かな?」
コロンボ警部:「はい。」
ケン:「いや・・・そりゃ当然、『遺族』のものさ。」
コロンボ警部:「ほぅ~・・・。
それじゃ収入が増えないし・・・相棒を失っただけ、『打撃』ですなぁ。」
ケン:「おいおい、警部。
『愚問』もいいかげんにしたまえ。」
コロンボ警部:「こういう事件には、とかく『金銭』がからんでるもんですからねぇ・・・。
えー・・・う~んとぉ・・・これも『愚問』かもしれませんけど、犯人はいったい全体、どういったつもりで死体をあんなところに放り出してったんでしょうなぁ・・・。」
ケン:「そんなこともわからんのかね?
・・・よく刑事が務まるな。
あれは、『警告』だよ。」
コロンボ警部:「警告・・・?」
ケン:「そのとおり。
同時にこれが、『プロの殺し屋のしわざ』だって証拠でもある。
ジムの死体をわざわざ、ぼくの家の前に放り出した狙い・・・ま、(椅子に)かけたまえ。
そりゃ、こういうことさ。
『相棒の仕事を引き継ぐな。さもないと、おまえも同じ目に遭わせるぞ。』」
コロンボ警部:「つ、つまり・・・『おどし』ですか?」
ケン:「・・・そのとおり。」
コロンボ警部:「なぁるほど。
・・・で、どうする気です?
親友の『遺志』を生かしますか・・・?」
ケン:「それが、今度の仕事だけは、彼がひとりでコツコツとやってきたもんでね・・・引き継ぎようがないんだよ。」
コロンボ警部:「そうすると、犯人は二人が手を切ったことを知らないんですなぁ。」
ケン:「いやぁ、もし知っていても・・・同じことをしただろう。
・・・とにかくこれから先は、あんたたちの仕事だ。
だって、そうだろ。
『死体』も出た、『動機』もわかっとる。
あとは、犯人を割り出すだけだ。」
コロンボ警部:「それが、『コト』でしてねぇ・・・。」
ケン:「ラスベガスかマイアミの『顔役』がちょいと電話して、殺し屋がきて・・・バンッ!
・・・手慣れたやり方さ。」
コロンボ警部:「はい。」
ケン:「その方面の『ブラックリスト』があるだろう。
・・・片端から洗うんだな。」
コロンボ警部:「クチで言うほど簡単じゃないんですよ。
まぁ、やれるだけやってみますけど・・・。」
ケン:「あぁ、相手が相手だ。
よっぽど追い込まないと、口を割らんだろうし。」
コロンボ警部:「ええ。」
ケン:「たいへんだな、あんたも。」
コロンボ警部:「・・・仕事ですから。
さっそく手配しなきゃならんことがあるし、これで失礼します。」
ケン:「・・・しっかり頼むよ。」
コロンボ警部:「はい、どうも。
おそれいります。」
(コロンボ警部とケン、握手する)
コロンボ警部:「あなたも、今日のことでがっかりしないでください。」
ケン:「・・・ありがとう。
ああ、そうだ。
なんかわかったら、教えてくれるね・・・?」
コロンボ警部:「あぁ、もちろん、そうしますよ。
もうひとつだけお聞きしたいことがあるんですが・・・もう遅いし、あしたにでもしましょうか。」
ケン:「・・・かまわんよ、今夜はどうも眠れそうにない。
どんなこと?」
コロンボ警部:「あなたが帰ってきたら『死体』があったっていう話だけど・・・そのへんをもういっぺん確かめたいと思いましてね。」
ケン:「そりゃいいが・・・さっきも話したじゃないか。
車から降りたら、死体が置いてあったんだ。
・・・だから大急ぎで、あなたに電話したんじゃないか。
何かまずい点でもあるかね。」
コロンボ警部:「いやぁ、そういうわけじゃないんです。
どうもすいません。」
ケン:「・・・待ちたまえ。
どうしてあらたまって、そんなことを訊いたんだね。」
コロンボ警部:「えぇ・・・『手紙』ですよ。」
ケン:「手紙・・・?」
コロンボ警部:「封をひらいて、そこに置いてあったでしょう・・・?
普通の人なら、こういう場合に手紙を読んだりしないはずだ。」
ケン:「なるほど・・・そりゃそうだ。
私だって覚えがないんだ・・・無意識で開けたんだろう、ショックのあまり。」
コロンボ警部:「あー、わかりますわかります。
『請求書』ってイヤですからねぇ。
・・・えーと、なんかわかったら、電話で知らせます。
おやすみなさい。」
ケン:「おやすみ。」
(ケン、またも神妙な顔で立ちすくむ)




