【第09話】夜のご奉仕
ランプの薄いピンク色が混じった暗闇の中で、疲労で脱力した俺とリントの吐息が漏れる。
夜の一仕事を終えて腰が抜けた少女が、ベッドに寝転がる俺の上に重なっていた。
未だ余韻に浸る俺もまた、心地良い疲労と満足感から抜け出せずにいる。
数日前のパーティー解散時には、こんな爛れた夜の生活が訪れるとは思っていなかった。
しかも昨晩のお祝いで奴隷のリントに焼肉を食べさせて、お互いの心の距離が縮まったおかげか。
一戦目を終えた後に、濃厚な口づけを交わしていたリントから「ご主人様、私にもご奉仕をさせてください」と、まさかの提案をされた。
寝転がる俺の上に跨った少女を見て、おもわず頬が緩んでニヤけた笑みが漏れたのは、男として仕方がないことだろう。
「ご主人様……。手を握ってもらっても、良いですか?」
初めてのことで不安だったのか、伸ばしてきたリントの手に指先を絡めて、恋人のように握りしめてあげた。
リントは不安を感じることがあるたびに、俺の手を握って安心しようとする癖がある。
産まれながらの奴隷で、奴隷商会という閉じられた世界から初めて出た時に、俺しか頼れる人が存在しなかったせいか。
優しくしてくれたご主人様に、依存してくれるのは嬉しいことだ。
ベッドがきしむ音がするたびに、男女の絡み合った性臭が部屋を満たしていくのが分かった。
後半は興奮した俺の方が激しくベッドをきしませていた気もするが、たぶん気のせいだろう。
数日前まで童貞だった俺には刺激が強過ぎるご奉仕をされて、気付いた時には魔力を搾り取られていた。
顔が赤く紅潮してるのが褐色肌でも分かるくらいに、ご主人様を気持ち良くさせようと頑張るリントを思い出して、また口元がニヤケてしまう。
少女の心地よい重さを感じながら、狼耳が生えた銀髪の頭を撫でた。
「リント、大丈夫か?」
褐色の少女に問い掛けると、俺の胸元に顔をのせていたリントと目が合う
「大丈夫、です……」
銀髪の前髪が汗で張り付いた額の下には、潤んだ銀色の瞳があった。
彼女の口元をよく見れば、唇の端から零れ落ちた唾液が糸を引いている。
ちょっと、大丈夫じゃないかもしれない……。
おそらくリントもまだ、俺と同じで余韻が抜けてないのだろう。
でも、身体がビクビクと小刻みに震えていたのが収まってる。
愛し合った恋人がベッドで語り合うような、ピロートークのお喋りくらいはできそうだ。
リントの口元についた、唾液を拭き取ってやろうと辺りを見回す。
顔を上げてベッドの下を覗いてみたが、俺とリントの下着が床に脱ぎ捨てられてるだけで、拭く物は落ちてなさそうだ。
「ご主人様。私が取ります」
どうやら探し物は、枕元にあったようだ。
先に気づいたリントに任せると、褐色肌の少女が四つん這いで俺の上を移動する。
初日は胸元を両手で隠して、恥ずかしがってたのに。
今では堂々と、無防備な胸元を俺に見せつけてくるので、思わず手を伸ばして悪戯しそうになった。
あぶない、あぶない……。
二回戦を終えた後じゃなければ、その慎ましやかな少女の胸元に迷うことなくむしゃぶりついて、押し倒していたところだ。
リントとは一夜限りの関係では無いという安心感があるおかげで、俺の心にも余裕ができてる。
拭き布を手に取ったリントが、俺の顔に付いた汗を拭いてくれる。
「ベタベタするところがあれば、言ってくださいね」
「ああ。ありがとう」
俺には、もったいないくらいの良い女だ。
あの時は双子の兄とリントで、すごく迷っていたが。
今は心から、リントを買って良かったと思える。
男という生き物は単純だ。
前世の記憶では、恋愛をしたことがない男性が風俗店の女性に惚れ込んで、ストーカー行為をするという事件も耳にしていた。
彼女が俺の性奴隷でなければ、独占欲が湧いた俺がリントのストーカーになってたかもしれない。
俺の胸元に付いた体液が自分の唾液だと気づいたのか、念入りに拭いていたリントを見つめていたら、銀色の瞳と目が合った。
「な、なんでしょうか。ご主人様……」
「ロリンさんが分けてくれた霜降り肉は、美味しかったな」
「あっ、はい。そうですね。すごく美味しかったです!」
先ほどの夕食を思い出したのだろう。
ベッドで可愛がってた時とは違う涎が口内に溢れたのか、慌ててリントが口元を手の甲で拭った。
「リント、拭いてあげる」
「お願いします」
拭き布をリントから受け取る。
寝ている俺に、少女が顔を近づけた。
口元に残ってる体液を拭ってあげる。
俺は上半身を起こした。
「よいしょっと……。こっちも拭いてあげるよ」
少女の下半身に、拭き布を持った手を伸ばす。
「ご、ご主人様。そこは自分で拭きます」
俺の意図に気づいたリントが動揺する。
残念なことに、抜き布は俺の手元にあるんだよなー。
「いいから。手を肩に置いて、腰を上げて」
「は、はい……。お願いします」
リントが渋々ながら、俺の肩に手を置いた。
何も履いてない腰を浮かせる。
おやおや……。
粘り気のある液体でベタベタしてますな。
まずは、お腹の周りを拭いてあげる。
若くてハリのある少女の肌を拭いて、太ももの位置まで抜き布を滑らせた。
「ベタベタするところがあれば、言ってくれ」
「……少し、あります」
「どこかな?」
蚊が鳴くような、か細い声で少女が報告する。
リントが俺の耳元で、囁くような小さな声で拭いて欲しい場所を教えてくえた。
俺はニヤニヤと悪い笑みを浮かべる。
太ももの内側まで拭いた後、足の付け根まで抜き布を滑らせた。
何も履いてない鼠径部を念入りに綺麗にした後、リントを抱きしめる。
「あっ……」
慎ましやかな少女の胸元が、俺の胸に触れる。
リントの肩越しに、腰から生えた狼尻尾を見下ろした。
「お尻も、しっかり拭いとかないとね」
「……はい」
リントを抱き寄せて、狼尻尾の下にあるお尻もしっかり拭いてあげた。
ついでに性奴隷の可愛いお尻も、手で撫でまわす。
ご主人様権限でお尻を堪能させてもらった後、俺は満面の笑みを浮かべる。
「あ、ありがとうございます……。ご主人様、喉が渇いてませんか? お水を持ってきますね」
「ああ。頼むよ」
顔を真っ赤にしたリントが、ベッドから下りる。
寝室の机に置いてある水差しに手を伸ばす。
花瓶のように大きな陶器の水差しをリントが両手で持ち上げ、コップへ水を注いだ。
リントからコップを受け取り、渇いた喉を潤す。
「ありがとう」
激しく身体を動かした後だから、余計に水が美味しく感じられた。
俺からコップを受け取ったリントが、水差しから水を注ぐ。
枕に頭をのせて、ベッドへ横になる。
コクコクと喉を鳴らして水を飲む少女をじっと見つめる。
「今は、稼ぎの悪いご主人様だけど。いつか俺も同じくらい高級な肉を買って、食わせてやるからな」
リントには昼も夜も大変な仕事をしてもらってるのだから、俺の奴隷で良かったと思えるくらいのお返しをしないとな……。
腰から生えた狼尻尾が、パタパタと嬉しそうに揺れている。
コップを机に置いたリントが、ベッドに近付く。
ベッドに足をのせた少女が、四つん這いで俺に顔を寄せた。
「貴族のロリン様から、いただいたお肉も美味しかったですが……。やっぱり私は、ご主人様の魔力が一番好きです」
「……俺の魔力?」
「はい……。あの、ご主人様……。またご主人様の上に、お尻をのせてもいいですか?」
「お、おう」
俺の隣で寝るつもりかと思ったら、再び俺の上に跨り始める。
何も履いてないお尻が、俺のお腹にのった。
両手を俺の胸元に置いた少女が、顔を近づける。
「ご主人様の魔力は、喉に絡みつくくらい濃厚です」
可愛らしい唇の中から、ピンク色の舌がチロリと顔を出す。
まるで皿に並べられたご馳走を思い出すように、リントが唇をペロリと舐めた。
「マナポーションより味が濃くて……。癖になる味がします」
「……そ、そうなんだ」
うっとりとした表情のリントが、そんな感想を漏らす。
他人の魔力が増えるから、俺の体液はマナポーションに近い成分なのだろうか?
そんなことを考えてると、腰を浮かしたリントが後ろにさがった。
俺の足がある位置までお尻をさげると、四つん這いになったリントが上目づかいで、俺の顔をじっと見つめる。
「ご主人様の魔力を捨てるくらいなら……お行儀が悪いですけど。こっちで、ご奉仕をしても良いですか?」
口を開けたリントが舌を出して、左右にチロチロと小刻みに動かす。
性奴隷でもある少女の意図に気付いた俺は、動揺して言葉に詰まる。
「そんな知識……どこで、覚えたんだ?」
「デニス様の愛人をしてる先輩奴隷から、教えてもらいました。胸が無いお前は、娼館に行っても仕事を取れるくらいの技術が無いと、貴族に買われても捨てられるから覚えとけと言われまして……。本物にご奉仕するのは初めてですが、頑張りますね」
褐色のお尻を左右に振りながら、性奴隷の少女が四つん這いで俺に迫る。
最近の奴隷商会は性奴隷に、そんな教育までするのか?
奴隷商会の性教育レベルの高さに俺が戸惑ってる間にも、リントの顔が目的の場所へと近づく。
光の当たり方のせいか、それともピンク色に怪しく光るランプのせいだろうか……。
妙に色気を感じるリントが、いつもと雰囲気の異なる蠱惑的な笑みを浮かべる。
褐色の亜人娘が、再び大きく口を開けた。
外に出したピンク色の舌と白い歯の間に、ねっとりとした唾液の糸が伸びる。
思わずゴクリと、俺は喉を鳴らした。
「ご主人様……。こちらも、お掃除しますね」
書き溜めのストックが無いので、終わり。
面白かったらブクマとか評価をお願いします。
評判が良かったら、作者のヤル気が湧いて、続きを書くかもしれないので。




