日常
「いらっしゃいませ。」
久しぶりのお客さんだ。ここは僕が営んでいる本屋だ。大学生の時にも今とは違う仕事をしていたおかげで裏社会では有名だった。だからなのか今レジに並んでいる男はその要件で来たようだ。
「あんたに依頼したい仕事がある。」
「僕はもうそういう仕事は受け付けていませんよ。」
僕は前まで依頼者に頼まれたことなら何でもやるという便利屋のようなものを裏社会でやっていた。でも、その仕事をやってて知りたかったことは知れたしこんな面倒な仕事に戻ることはない。
「金ならいくらでも積むし、お前が一番欲しがっていたものの情報を教えてやってもいい。あと、この店も客が来なくて潰れそうなんだよな、だったらそれも解決してやる。どうだ話だけでも聞いてくれ。」
「話だけだぞ。まだやるとは言ってないからな。」
といい僕は店の奥に連れて行き閉店の札を店の外にかけた。
「じゃあよろしく。僕の名前はリライズとでも呼んでくれ。」
この仕事をするのも二年ぶりだな。
「リライズ、君には私の娘の居場所を探して欲しい。名前はメランと言う。もう二年以上音信不通だ。死んでいたとしてもいいから何があったのかを調べてほしい。」
人探しか。この件絶対裏があるな。めんどくさいがここで断るなんてことはしない。
僕は話を聞いたら解決するまで手を貸すと決めている。
「分かりました。分かり次第連絡します。今日はもうお帰りください。」
「娘の情報は教えなくてもいいんですか。」
「はい。必要ありません。お帰りください。」
依頼者は本当に大丈夫かなんて顔をしているが大丈夫だ。そいつのことは僕が一番よく知ってるしメランのことを調べるためにこの仕事をしていたからな。
あいつがいなくなったのは二年前。父親には伝えていなかったのかも知れないがメランはこの本屋の店員だったからな。もちろん裏の仕事もしていた。
ある日、あいつが別行動で行方不明者を探していた時に消息がわからなくなった。
こういう仕事をしていると行方がわからなくなるのはよくあることだと割り切っていたはずだったが結局割り切れずこの仕事を辞めた。
「ちゃんと過去と向き合わないとな。」
僕は休業の紙を店に貼ると愛用していたリボルバーと荷物を持ち空港へと向かった。