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ある王国の話  作者: なー
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自分が読みたいもの自給自足中

魔王討伐。

彼らが旅立ったのは、3年前。

私。この王国の第2王女リリアナが、13歳のとき。



3年前


カツッ。カツッ。カツッ。

幼いながらもヒールを鳴らして早足で歩く少女がいる。

バン!!!

少女は大きな扉を勢いよく開けた。

「お兄さま!!!魔王討伐に行くとお聞き致しました!!」

まだ、少女だった私リリアナだ。

「リリアナ。乱暴に扉を開けるんじゃない。」

困った顔をして、苦言をしているのは、私の兄。王太子のルイス。

「それは、申し訳…。違います!!それよりも!魔王の件ですよ!お兄さま!なぜ、次期王になるお兄さまが行くのですか?!!そもそも、魔王は封印されていたのでは?!その封印が解かれたのですか??」

矢継ぎ早に質問を投げ掛け困った顔をした兄は、

「落ち着いてくれリリアナ。取り敢えず、座って話をしよう。飲みものを頼む。さぁ、リリアナはこちらへ。」

そういって侍従に指示をし、兄は、イスを引いて私に座るよう促した。

「わかりましたわ。お話をお聞きします!全てお話くださいね!!」

2人でイスに座り、侍従がティーカップを置いたところで、兄が口を開く。

「ところでリリアナ。この国の始まりについては知ってるか?」

「えぇ。もちろんです。」

知っていて当然である。この国の人間ならだれもが知っている。

「どんなふうに?」

どうしたんだろう?

「えっと。たしか、昔、残虐な魔王に、人々が怯えていたところ5人の若者によって封印された。そして、その5人は、それぞれ国を作り、その時の1つが、わが国だとお聞きしております。」

「そう。それが、民に聞かせてきた始まりだ。」

「違うのですか?」 

「代々、王太子になったもののみ伝えられる話がある」

「どのような話か私が聞いてもいいのでしょうか?」

「魔王の封印が解かれた今、リリアナも王族として真実を知る権利がある。」

そういって兄は、お伽噺をするように話し出した。


「遥か昔、この国ができるずっと前。とある国があった。この国の小さな村に2人の男女がいた。その2人は、恋人同士だった。


男性の方は、不思議な力を使い彼の周りでは、花が咲き乱れ。風で舞う木の葉。水は澄み清らか。火は暖かく光る灯。土は緑が芽吹く。それはそれは不思議で、暖かく幸せな力を持っていた。その力を『魔法』と呼び、そんな彼を村人は、魔法を使う『魔法使い』と呼んだ。


女性の方は、不思議な力はないが、明るく笑顔のたえず、少し口下手であった魔法使いを心配し、お節介をやく、そんな心の優しい人であった。

小さな村で2人は仲睦まじく、月日が流れ夫婦となり、2人の子どもと幸せに暮らしていた。



しかし、その幸せは長くは続かなかった。


この時代、戦争が激化していた。その争いの中に、小さな村は巻き込まれていった。


魔法使いの噂を聞きつけた王が、村に使者を送ってきた。

戦争に参加するようにと。その力で、戦えと。

魔法使いは断った。

今まで、小さな村で植物を育て、剣を持ったことも、魔法でだれかを傷つけることも、考えたことがなかった村人。

そんな彼が、戦争に行き、武器をもち、人を殺せるはずがなかった。


しかし、使者から伝言を聞いた欲深き王は納得しなかった。

魔法は国のためにあり、人を殺す道具である。そう考えた王は従者に魔法使いの子どもを1人拐わせた。


魔法使いは、子どもを人質にとられ、戦場に行き生きるために必死で戦った。


戦争が『敗北』という形で終わったのはそれから4年後だった。


魔法使いは、王城へ子どもを取り戻しに行った。

しかし、子どもは帰ってこなかった。

敗北宣言をしたその夜、殺されていた。

負けたお前が悪いと。


魔法使いは失意の果て、妻ともう1人の子どものもとに帰るために、なんとか小さな村への道を進んだ。

帰る道を覚えてる。村を覚えてる。

でも、どこにもない。


彼が居なくなってすぐに、あの小さな村は、飢えは広がり、その後、戦地となった。


あの小さい村が、激しい戦争の最中、無事で食うものにも困らなかったのは、魔法使いが居たからだった。

その真実に、だれも気付けなかった。



全てを失った魔法使いは、絶望した。

その時彼の力は、全てを壊し、一夜にして国があった場所は荒れ地とかした。


その後も、彼の力は治まらず、周辺諸国をも滅ぼし、『魔物』呼ばれるものが誕生し、彼は『魔王』と呼ばれるようになった。


このままでは、すべての国が消えると焦った残りの国々は、同じ力を使うもの同士を戦わせることにした。

魔法使いは、

ある国では『神の使者』、

ほかの国では『化物』、

別な国では『悪魔』、

とある国は『罪人』、

またある国では『聖女』 と呼ばれていた。


この5人が魔王を封印した。



 彼らは、それぞれ新たに国を作った。

 私たちの国を作ったのはこの中の『聖女』と呼ばれていた魔法使いだとされている。


 聖女の力は、傷を治し癒すこと。そして、隠していたが、過去を見る目であった。

 聖女は、その力で魔王の過去を見た。



色とりどりの花畑、風に舞う花びらと葉。

幸せに並んで歩く家族が4人。



全てを失い絶望した、孤独が1人。




 聖女は、魔王が自分と同じく魔法使いであり、『人』であったと初めて知った。


そう、知らなかったのだ。魔物と同じだと。その中の王だと。言われていた。


だから、封印した彼らは、自国には帰れなかった。

どんなに崇められても。どんなに必要とされても。

『魔王』と同じ魔法使い。

その枷は重い。

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