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第29話 勝ち負けで判断する

「アイツには敵わないけどコイツには勝っている。オレは負けてない……絶対に負けてない!!

 今は敵わないだけでいつか見返してこの屈辱を晴らしてやる!!」




 勝ったら嬉しいし、負けたら悔しい。それを原動力にしないと成長が無いよね。

「かってうれしいはないちもんめ、まけてくやしいはないちもんめ」って遊びがある位だからね。


◇◇◇


・この悪いお手本からあなたが学ぶ事。

 勝つと嬉しい、負けると悔しい。その感情は人間なら誰しも持っているものですが、こだわりすぎると逆効果になるでしょう。


「勝ちか負けか」がハッキリと決まるのはルールが厳格に定められているスポーツの試合位なもので、

 現実の仕事においては「勝ちか負けなのかがハッキリしない」ケースもありますし、何だったら「両方とも勝ち、あるいは両方とも負ける」という事だって当たり前のように起きます。




 人間関係もそうで、勝ち負けでこだわる必要はありますか? あなたは交友のある人全てに「勝ち負け」を決めたりしますか?

 もしそうなら、あなたは「凄く嫌な奴」と思われていますので「即刻」改めた方が良いでしょう。

 なぜか? それは「勝ち負けでは語ることが出来ない人間関係も数多い」からです。




 例えばあなたは友人の事を、勝ち負けで判断してますか? 友人を見て「コイツには勝っている」って安心してますか? もしそうならとんでもなく性格が悪いので「今すぐに」改めた方が良いでしょう。

「コイツよりは勝っているから安心できる」っていう人を確保するためのお付き合いをしてると、他の誰かからあなたが「逆に思われる」立場になると思います。

 なぜなら人間は似た者同士でひかれあうので「他人を格下に扱う人」は同じように「他人、すなわちあなたを格下に扱う人」と付き合う羽目になるんですよ。




 そもそも、本来友人っていうのは「勝ち負けとは無縁」の物だと思うのですが、SNSの発達で人類は「総マウンティング時代」に突入してしまい、友人が勝ち負けの材料になったと言っても過言ではないでしょう。

「友人の数、質で殴る」「日常生活の豊かさで殴る」「夫の職業でママ友を殴る」といった暴力が全てを支配する世界、永遠に続くバトルロイヤルになってしまいました。

 そりゃ絵師のイラストを見て「絵柄の私物化だ!」と怒りに震えて画像生成AIにその絵師の絵を読みこませて出力させることも納得できます。




 この辺は人間の本能の部分なので止められないのは仕方のないことかもしれませんが、一応は集団で社会を形成している身としては過剰に勝ち負けに「こだわりすぎる」と、害が出るでしょう。

 営業成績に異様にこだわる人、職場の中に1人くらいはいるんじゃないんでしょうか?


 その異様なまでの闘争心が自己成長に向いていてばまだいいのですが、自分より成績のいい人の足を引っ張るようになったら大変なことになるのは目に見えています。

 勝ちか負けか、でしか判断できない人ってそういう人なんですよ。




 それに、処世術に優れている人って「わざと負けた方がお互い得をする事もある」のを熟知している人でもあるんですよ。

 最初にわざと負けて「いやぁ参りましたよ、あなたには敵いませんなぁ」って素直に降参して、それで一気に相手に親近感を持たせる心理戦が出来る人なんですよ。


 これが出来る人がとにかく強くて「勝っても負けてもこちらが得する。むしろ負けた方が勝つよりもお得」っていうルールの戦いを仕掛けることが出来るんですよ。

 勝っても負けても自分に有利になる戦いか……いやぁ本当に強い。




 他にも飲み会かなんかで「今の俺はこうだけど昔は失敗ばっかりやってさぁ」って自分の失敗談を面白おかしく話する人、いますよね?

 あれも「わざと負ける事で得をする」の一種ですよ。これも効果抜群で一気に親近感を総取り出来る位強い、まさに「切り札」って奴です。

 これが自在に出せるようになると格上の人でも一気に打ち解けて胸元まで「ググッ!」と近づけるようになります。




 だから勝ち負けにこだわりすぎる人は「勝ち続けたい」って思ってるんでしょうけど、それは不可能なんですよ。

 相手に勝っても次にそれよりも強い人が出てきて、その人を倒してもまたそれより強い人が出てきて……っていうまさにドラゴンボールみたいなパワーインフレが無限に続くんですよ。


 その間は闘争心むき出しで戦い続けるんですから精神的安らぎは得られないので、遅かれ早かれ「エネルギー切れ」を起こして潰れると思います。

 私たちは孫悟空ではないので彼のマネをしたら破滅します。現実はマンガとは違うので勘違いしないで下さいね。




 強い相手との戦い、本当に果てがありません。ゴールがどこかも分からずにただひたすら走り続けさせるマラソンのようなもので、まともな人なら途中で力尽きるのは目に見えてます。

 ちなみにこの「ゴールの分からないマラソン」はとある国の特殊部隊の入隊試験で使われているのだとか。

 一般人とは比較にならない程肉体も精神も鍛え上げられた軍人たちですら「ゴールがどこか分からない」事に絶望して次々とリタイヤしていくのだそうで。

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