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序
心臓が逃げ出そうとして、身体を何度もノックしている。そんな錯覚に陥るほどの高揚が、祭り囃子の音に乗ってきた。
絢爛の外れ、不気味に揺らめく光源の元。七人の瞳は其々《それぞれ》に光る。
負けじと光沢を放つ、置物のような風体の狸は七人に尋ねる。
「あなたは今、何が一番欲しいですか?」
「檸檬じゃ」
「包帯」
「お金でしょッ!」
「缶コーヒーをお願いします」
「真っ赤なドレスを用意して!」
「……シール。青の」
「黒いシャツとか?」
狸の顔は喜色満面。
「早急に手配します」
一週間の遊宴が始まる。