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第10章 

 【コロンボ警部とケン・フランクリン、ジム・フェリスのオフィスに】


 ケン:「(机の引き出しから、ジムを誘い出して車中で待たせていた間に、あらかじめ折ってしまっておいた『リスト』を出してみせて、ニヤニヤしながら)

 ふん。これこれ。

 ・・・見てみたまえ。」


 コロンボ警部:「いやぁ・・・そ、そのまま机に置いて。

 『指紋しもん』がついちゃうじゃないですか。」


 ケン:「いやぁ、ぼくの指紋なら、もうそこらじゅうについてるよ。」


 コロンボ警部:「(ケンが出してきたリストの紙を見て)・・・なんです?」


 ケン:「リストだよ。

 ・・・『あるしゅの人間』の。

 ほら。『マスト』『デルガード』『ハサウェイ』『ウェストレイ』・・・聞いたことがあるだろう?」


 コロンボ警部:「ええ、そりゃ、まぁ・・・。」


 ケン:「・・・そのはずだ。

 ウエストコーストに巣食すくってる、犯罪組織の『ボス』の名だ。

 ・・・ラスベガス、サンフランシスコ。」


 コロンボ警部:「どういうことです?」


 ケン:「いいか、わかりきってるじゃないか。

 ジムを殺したのは、こいつらの仲間さ。」


 コロンボ警部:「あぁ・・・どうして。」


 ケン:「あきれた・・・。

 あんた何年、『警察のメシ』を食ってるんだ・・・?

 『メルヴィル夫人』なら、すぐに結論を出すぞ。」


 コロンボ警部:「そぅかなぁ・・・あたしには、トンと見当けんとうがつかないけれど・・・。」


 ケン:「・・・世話の焼ける警部さんだねぇ。

 ジムがぼくと手を切って、自分一人で創作活動をしようとしていたことは、ジョアナから聞いただろう・・・?」


 コロンボ警部:「(険しい表情で左手の指ではさんだ葉巻はまきでケンをしながら)あぁー、そんなこと言ってました。」


 ケン:「じゃあ、彼が『シリアスな作品』を書こうとしていたことも、知っているだろう。」


 コロンボ警部:「そうかぁ・・・」


 ケン:「そうそうそう・・・」


 コロンボ警部:「待ってくださいよ・・・」


 ケン:「(ニヤリとしながら)ピンときたかね。」


 コロンボ警部:「あーあぁ・・・」


 ケン:「そうなんだよ。

 このリストは、『氷山の一角いっかく』さ。

 ジムは、ウエストコーストの犯罪組織を徹底的にあばく作品をモノにしようとして、資料集めに血眼ちまなこになっていたんだ。

 そして、新聞の切り抜きを集めたり、あっちこっちっついたり、ぎまわったりして・・・彼らに目をつけられたんだ。

 『ほかの資料』は盗まれたけど、それだけ残ったんだ。」


 コロン部警部:「すると、シンジケートにやとわれた『殺し屋』のしわざですか?」


 ケン:「そうさ。

 ジムに『内幕うちまく』を暴露されちゃあ、かなわんし・・・かといって、彼を買収するわけにもいかん。

 そこでやむをえず、『永久に筆を折らせる』ことにしたんだろう。」


 コロンボ警部:「殺しの『専門家』かぁ・・・。

 しかし、どういうつもりで『死体』を隠したんですかねぇ・・・?」


 ケン:「さぁ、知らんねぇ。

 ただひとつ考えられるのは・・・『死体が無ければ、捜査に踏み切れない』ことだ。」


 コロンボ警部:「プロの殺し屋が、そんなこと気にかけますかねぇ・・・『仕事』が済みしだい、遠くに行ってしまうのに。」


 ケン:「1から10まで『ぼくに答えろ』っていうのかい・・・?

 ぼくは、捜査の手がかりになる『ヒント』を与えた。

 こっからは君の仕事だ。

 ・・・多少は、参考になったろう。」


 コロンボ警部:「あぁ・・・そりゃ、無論むろんですよ。

 ・・・皆目かいもく、『雲をつかむような始末』だったんですから。

 (リストの紙を見ながら)しかし、変だなぁ・・・。」


 ケン:「なにが?」


 コロンボ警部:「この『折れ目』ですよ。

 まるで誰かが、『うちポケット』にでも入れてたみたいだ。」


 ケン:「それで・・・?」


 コロンボ警部:「リストはおそらく、そこにあるタイプライターで打ったんでしょうが・・・なんでわざわざ折ってから引き出しに入れたんですかねぇ・・・?」


 ケン:「はっはっはっはっ・・・あんたが少し、気に入ってきた。」


 コロンボ警部:「なんです・・・?」


 ケン:「『ものの見つめかた』が、メルヴィル夫人に似てきたからさ。

 ・・・しかしジムには、紙を手当たり次第に『折るくせ』があってね。

  『しおり代わり』にやたらと折るんだ。」


 コロンボ警部:「(葉巻に火をつけながら)あぁ・・・そうでした。」


 ケン:「しかし、こういう細かい点に気づくとは・・・『名探偵の素質アリ』ありだ。

 そこでひとつ・・・!

 あんたに、『メルヴィル夫人の本』を貸してやろうじゃないか。

 今後の捜査のうえで、参考になると思うんだ。

 ・・・ヒマを見つけて、読んでみるといい。」


 コロンボ警部:「ああ・・・そいつはどうも。」


 ケン:「まだ、読んだことはないんだろ?」


 コロンボ警部:「ええ・・・日頃ひごろ、『不勉強ふべんきょう』ですからねぇ。」


 ケン:「そんなこともないだろう。

 (コロンボに10冊は持たせながら)・・・もっと持てるかな?」


 コロンボ警部:「そうですね。」


 ケン:「それじゃ・・・落とさないように。」


 コロンボ警部:「おそれいります。」


 ケン:「読みだしたら、きっとやめられなくなるよ。」


 コロンボ警部:「そうでしょうなぁ。」


 ケン:「(コロンボの肩に手をまわしながら)さて・・・今日は、もういいでしょう。」


 コロンボ警部:「はい、すっかりお邪魔しました。

 そろそろ失礼します。」


 ケン:「どうも、ごくろうさん。

 ・・・ぼくの『ヒント』が、やくに立つといいけど。」


 コロンボ警部:「はい・・・助かりました。」


 ケン:「さっ・・・じゃ、おやすみ。」


 コロンボ警部:「はい、おやすみなさい。」


 (ドアのそとに出たコロンボ警部だが、すぐに振り向いて)


 コロンボ警部:「あ・・・フランクリンさん!

 あのぅ、もうひとつだけ、教えてもらえませんか・・・?

 たいしたことじゃないんですけれど・・・」


 ケン:「はぁ・・・。なんだね?」


 コロンボ警部:「あなた、電話で事件の知らせを聞くと、すぐに車に飛び乗ってサンディエゴから帰ったっておっしゃいましたねぇ・・・。」


 ケン:「ああ、そのとおり。」


 コロンボ警部:「・・・あたしだったら、飛行機で帰るなぁ。

 サンディエゴからならいくらでも便びんがあるし、そのほうがずっと速いんじゃないですか・・・?」


 ケン:「そりゃあ、そうだろうけど・・・あの場合、そこまで考えてる余裕なんてなかったんだ。

 いや、それだけじゃない。

 空港までかなり行ったり来たりだから、車とまぁ、違いがないと思ったんだよ。」


 コロンボ警部:「ほぉ~お・・・ふん。」


 (ケン・フランクリン、神妙な顔で、ゆっくりとドアをしめる)

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