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第六話 帰る方法

梅子が笑っているうち誰かが扉を叩く。春樹は咳ばらいをした後入室を促した。

「入って」

「失礼いたします、魔王様。紅茶をお持ちしました」

「ありがとう、シャドー。梅子ちゃん、ミルクと砂糖は?」

「いる!」

入ってきたのは銀のトレーを携えたシャドーだった。笑いすぎで滲んだ涙を拭う梅子に怪訝な顔をする。それでも春樹たちに紅茶を差し出した。梅子は自分の前に置かれた紅茶にミルクを注ぎ、ガラス瓶に詰められた角砂糖を二つ溶かす。ガラスの器に乗った薄水色のゼリーが置かれた。

「次に呼ぶまで休憩していて」

「かしこまりました」

シャドーが再び部屋を出て行ったのを靴音で確認し、梅子はミルクティーと化した紅茶に手を付けた。

「ん、うま」

「ゼリーもどうぞ。」

「やった! ここ来るまでなにも食べてなかったんだよね。いただきます」

スプーンを持ちゼリーをすくいとる。食べると口に爽やかなラムネの味が広がる。春樹もゼリーを食べていた。

「で、この世界から元の世界に帰る方法って?」

「僕も先代の11世から聞いた話しか知らないけど」

春樹が壁の一面を指さす。その指先に視線を送ると壁かけの世界地図がある。授業で習った世界地図と似ても似つかない陸の絵に自身の立つ世界が現実と乖離しているのを改めて感じた。

「『地図よ来い』」

春樹の指先から薄紫の光が飛んで地図を包む。地図が風に乗ったように浮かび、春樹と梅子の間を漂う。そのある一点を指さした。

「ここがアルティヤね」

「地図で見ると小さいね」

周囲に大陸があるからかアルティヤはイメージより小さく見えた。春樹の指先が地図の北側へ移動していく。

「アルティヤがある海をパープル・シーと言って」

「太平洋的な感じ?」

「現実で言うバミューダトライアングルっぽい感じ」

「バミューダトライアングルって海の名前じゃなくない?」

「……パープル・シーには近づいちゃいけないって言われてるんだよ。いつクラーケンに襲われるかわからないから」

「クラーケンいるの!? 見たい!」

梅子はテンションが上がるあまり椅子から立ち上がってしまう。春樹は今度見せてあげるよと梅子をなだめた。

「クラーケンが住む海域がこのあたりで、そのさらに北側のここ」

「そこに何かあるの?」

春樹の指先がトントンと地図を叩く。目を凝らしても角度を変えても文字の一つも地図には示されていない。

「ここには各国の王族と魔王だけが入ることを許される秘密の海底図書館がある」

「何それ面白そう! もしかして行ったことあったり……」

「いいや。図書館に入るためには審議会ってのに申請して承認をもらわなきゃなんだけど。僕の立場的に、承認を貰うのは難しくてね」

「へー。つまんな。で、その図書館に帰る方法が眠ってるってこと?」

「うん。この図書館の最奥部に保管されている『異世界の心臓』がカギになるらしいけど」

「『異世界の心臓』? 何そのザ・キーアイテムみたいな名前」

梅子は片眉を上げて怪訝な表情をした。春樹も頭を振る。

「仔細はわからない。文献が残っているのかもわからないし」

「でもその海底図書館に帰る方法があるってことでしょ。じゃあやることはわかりきってるよね?」

梅子は紅茶の最後の一口を飲みほす。瞳に強い光を宿した春樹と視線が交差した。

「まずは怜と茉奈と莉希と合流する」

「それが一番いいよね。……でもさ、一つ問題があるよね」

「……ああ、そっか」

二人は顔を見合わせた。思い起こされるのは、光に呑まれる前。

「莉希ちゃんってこの世界に来てるのかな? あの光が召喚されたときのものだとして、莉希ちゃんは光に巻き込まれてなかったはずだよね」

「案外こっち来てるんじゃない? 莉希ってそういう行動力あるし」

「自分でこっちに来てるってこと? 流石にそれはないよ!」

二人の笑い声が重なる。 窓の外では雲の隙間からかすかに見えていた太陽が沈もうとしていた。







「そういえば梅子ちゃんはアルティヤに来る前ってどこにいたの?」

「ステラシア王国とかって名前らしいけど。どこ?」

「ステラシア王国はここだね」

「……え。この大陸まるごとステラシア王国なの? でっっっっか!」

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